今月の音遊人
今月の音遊人:櫻井哲夫さん「聴いてくれる人が楽しんでくれると、自分たちの楽しさも倍増しますね」
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大友良英×竹村文近 異なる分野のふたりが“重なる力”を語った
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2015.2.6
tagged: 大友良英, 竹村文近, あまちゃん, 「打てば響く 音(おと)の力、鍼(はり)の力」, ボサノバ
社会現象ともいえる大ブームとなった『あまちゃん』の音楽を担当した音楽家、大友良英と、独自の治療法で各界より多くの信奉者を集める鍼灸師の竹村文近。音楽と鍼灸。まったく違う世界にいながら、ふたりはどこか響き合う。そして今年はじめ、音楽と鍼灸の力をテーマにした共著「打てば響く 音(おと)の力、鍼(はり)の力」がNHK出版から発刊された。
そもそもふたりの関係は、鍼灸師とその患者だ。「ひどい偏頭痛で、仕事もできなかったほど。最初はともかくおっかない印象でしたけど、竹村先生がいなかったら『あまちゃん』は生まれてないですよ。あんな陽気な音楽は作れない状態でしたから」
竹村は治療のなかで、大友が有名なギタリストであり、多才な音楽家であることを知る。
「大友さんの偏頭痛は、腰からきてるんですよ。人間の体は、育ってきた環境や仕事と大いに関係がある。ひと刺しでわかりますよ。大友さんは本当に素直な人。体もやったことにすぐに反応する。それに、音楽の幅が広く、これほど音感がいい人はいないですね」
音感とは絶対音感に象徴される教育上のそれではなく、本質的な意味で音を感じ取る能力だ。
そんなふたりの絶対的な共通点となったのは、東日本大震災後の活動だった。小学三年から高校卒業までを福島で過ごした大友。震災後、ともかく行かなければと思った。そして「プロジェクトFUKUSHIMA!」を立ち上げ、フェスティバルFUKUSHIMAをはじめとした活動を行ってきた。2013年からは祭りに主眼を置き、盆踊りに挑む。
一方の竹村は、福島を含めた被災地に教え子たちを連れて出向き、避難所や仮設住宅で鍼灸での治療を行った。その現場で、竹村は音楽のすごさを実感する。
「治療中、そこにいた10代から80代の方たちがいきなりそわそわし始めたことがあったんです。何だろうと思ったら、流していたボサノバが止まっていた。音楽が再び流れだし10秒もしないうちに、またみんな落ち着きを取り戻したんですよ」
治療中に流していたそのボサノバの魅力を竹村に伝えたのは大友だった。その大友は言う。
「先生は、音楽でいえば芸大出身じゃなくて、ストリートから出てきたような。こんな言い方をしたら怒られちゃいますね(笑)。でも、祭りならば、伝統の神輿を担いでいるような人。この人は本物だと思い、どんどん興味が湧いてきたんです」
治療中はほとんど会話を交わさないというふたり。竹村にとって患者と対話するのは鍼と灸であり、カルテは自分の手だ。大友も、譜面上で成立する西洋音楽の科学的分析を絶対としない。
人間的で心が通うような、音楽と鍼。深いところで共鳴しどこかシンクロするふたりの著作は、新しい世界を見せてくれそうだ。
『打てば響く 音(おと)の力、鍼(はり)の力』
竹村 文近 (著) 大友 良英 (著)
NHK出版
1,500円(税抜)
2015年1月24日発売
文/ 福田素子
photo/ 小杉久美子
tagged: 大友良英, 竹村文近, あまちゃん, 「打てば響く 音(おと)の力、鍼(はり)の力」, ボサノバ
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