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管楽器の管体内面を守るヤマハの独自工法「Duet+(デュエット・プラス)」採用のクラリネットが初登場!

木管楽器奏者の大きな悩みのひとつ、管体の割れを防ぐために生まれたヤマハ独自の技術「Duet+(デュエット・プラス)」。もともとオーボエのために開発された技術ですが、2020年2月、この技術を取り入れたクラリネットのスタンダードモデル「YCL-450M」が登場しました。
クラリネット奏者にはなじみが薄い「デュエット・プラス」とはどういう技術か、奏者にとってどういう利点があるのか、オーボエで「デュエット・プラス」を開発した宮岡愼里(しんり)さんと、「YCL-450M」を設計した足立啓(ひらく)さんにお話を伺いました。

「管体(上管)の割れの主な原因は、奏者が息を吹き込むことで内面が湿気で膨張し 、外面が引っ張られることにあります。ならば『内面が湿気を吸わなければ いいのでは?』という発想から、管体の内面をABS樹脂(プラスチック)でコーティングするというアイディアを思いつきました。2005年くらいのことです」(宮岡さん)
また「デュエット・プラス」は、耐久性を上げるだけでなく、音質や音程を安定させる効果もあるそう。
「湿気で管体が変形すると音が濁ったり、音程が狂ったりしますが、内面をコーティングすれば湿気の影響を受けないので、音質・音程の精度を保つことができます。経年変化の影響を受けにくく、買ったときの状態をキープできるところが『デュエット・プラス』を用いたモデルの特徴です」(宮岡さん)

上管の内面は樹脂でコーティングされていますが、そのほかの部分は木材。外観はもちろん、音質も木製のものと遜色ありません。 指で押さえるトーンホールも、ABS樹脂でコーティングされています。

クラリネットで「デュエット・プラス」を初めて取り入れた「YCL-450M」は、当初アメリカ向けに開発、6年前から展開しているもので、今回満を持して日本発売となります。
「アメリカでは楽器店で楽器をレンタルすることが多く、より高い耐久性が求められることから、『デュエット・プラス』を取り入れようということになりました。オーボエでノウハウが確立されていたので、クラリネットへの応用はスムーズかと思いましたが、ABS樹脂の成型が思うようにいかず、樹脂の厚みを変えたり、成型の条件を変えたりして試行錯誤を繰り返しました」(足立さん)

割れにくくメンテナンスが容易で、安定した音質・音程で吹ける「YCL-450M」は、日本の奏者にとっても扱いやすく、長く愛用できるモデルといえます。
「木材のみの楽器と同様の豊かな響きがするのも特徴です。また、抵抗感が少なく、クリアな音がストレートに鳴りますので、幅広い奏者におすすめしたいです」(足立さん)

木材とABS樹脂の“デュエット”に、1+1=2以上になるという意味を込めて“プラス”が付けられ、「デュエット・プラス」という名になったそう。

またクラリネットの世界ではまだ木材のみが主流ですが、今後「デュエット・プラス」がスタンダードになる可能性を秘めています。
「その昔フルートの素材が木材から金属に移っていったり、近年は人工樹脂のリードを使う奏者が増えていたりするように、『デュエット・プラス』によって既存の価値観を変えることができたら、開発者冥利に尽きますね」(宮岡さん)
クラリネットの材料であるグラナディラは流通の規制が厳しい貴重な木材ですが、工場では材料を最大限有効活用できており、また、管体交換を要する修理も減らせるので「デュエット・プラス」は環境にも優しい技術といえます。

初めて楽器に触れる入門者はもちろん、楽器への負荷が重い寒冷・乾燥地域に住む方、メンテナンスを依頼できる楽器店が近くにない方などは、選択肢に「YCL-450M」を入れてみてはいかがでしょうか。

肩掛けスタイルとリュックスタイルの 二通りの持ち方ができるセミハードケースが付属しています。

■クラリネット「YCL-450M」

カスタムCSシリーズと同様の内径形状を持ち、上管内面にはヤマハ独自の工法である”Duet+”(デュエット・プラス)を搭載。本格的な音色とともに優れた耐久性を得られます。

詳細はこちら

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