おでかけ?たんけん?ホール独自のプランで人々の厚い信頼を獲得/いわき芸術文化交流館アリオス

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人が集まり発信する交流の場として、地域活性化の原動力に/いわき芸術文化交流館アリオス
ホール自慢を聞きましょう
おでかけ?たんけん?ホール独自のプランで人々の厚い信頼を獲得/いわき芸術文化交流館アリオス

福島県には古くから2本の幹線道路(東北道、常磐道)があり、どちらも首都圏と東北各地を結ぶ大動脈になっている。常磐道とJR常磐線が通る太平洋側は「浜通り」と呼ばれるが、その県南部に古くから栄えるのがいわき市だ。
2008年4月、街の中心部に開館(第1次オープン)した「いわき芸術文化交流館アリオス」(以下、アリオス)は、本格的な音楽ホールを有する文化施設。同じ常磐線沿線には、南に水戸など茨城県の文化施設があり、北には仙台という大都市がある。その中間点となるいわきに生まれたアリオスは、新しい文化圏を創造する拠点となったのである。

大小2つの音楽ホールと、演劇公演を中心に行う2つの劇場、さらには2つのリハーサル室、学生たちのバンド練習などに人気のある4つのスタジオ、6つの練習場、4つの稽古場などを備えたアリオスは、まさに、さまざまな人が集まる場所として機能。そればかりでなく、レストランやカフェ、フリースペース、小さな子どもたちが遊べるスペース、さまざまなグッズなどを揃えたショップ、さらには壁面のギャラリーなど、館内すべてがフレンドリーな雰囲気をかもし出している。

いわき芸術文化交流館アリオス

(写真左)ホール、スタジオ、練習場など、アリオス内のすべての施設をつなぐカスケード(交流ロビー)。(写真右)ウォールギャラリーは一般開放されていて、誰でも見学することができる。

オーケストラ・コンサートを行う大ホールは、4階席までを有するシューボックス型のホールで、通常使用時は1,705席。天井も非常に高く、可動式の反響板はコンクリートパネルと自然木を組み合わせた重量のあるものとなっている。この瓦屋根を思わせるステージ両サイドと奥の壁面も印象的だが、客席の壁面にも瓦状のデザインが施されており、ステージ上の音を客席へ届ける役割を果たしている。その表面には、あたかも全体が自然木であるかのように繊細な凹凸があり、特にクラシック音楽のようなアコースティックを大切にするコンサートでは大きな効力を発揮しているのだ。

大ホールはクラシックばかりではなく、ポップスのコンサートや演劇、ダンス、能などの伝統芸能公演などにも使用されるが、その内容によりステージには仕切りのカーテンが降りるなど、フレキシブルに対応できるのも特徴。さらには吹奏楽コンクールなどが行われることもあり、学生たちにとってはこのステージに立つことがひとつのステイタスになっているかもしれない。高さのあるプロセニアム(舞台と客席の境界)の形状から、オペラ公演なども行うことができる。

いわき芸術文化交流館アリオス大ホール

さまざまな用途に利用できる大ホール。クラシックコンサートでは可動式音響反射板を組むことで(写真右)4階席まで音が均一に届く。

1階の客席を縦断する通路にも工夫が施されている。通常であればステージへ向かって直線に設けられるのだが、このホールではわざわざ斜めに設置。これは特に左右の客席からステージへの視線を考慮し、アーティストを見えやすくするという配慮から生まれたものだという。こうしたポイントにもお客さん目線の気配りがにじみ出ているといえるだろう。

コンサートに使えるホールはもうひとつ。客席を自由に設置・レイアウトでき、最大で200席を確保できる音楽小ホールも魅力的だ。こちらは室内楽やピアノ、声楽のリサイタル、さらには地元ピアノ教室やアマチュア音楽家などの発表会に適した空間である。淡く明るい色彩を基調とした内装は品格を漂わせ、音の響きもナチュラルであるため、音楽家にとっては最高級の空間でステージ体験ができるだろう。

人が集まり発信する交流の場として、地域活性化の原動力に/いわき芸術文化交流館アリオス

(写真左)座席の配置が特徴的な大ホールの客席。(写真右)客席のレイアウトを自由に変更できる音楽小ホール。

アリオスは“集まれば何かがはじまる”場としてさまざまな施設を有しているが、実はアウトリーチコンサート(出張コンサート)やワークショップといったコンテンツの面でも独自のプランを実施。地元住民との密接な、しかもフレンドリーな関係を大切にしている。中でも注目されるのは、ホールで公演を行う音楽家やいわき出身または在住の若い音楽家が、地元の小中学校へ出向いてコンサートやワークショップを行う「おでかけアリオス」(この楽しげなタイトルにも心惹かれる)。邦楽やダンスなどさまざまな演者も参加しており、学校との連携も実現している。
また、さまざまな公演の舞台裏などに接することができる「たんけんアリオス」、地域のアート情報を発信する「スキマチイワキ」といったコンテンツも人気を集めており、可能性はまだまだいろいろ。こうしたプランは若い世代のスタッフやアーティストにも刺激を与えているようで、アリオスの運営を学びたい、参考にしたいという声も絶えないようだ。

アリオスは2018年で開館10周年を迎え、さまざまな公演や企画が用意されている。10年の間には東日本大震災という大きな出来事もあり、インフラが充実していたアリオスは住民の避難所となる一方、隣接する市役所の一部機能が館内に移転されるなど大きな役割を果たした。10周年のテーマは『たくさんのつながり これからも』。ますます親しまれる施設として、歴史を重ねていくことだろう。
ちなみにアリオス(Alios)とは「Art(芸術)、Life(生活)、Information(情報)、Oasis(憩いの場)、Sightseeing(観光)」の頭文字から生まれた名称である。

■いわき芸術文化交流館アリオス

所在地:福島県いわき市平字三崎1-6
TEL:0246-22-8111(代表)
大ホール形式:シューボックス型
席数:1,705席(車椅子8席含む)
オフィシャルサイトはこちら

 

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文/ オヤマダアツシ
photo/ (株)ナカサアンドパートナーズ