Web音遊人(みゅーじん)

沖仁

ギターの多彩な音色が楽しめるデビュー20周年記念アルバム『20 VEINTE~20年の軌跡~』/沖仁インタビュー

ポップス、ジャズ、クラシックから純邦楽まで、各界とのコラボレーションによって、フラメンコギターの世界を広めてきた実力派フラメンコギタリスト沖仁。20代の頃は、「生きたフラメンコ」を吸収しながら日本とスペインを往復して過ごした。自主制作盤の発表から20年。演奏活動はもちろん、楽曲提供、プロデュース、執筆と活躍の場を広げる沖が、デビュー20周年記念アルバムを2022年9月21日にリリース。

頭の中で鳴っている音を形にしたい

スペイン語で「20」を表す「VEINTE(ベインテ)」がタイトルの『20 VEINTE~20年の軌跡~』。自身の作曲によるオリジナル8曲と、カバー2曲の全10曲に、沖の追求する世界が凝縮されている。
「20周年記念ということで何か集大成的なものを、という気持ちもありましたが、それはあまり意識せずに、今、自分の頭の中で鳴っている音を形にできれば最高かなと思いました。シンプルでありながらすごく難しい目標でもあるのですが、一貫するコンセプトとしてはそんな思いがありましたね」
頭の中で鳴っていた音は、「かなり明確に鳴り止まなかった」という。
「その感じはインディーズの頃もそうだったので、それで自分の原点に戻っているようにも思いました。自分がいいなと思える演奏を人に聴いてもらいたい、というシンプルな思いは変わっていませんが、デビュー当時よりは遠くが見えている気もします」

沖仁

それぞれの曲に「なぞかけ」が潜んでいる

オリジナル曲のタイトルが個性的。3曲目の『カジャオ』、7曲目の『ススペ』は、いずれも地名。どのような思いが込められているのだろう。
「カジャオはマドリードの地区の名前で、僕が住んでいた場所です。ススペはサイパン島の町の名で、戦争の爪痕が残る街。でも太陽の光と波と風がすごく爽やかな、穏やかな街で、その印象を自分なりの鎮魂の意味も込めて作りました」
地名のほかにも、別の意味があるという。
「カジャオには”黙っている”という意味もあります。それで、胸の内にある思いを言葉にせずにずっと秘めている男性のストーリーを曲にする、という重層的な作り方をしました。この曲以外にも、いろいろな小説を題材にして作った曲があります。答えは伏せてあるのですが、そんな謎かけも楽しんでいただければと思います」
また本作では、イギリスを代表する作曲家・ピアニストのアレクシス・フレンチ、日本を代表するタブラ奏者のユザーン、スペインで活躍するフラメンコギタリストのアルベルト・ロペスの3人との共演も注目点のひとつ。こうしたコラボレーションから発想されるプロデュースや、ピアノやバイオリン、フルートを加えた味付けにも、沖ワールドがキラリと光っている。

曲によって厳選したギター

レコーディングでは、楽器選びにもとことんこだわった。実際に演奏してみて、別のギターに替えるといったこともたびたびあったという。その中で、カバー曲『Tombo』(沖のソロ演奏)をはじめ4曲で使われたのが、沖のためにヤマハの設計者何木なにき明男がカスタマイズした“FC50 プロトスペシャル”。
「カラッとした部分と、すごく粘る部分と、どんなフレーズにも応えてくれる感じがします。かき鳴らしも得意だし、単音もすごく説得力がありますね」

沖仁
そして、ギターの音色とともにぜひ耳を傾けてほしいのが、フラメンコ特有の、手を叩く「パルマ」。
「パルマはフラメンコギターの次に身近な楽器。パルマがあると一気にフラメンコの香りが匂い立ってくる感じがありますね。今回のレコーディングでも、パルマをどう録るかについて、とても細かくディレクションしました」
このように、現在の沖仁の魅力がぎっしり詰まった、味わいどころ満載のアルバム。
「フラメンコになじみのない方が、ギターミュージックとして聴かれても楽しめるように工夫しています。いろいろな人に、いろいろな聴き方をしていただけるよう、隠れたアイデアがいっぱいありますので、ぜひ聴いてください!」
秋からは、アルバム発売記念全国ツアーも始まる。収録曲が違ったアレンジで聴けるとのことなので、こちらも楽しみにしてほしい。

