Web音遊人(みゅーじん)

コレペティトゥーアのお仕事

歌手・演奏者と共に観客を魅了する音楽を作り上げたい/コレペティトゥーアの仕事(後編)

3歳からピアノを習い、音楽好きの母の影響でさまざまな音楽を聴いて育った浅野さん。小学校では合奏クラブ、中学校ではブラスバンド部でトロンボーンに親しむなど、アンサンブルが大好きだったという。
「声楽作品に初めて触れたのは、芸術系の高校の音楽科に進んでからです。歌の伴奏という役割を意識したのは高校2年生のときで、必修だった歌曲伴奏法のテストでとても良い成績が取れ、『これが私の進む道かもしれない』と思いました」
その後、桐朋学園大学のピアノ科に進学。ソリストの勉強以上に、声楽や器楽の伴奏、室内楽、指揮伴奏(指揮者の練習時のピアノ伴奏)に時間を費やし、大学卒業後はさらに2年間、声楽科の伴奏研究員として伴奏の知識、テクニックに磨きをかけた。
「当初はドイツ・リート(歌曲)のピアニストを目指していましたが、周囲のすすめもあって留学したイタリアで、総合芸術であるオペラの魅力を再確認しました。コレペティトゥーアには指揮者の感性や観点も求められるので、指揮伴奏をしていた経験が活かせそうでしたし、ピアニストとしても音楽に深く関われるだろうと思ったんです」

浅野さんは現在、コレペティトゥーアのみならず、昭和音楽大学・大学院の講師として後進の指導に当たるほか、国内外の歌手のリサイタルでの共演ピアニスト、音楽祭のために来日したイタリア人バイオリニストのピアニスト兼通訳としても活躍している。
「歌の伴奏であっても、器楽の伴奏であっても、共にひとつの音楽を作り上げるという、私のスタンスが変わることはありません」と語る浅野さんが、ピアノの演奏技術を磨き、“辞書およびデータベース”として知識を積み上げていく努力を止めることはない。全ては、舞台で歌手・演奏者を輝かせるために。

コレペティトゥーアのお仕事

ギリシア神話を題材に扱ったオペラに携わったときは、神話の辞典を買って勉強したという浅野さん。「いくら勉強しても足りることはありませんが、歌手がより深い表現を求めてきたときにヒントを与えられる演奏者でいたいです」

Q.子どものころになりたかった職業は?
A.幼いころは、多くの女の子が抱く「お花屋さんになりたい」といった具体的な夢はなく、「何か楽しいことがしたいな」と思っていた気がします。ただ、小学校の卒業文集に「ピアニストになりたい、音楽の先生になりたい」と書いた記憶があるので、音楽の道に進みたいという意志は早い段階からあったようです。

Q.ピアニストになっていなかったら何の仕事をしていた?
A.昔から外国語や異文化に興味がありました。ですので、別の言語でものを考えられて、自分と違う環境で育った人たちと接点が持てて、かつ日本にいながらにして仕事ができる通訳ガイドになっていたんじゃないかと思います。

Q.プライベートでよく聴く音楽は?
A.実は、筋金入りのさだまさしファンです。藤原歌劇団に所属している女性歌手のなかにもファンがいて、連れ立ってコンサートに行くこともあります。私は普段カラオケをしませんが、さだまさしファンの歌手仲間でカラオケ大会を開催しているようなので、ぜひ一度参加してみたいですね(笑)。クラシック音楽を聴くとどうしても仕事のスイッチが入ってしまい、純粋に楽しめないので、プライベートでは昔のフォークソングを中心に、日本のシンガーソングライターの曲を聴くことが多いです。

Q.最近観に行った公演は?
A.音楽の舞台ではないですが、直近で行ったのは大好きなフィギュアスケートの公演です。近年、フィギュアスケートの大会で歌入りの楽曲が使用できるようになり、オペラのアリアを使う選手が増えていますが、一流のフィギュアスケーターは音に乗るのがうまい、音を身体で表現するのが上手だなといつも感心しています。

Q.仕事をしていて意外に苦労することは?
A.涙腺のコントロールでしょうか。特に悲劇のオペラ作品の伴奏をするときは、歌手の熱演を前に思わず涙が出そうになることもあります。でも泣くわけにはいかないので、曲の合間まで我慢して、そっと涙をぬぐったこともあります。ひとりで弾き歌いの練習をするときは、自分の言葉が身体にダイレクトに響いてくるので、ぼろ泣きしながら練習することもあります。もちろん、人には見せられません(笑)。

前のページに戻る

 

特集

今月の音遊人「世良公則」さん

今月の音遊人

今月の音遊人:世良公則さん「僕にとって音楽は、ロックに魅了された中学生時代から“引き続けている1本の線”なんです」

12327views

音楽ライターの眼

アレーナ・ディ・ヴェローナ音楽祭の「イル・トロヴァトーレ」でヴェルディを堪能する

3167views

CLP-600シリーズ

楽器探訪 Anothertake

強弱も連打も思いのままに、グランドピアノに迫る弾き心地の電子ピアノ クラビノーバ「CLP-600シリーズ」

45023views

暖房

楽器のあれこれQ&A

ピアノを最適な状態に保つには?暖房を入れた室内での注意点や対策

56870views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

12900views

オトノ仕事人

歌、芝居、踊りを音楽でひとつに束ねる司令塔/ミュージカル指揮者・音楽監督の仕事

3260views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

24752views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

6253views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

22892views

われら音遊人

われら音遊人:アンサンブル仲間が集う仲よしサークル

9803views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

音楽知識ゼロ&50代半ばからスタートしたサクソフォンのレッスン

8061views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10363views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

11806views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

10352views

音楽ライターの眼

ギリシャ出身のハード・ブルース・ギタリスト、スタヴロス・パパドポウロスがロリー・ギャラガー・トリビュート作を発表

4329views

ホールのクラシック公演を企画して地域の文化に貢献する/音楽学芸員の仕事

オトノ仕事人

アーティストとお客様とをマッチングさせ、コンサートという形で幸福な時間を演出する/音楽学芸員の仕事

12217views

5 Gravities

われら音遊人

われら音遊人:5つの個性が引き付け合い、多様な音楽性とグルーヴを生み出す

2016views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

限りなく高い精度で鍵盤とハンマーの動きを計測するヤマハ独自の自動演奏ピアノの技術

24515views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

24752views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

すべては、あの日の「無料体験レッスン」から始まった

5468views

トロンボーン

楽器のあれこれQ&A

初心者なら知っておきたい、トロンボーンの種類や選び方のポイント

13685views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

11013views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

26108views