Web音遊人(みゅーじん)

松井秀太郎

今月の音遊人:松井秀太郎さん「言葉にできない感情や想いがあっても、音楽が関わることで向き合える」

ジャズ・フィールドはもとより、幅広いジャンルで活躍する気鋭のトランぺッターとして話題を集める松井秀太郎さん。待望の2ndアルバムの発売を2024年10月に控えてさらに注目が高まるなか、彼と音楽の関わりについてうかがいました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

時期によって聴くものも変わりますので、なかなかどれが多いっていうのは難しいですが……。やっぱりホルストの『吹奏楽のための組曲』でしょうか。ひとりで練習するときも、よく演奏しています。
第一組曲と第二組曲があって、曲自体は全体的にシンプル。けれども実はいろんな要素があるし、メロディとしても美しいし、形式としても美しい。もちろんトランペットのパートも、ものすごくいろんな要素が詰まっている曲だと思います。
ひとりで練習するときの自分のコンディションをはかるバロメーターになっていて、調子が悪いところから復帰しようとするときも演奏するようにしています。初心に帰るというか、ずっとお世話になっている曲ですね。

Q2.松井さんにとって「音」や「音楽」とは?

音楽って、どんな感情にもフィットするものだと思うんです。言葉にできない感情や想いがあっても、音楽が関わることで向き合えるというか。
物心つく前から自分の生活は音楽ばかりでしたので、悲しいことがあっても嬉しいことがあっても、音楽がずっとそばにあることによって助けられてきました。
もちろん思ったように演奏するには、すごく練習しなきゃいけないし、音楽はただ楽しいだけのものではないですが、それも含めて人生のほぼ全てを音楽と一緒に歩んできました。
自分にとっては、なくてはならないものというか、生きていくうえで、人間として必要なものですね。

松井秀太郎

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

ずっとクラシックをやってきた自分がジャズに出会ったとき、衝撃的だったもののひとつに即興があります。なにも決めないで音楽がスタートしたり、自分がこう吹こうと思っていたフレーズが相手のプレイによって変わっていったり……。こうしなきゃいけないっていうルールがないからこそ、ものすごく自由に音で遊んでいるように見えました。だから、ジャズ・ミュージシャンには音楽を遊んでいると感じられる人が多いです。自分が学生時代からお世話になっているピアニストの小曽根真さんは、その代表的な人じゃないでしょうか。
ですが、素晴らしいクラシックの演奏家の方の音楽を聴いたり、一緒に演奏をしたりすると、音は譜面通りでもその中で、ものすごく自由に音楽をしているなと感じることが多いです。
ジャズとクラシックでは演奏内容、形式は違うことが多いですが、演奏者の気持ちは変わらないなと実感しています。

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

ネガティブな感情があっても音楽で表現することによって、それを受け入れられるような感じがするのは、音楽のすごくいいところかなと思います。
ただ、普段からそういう目線で音楽をとらえているわけではないですし、むしろ“やっていなかった”を想像できないというか。
小さいころからゲームなどはやらず遊びも音楽で、小学校の休み時間も音楽室に行って、仲のいい友達とアンサンブルをして遊んでいました。だからもう音楽がないと、何をすればいいのかわからず困ってしまいます。
そういえば、音楽室で遊ぶときは、いつも音楽の先生が付き添ってくれていました。その先生が昼ご飯を食べない方で、自分の親とも“不思議な先生だね”って話していたんです。このあいだその先生に会いに行って当時のことを話したら、自分が必ず昼休みに行くものだから、毎日昼食をとらずに待っていたんだそうです。先生には申し訳ない気持ちになりましたが、そのくらいずっと音楽室に入り浸っていたんだな、本当に音楽が楽しくてしょうがなかったんだなと思いました。

松井秀太郎

松井秀太郎〔まつい・しゅうたろう〕
1999年東京都国立市生まれ。幼少期から独学でピアノを弾き、9歳でトランペットをはじめる。国立音楽大学附属高等学校でクラシックを専攻し、同大学入学を機にジャズへ転向。在学中から自身のジャズコンサートの開催やBLUE NOTE TOKYO ALL STAR JAZZ ORCHESTRAへの参加など、本格的にプロ活動も始める。2023年7月にデビューCD『STEPS OF THE BLUE』を発表。2024年10月に2ndアルバム『DANSE MACABRE』のリリースを予定している。
オフィシャルサイト

YouTube公式チャンネル オフィシャルX(旧Twitter) オフィシャルInstagram

photo/ 宮地たか子

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:渡辺真知子さん「幼稚園のころ、歌詞の意味もわからず涙を流しながら歌っていたのを覚えています」

7327views

音楽ライターの眼

スペース・ジャズ神サン・ラー主演SF映画『スペース・イズ・ザ・プレイス』2021年1月公開

3054views

楽器探訪 Anothertake

おしゃれで弾きやすい!新感覚のアコースティックギター「STORIA」

47107views

トロンボーン

楽器のあれこれQ&A

初心者なら知っておきたい、トロンボーンの種類や選び方のポイント

13417views

おとなの 楽器練習記 須藤千晴さん

おとなの楽器練習記

【動画公開中】国内外で演奏活動を展開するピアニスト須藤千晴が初めてのギターに挑戦!

7782views

オトノ仕事人

音楽をやりたい子どもたちの力になりたい/地域音楽コーディネーターの仕事

9037views

紀尾井ホール

ホール自慢を聞きましょう

専属の室内オーケストラをもつ日本屈指の音楽ホール/紀尾井ホール

14430views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

3154views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

22595views

5 Gravities

われら音遊人

われら音遊人:5つの個性が引き付け合い、多様な音楽性とグルーヴを生み出す

1848views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

すべては、あの日の「無料体験レッスン」から始まった

5362views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10101views

世界各地で活躍するギタリスト朴葵姫がフルートのレッスンを体験!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】世界各地で活躍するギタリスト朴葵姫がフルートのレッスンを体験!

7742views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

22595views

ウィグモア・ソロイスツ・コンサート

音楽ライターの眼

変幻自在の表現力、至福のアンサンブル/ウィグモア・ソロイスツ・コンサート

1012views

仁宮裕さん

オトノ仕事人

アーティストの音楽観を映像で表現するミュージックビデオを作る/映像作家の仕事

13999views

武豊吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人: 地域の人たちの喜ぶ顔を見るために苦しいときも前に進み続ける

1760views

ピアニカ

楽器探訪 Anothertake

ピアニカを進化させる「クリップ」が誕生

16684views

人が集まり発信する交流の場として、地域活性化の原動力に/いわき芸術文化交流館アリオス

ホール自慢を聞きましょう

おでかけ?たんけん?ホール独自のプランで人々の厚い信頼を獲得/いわき芸術文化交流館アリオス

7772views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.7

パイドパイパー・ダイアリー

最初のレッスンで学ぶ、あれこれについて

4710views

エレキベース

楽器のあれこれQ&A

エレキベースを始める前に知りたい5つの基本

4257views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

6918views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

30291views