■インフォメーション

●アルバム『20 VEINTE~20年の軌跡~』

沖仁
発売元:ソニーミュージック
発売日:2022年9月21日
価格:3,300円(税込)
詳細はこちら

●沖仁 デビュー20周年/アルバムリリース記念ツアー ~20 VEINTE [ベインテ]~

日時:2022年11月23日(水・祝)14:30開演(13:45開場)
会場:第一生命ホール(東京都中央区)
料金:6,400円(税込・全席指定)
出演:沖仁(フラメンコギター)、大儀見元(パーカッション)、藤谷一郎(ベース)、須藤信一郎(ピアノ)、伊集院史朗(パルマ/踊り)、山本玲(パルマ/踊り)ほか
詳細はこちら
そのほかのツアー情報はオフィシャルサイトでご確認ください。
沖仁オフィシャルサイト

オフィシャルFacebook オフィシャルTwitter オフィシャルInstagram

photo/ 宮地たか子

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:西村由紀江さん「誰かに寄り添い、心の救いになる。音楽には“力”があります」

8593views

2017年ゴールデンウィーク直前を彩った日本武道館3連戦/ポール・マッカートニー、ドゥービー・ブラザーズ、サンタナ

音楽ライターの眼

2017年ゴールデンウィーク直前を彩った日本武道館3連戦/ポール・マッカートニー、ドゥービー・ブラザーズ、サンタナ

5343views

クラビノーバ「CSPシリーズ」

楽器探訪 Anothertake

これまでピアノを諦めていた多くの人を救う楽器。楽譜作成・鍵盤ガイド機能が付いた電子ピアノ/クラビノーバ「CSPシリーズ」

22075views

楽器のあれこれQ&A

ドラムの初心者におすすめの練習方法や手が疲れないコツ

11223views

おとなの 楽器練習記 須藤千晴さん

おとなの楽器練習記

【動画公開中】国内外で演奏活動を展開するピアニスト須藤千晴が初めてのギターに挑戦!

8483views

オトノ仕事人

深く豊かなクラシックの世界への入り口を作る/音楽ジャーナリストの仕事

5097views

久留米シティプラザ - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

世界的なマエストロが音響を絶賛!久留米の新たな文化発信施設/久留米シティプラザ ザ・グランドホール

19687views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

14465views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

民族音楽学者・小泉文夫の息づかいを感じるコレクション

10407views

スイング・ビーズ・ジャズ・オーケストラのメンバー

われら音遊人

われら音遊人:震災の年に結成したビッグバンド、ボランティア演奏もおまかせあれ!

5996views

山口正介 Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

マウスピースの抵抗?音切れ?まだまだ知りたいことが出てくる、そこが面白い

6009views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10431views

桑原あい

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若きジャズピアニスト桑原あいがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

15702views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

13235views

音楽ライターの眼

シリーズ三度目のショスタコーヴィチはさらなる進化と深化の高みへ/徳永二男、堤剛、練木繁夫による珠玉のピアノトリオ・コンサートVol.8

1920views

オトノ仕事人

アーティストの個性を生かす演出で、音楽の魅力を視聴者に伝える/テレビの音楽番組をプロデュースする仕事

8685views

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

われら音遊人

われら音遊人:同一楽器でハーモニーを奏でる クラリネット合奏団

8442views

変えるべきもの、変えざるべきものを見極める

楽器探訪 Anothertake

変えるべきもの、変えざるべきものを見極める

14799views

ホール自慢を聞きましょう

歴史ある“不死鳥の街”から新時代の芸術文化を発信/フェニーチェ堺

8931views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

あれから40年、おかげさまで「音」をはずさなくなりました

4786views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バイオリンの購入ポイントと練習のコツ

20914views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

10136views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10431views