今月の音遊人
今月の音遊人:神保彰さん「音楽によって、人生に大きな広がりを獲得できたと思います」
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“毎朝起きてすぐにツィガーヌを弾く”ルーティンは自分との戦いでした/宮本笑里インタビュー
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2022.7.22
2007年のデビュー後、常にジャンルレスな活動によって多くの人々を魅了してきたバイオリニストの宮本笑里。2022年、デビュー15周年という節目となるこの年にリリースされたのが、彼女の根幹を成してきたクラシック音楽で構成されたアルバム『classique deux(クラシーク・ドゥ)』である。
「4年前にリリースした初めての全編クラシックのアルバム、『classique』は私にとっての挑戦でしたし、あのアルバムの制作をやり遂げた経験はとても大きな自信になりました。その後はポップス系のアルバムが続いていたので、15周年を迎えたタイミングで、再びクラシックを中心としたアルバムを作ろうと思ったのです。『classique』では自分にとって悔いのない演奏ができたのですが、ファリャの『スペイン舞曲第1番』のように、候補に挙がりながらも結果的に収録しなかった曲もありました。だから今回こそはと気合を入れて録音しています」
本作には多くの人々を魅了し続ける名旋律が並ぶが、ラヴェルの『ツィガーヌ』など一見異質な曲も並び、非常に多彩な内容となっている。
「ここ数年、どうしても気持ちがふさいでしまうタイミングというのが、私はもちろん多くの人々にもあると思います。そんなときに寄り添えるような、また気分が華やぐようなきっかけになれば……と思い選曲しました。ラヴェルの『ツィガーヌ』を入れたのは、パッと色が変わるようなものを入れたいという想いから、またこれまでコンサートでも何度か演奏していて、ぜひいつか録音したいと思っていたからです。この曲があるのとないのとではアルバムの印象もだいぶ変わってくるはずで、入れるからには生半可な気持ちではできません。レコーディングの2か月くらい前から、毎朝起きてすぐに『ツィガーヌ』を弾くというルーティンを定めて、自分との戦いを行っていました。その甲斐あって、レコーディングではほぼ一発録りができたので嬉しかったです」
宮本笑里というバイオリニストの多面性が伝わるアルバム『classique deux』だが、本作で欠かせないのが豪華なゲストの存在である。日本を代表するビオラ奏者の川本嘉子、NHK交響楽団首席奏者を経てソリストとして活躍するホルン奏者の福川伸陽、宮本同様にジャンルレスな活躍を続けるチェロ奏者の新倉瞳が華を添えている。
「川本さんはデビュー前からお世話になっており、ご指導をいただいたこともあります。時を経て共演できたのは光栄なことでした。曲はいろいろと考えましたが、以前共演をさせていただいたときに、とても感激したタンゴ・メドレーをお願いし、今回もたくさんの発見がありました。福川さんとの共演は2020年に入ってすぐの頃に私がSNSに投稿した『カヴァレリア・ルスティカーナ』の演奏動画がきっかけです。動画をご覧になって連絡をくださり、福川さんのホルンを重ねた“コラボ動画”をご自身のSNSに投稿してくださったのです。ついに一緒に音を奏でることができてとても嬉しかったですね。アルバムでも共演のきっかけになった曲を……と考えたのですが、いろいろと相談をしたうえで『木星』にしました。バイオリンにホルンとピアノという組み合わせは非常に珍しいですが、とても素敵なサウンドになったと思います。またこの組み合わせでいろいろな曲を演奏してみたいですね。新倉さんはラジオでのトークなど、お話しする機会は多かったのですが、共演はほとんどなく、ようやくご一緒できてとても嬉しかったです。彼女もさまざまなジャンルを演奏される方なので、すごく細やかなところまで敏感に感じとってくださって、とても楽しかったです」
そして全曲を支えるのは、2018年の『classique』でも共演したピアニストの佐藤卓史。引く手あまたの奏者として活躍しているが、今回もその技が光っている。
「どんなことにも柔軟に対応してくださるだけではなく、佐藤さんならではの表現も示してくださるので、毎回とてもたくさんの刺激をいただいています」
ショパンの夜想曲やシューマンの『トロイメライ』のような静かで美しい楽曲から、スペイン舞曲にタンゴまで、バラエティに富んだ『classique deux』は、さまざまな場面にマッチするアルバムとなっている。
「ここ数年はコロナの影響もあり心が落ち着かないことが続きますが、私自身、やはり音楽に救われてきました。このアルバムが皆様のお力に少しでもなれたらとても嬉しいです」
発売元:ソニーミュージック
発売日:2022年7月20日
【初回生産限定盤】(CD+Blu-ray+スリーブ・ケース)
価格:3,850円(税込)
詳細はこちら
【通常盤】(CD)
価格:3,300円(税込)
詳細はこちら
11月19日(土)城址公園ホール〈壬生中央公民館〉(栃木県下都賀郡壬生町本丸1-8-33)
出演:宮本笑里(バイオリン)/佐藤卓史(ピアノ)、ゲスト:新倉瞳(チェロ)
11月22日(火)浜離宮朝日ホール(東京都中央区築地5-3-2)
出演:宮本笑里(バイオリン)/佐藤卓史(ピアノ)、ゲスト:新倉瞳(チェロ)
11月26日(土)ザ・フェニックスホール(大阪府大阪市北区西天満4-15-10)
出演:宮本笑里(バイオリン)/浦壁信二(ピアノ)、ゲスト:福川伸陽(ホルン)
12月25日(日)宗次ホール(愛知県名古屋市中区栄4-5-14)
出演:宮本笑里(バイオリン)/佐藤卓史(ピアノ)、ゲスト:川本嘉子(ビオラ)
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文/ 長井進之介
photo/ AKINORI ITO
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