Web音遊人(みゅーじん)

ケイコ・リー

今月の音遊人:ケイコ・リーさん「意識的に止めなければ、自然に耳に入ってくるすべての音楽が楽譜として浮かんでくるんです」

2001年の日産ステージアCMソング『We Will Rock You』でジャズファンのみならず、多くの人々の心をわしづかみにしたケイコ・リーさん。存在感のあるボーカル・スタイルとディープ・ボイスは唯一無二です。2022年10月にはベストアルバム『Voices Ⅳ』をリリースするなど、その輝きは増す一方。そんなジャズ・ボーカルの女王にとって音楽とは?

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

ジョージ・ベンソンのアルバム『Give Me the Night』に収録されている『Love Dance』ですね。
小学校高学年のころ、コモドアーズの『THE BUMP』というレコードをジャケ買いしたのをきっかけに、スティービー・ワンダーやチャカ・カーンなどアフリカンアメリカンのアーティストの曲を聴き始めました。そのなかのひとりがジョージ・ベンソン。10~20代のころは、コンサートにもよく行きました。
『Love Dance』がイヴァン・リンス作曲だということを当時は知らなかったのですが、シンプルな編成が魅力的で、特に好きな曲です。1996年にリリースした私のセカンドアルバム『Kickin‘It(キッキン・イット)』をつくる際にはぜひこの曲をやりたいと思いました。グラディ・テイトさん(ドラム)、リニー・ロスネスさん(ピアノ)、ロン・カーターさん(ベース)、そして大好きだったリー・コニッツさん(アルトサクソフォン)にも参加していただき、カルテットをバックに歌ってレコーディングしました。今でも、よく歌っています。

Q2.ケイコ・リーさんにとって「音」や「音楽」とは?

あって当たり前のもの。なくなるなんて考えられません。
私は小さいころから、楽譜を見るのが大嫌いでした。通っていた音楽教室では、耳コピして先生の前で弾くような子どもでしたね。耳で聴いて覚えたものは、全部弾けました。
今でも、たとえばBGMなど自然に耳に入ってくる音楽も、自分で意識的に止めなければすべて楽譜になって浮かんできます。ですから、たとえ歌えなくなったとしても聴こえてさえいれば、音楽が楽しめます。とはいっても、アウトプットできなければつまらないですよね。聴いてアレンジして、みなさんに披露できるミュージシャンが生業であることは本当に幸せです。ここ数年で、それをより強く感じるようになりました。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

私の周りには「音で遊ぶ人」がたくさんいます。まさに「音遊人」だらけです。
そして、私自身もそうだと感じています。毎日たくさんの時間を音楽と過ごして、自分のなかのいろいろなエッセンスを引き出しのなかにいっぱい詰め込んで、それを表現し続けられるアーティストでいたいと思っています。
今後、「音遊人」としてやっていきたいこともあります。デビューしてから数年間は、今は亡くなられたジャズジャイアンツと呼ばれる方々とご一緒させていただく機会が何度もありました。ニューヨークでスタンダードジャズの演奏をしたとき、そのなかのお一人であるおじいちゃんのサクソフォンプレイヤーが「最近、楽しいんです」とおっしゃったことを今でも覚えています。私も原点回帰ではないですが、スタンダードなジャズナンバーなどをふつうに歌って満足できるようになりたいですね。おそらく満足することはないと思いますが、少しずつそぎ落としていき、そういった歌や音楽ができたらと考えています。

ケイコ・リー〔けいこ・りー〕
実力、人気ともに抜きん出たジャズ・ボーカリストとして国内外でその地位を確立。共演したミュージシャンから「楽器と対等に渡り合える歌手」と絶賛され、その即興性と瞬発力にすぐれたパフォーマンスの評価は高い。1995年のデビュー作『Imagine』以来、多くの作品をリリース。2001年にカバーしたCMソングが話題を集め、翌年2月に発表したベストアルバム『Voices』が20万枚のセールスを記録。その発売20周年となる2022年、4枚目のベストアルバム『Voices Ⅳ』をリリース。
オフィシャルサイト

photo/ 操上和美

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

神保彰

今月の音遊人

今月の音遊人:神保彰さん「音楽によって、人生に大きな広がりを獲得できたと思います」

12785views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#037 ジャズを改革した天才の業績を気負わずに聴ける追悼盤~チャーリー・パーカー『ナウズ・ザ・タイム』編

526views

赤ラベルが再現!ヤマハギター50周年記念モデル

楽器探訪 Anothertake

赤ラベルが再現!ヤマハギター50周年記念モデル

11714views

初心者におすすめのエレキギターとレッスンのコツ!

楽器のあれこれQ&A

初心者におすすめのエレキギターと知っておきたい練習のコツ

23045views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

9931views

打楽器の即興演奏を楽しむドラムサークルの普及に努める/ドラムサークルファシリテーターの仕事(前編)

オトノ仕事人

一期一会の音楽を生み出すガイド役/ドラムサークルファシリテーターの仕事(前編)

15372views

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

ホール自慢を聞きましょう

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、刺激的なコンテンツを発信/東京芸術劇場 コンサートホール

12672views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

10999views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

10336views

われら音遊人:年齢も職業も超えた仲間が集う 結成30年のビッグバンド

われら音遊人

われら音遊人:年齢も職業も超えた仲間が集う、結成30年のビッグバンド

9831views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

8657views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10339views

コハーン・イシュトヴァーンさん Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ハンガリー出身のクラリネット奏者コハーン・イシュトヴァーンがバイオリンを体験レッスン!

10466views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

24583views

音楽ライターの眼

超絶テクニカル・プログレッシヴ集団、リキッド・テンション・エクスペリメントが新作『LTE3』を発表

3928views

コレペティトゥーアのお仕事

オトノ仕事人

歌手・演奏者と共に観客を魅了する音楽を作り上げたい/コレペティトゥーアの仕事(後編)

7700views

われら音遊人 リコーダー・アンサンブル

われら音遊人

われら音遊人:お茶を楽しむ主婦仲間が 音楽を愛するリコーダー仲間に

8135views

楽器探訪 Anothertake

26年ぶりにラインアップを一新!「長く持っても疲れにくい」を実現し、フラッグシップモデルが加わったバリトンサクソフォン

3763views

グランツたけた

ホール自慢を聞きましょう

美しい歌声の響くホールで、瀧廉太郎愛にあふれる街が新しい時代を創造/グランツたけた(竹田市総合文化ホール)

7342views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう

8303views

ピアノの地震対策

楽器のあれこれQ&A

いざという時のために!ピアノの地震対策は大丈夫ですか?

46378views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

10999views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

25617views