今月の音遊人
今月の音遊人:さだまさしさん「僕にとって音楽は、最高に好きなものであり、最強に嫌いなもの」
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サクソフォンのレッスンに通っていると、半年に1度ぐらいの間隔でクラスの発表会がある。クラスごと、あるいは個人ごとに課題曲を選び、レッスン時間を利用して2~3か月、その曲に重点をおいて練習していく。
そして、本番となるのだが、他の楽器の講師の方にバックバンドをお願いす
るという本格的なものだ。その都度、場所は変わるのだが、大きめのレッスン室のときもあれば、外部の会場をレンタルするときもある。
最近は銀座のヤマハホールを利用することが多くなっている。僕の通う教室は同じビルにある。ヤマハホールは名門の音楽専用ホールだ。通常はプロフェッショナルな音楽家のための会場だから、僕などのようなシロウトが上がれるような舞台ではない。これも銀座でレッスンを受けているおかげだと思っている。
それはともかくとして、今回の課題曲はビリー・ジョエルの『ニューヨークの想い』だ。原題を『ニューヨーク・ステート・オブ・マインド』という。かつて車を運転中に聴いていた旧FEN(極東放送網)でしょっちゅうかかっていたのがこの曲だった。
ヒアリングができない僕には歌詞が「ニューヨークは今日も雨だった」と聴こえた。そんな曲があるのかと行きつけのレコード店の店主に訊いたら、この曲だろうと、LPレコードを差し出された。あらためて聴いてみた。「アイム・イン・ナ・ニューヨーク」が「雨のニューヨーク」と聴こえていたのだった。
発表会での譜面は講師の先生が採譜してくれたもので、アルトサクソフォンによるアドリブ部分をクラスメイトが、歌詞の部分を僕が吹くことになった。採譜は日本でいえば「コブシ」の部分も書かれていたので、解読は至難の技だった。習熟の程度にあわせて構成されている教科書とは違い、実際にレコーディングされている曲をそのままコピーするのだから、その難しさは空前絶後だった。
よくここまでできるようになったと自分を褒めたくなる。なにしろまったくのゼロからはじめたのだ。個人的な見解だが、楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう。この不思議な現象はなかなか理解しがたい。
そして、演奏会場は広いほど、自分の実力がついていくようだ。だからこそ、ヤマハホールでの発表会は貴重なものといえるだろう。
こうしてクラス発表会(管楽器合同クラスコンサート)も無事に終了しました。今回は珍しいことに、会場に応援隊が駆けつけてくれました。といっても2人でしたが。応援隊からは「やっぱり継続は力なりだね」という演奏への感想をいただきました。これ、褒められているのかどうかはわかりません。
応援隊は私の演奏のしばらく前から、ほかのレッスン生の演奏も聴いていて、その時間が思いのほかよかったらしい。「日曜の午後、銀座で音楽鑑賞なんて、考えたら贅沢なことだよ。また聴きにくるから来年も出なさい」とのことでした。
(写真は僕が通っている教室のフリースペース。吹き抜けで開放感があり、ガラス越しに銀座の街が一望できる)
作家。映画評論家。1950年生まれ。桐朋学園芸術科演劇コース卒業。劇団の舞台演出を経て、小説、エッセイなどの文筆の分野へ。主な著書に『正太郎の粋 瞳の洒脱』『ぼくの父はこうして死んだ』『江分利満家の崩壊』など。2006年からヤマハ大人の音楽レッスンに通いはじめ、アルトサクソフォンのレッスンに励んでいる。
文/ 山口正介
photo/ 長坂芳樹(楽器)
tagged: 大人の音楽レッスン, サクソフォン, ヤマハ, レッスン, パイドパイパー・ダイアリー
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