Web音遊人(みゅーじん)

児玉桃

メシアンの音楽は教会のステンドグラスのように光や色が変容していく感じがします/児玉桃インタビュー

パリを拠点にヨーロッパ各地、北米、日本をはじめとするアジア各地で活発な演奏活動を展開しているピアニストの児玉桃。J.S.バッハからメシアン、現代作品まで幅広いレパートリーを誇る。幼少時代からヨーロッパで過ごし、ドイツの学校の教育を経てパリ国立高等音楽院においてマレイ・ペライア、アンドラーシュ・シフ、タチアナ・ニコラーエワらに師事した。1991年にはミュンヘン国際音楽コンクールにおいて、最年少で最高位に輝いた。
そんな彼女が2025年11月8日(土)、東京オペラシティ コンサートホールで高関健指揮 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団と共演し、メシアンの代表作のひとつ『トゥーランガリラ交響曲』を演奏する。

『トゥーランガリラ交響曲』はホールで、生の演奏で体感してほしい

本曲のオンド・マルトノ(フランス人電気技師モーリス・マルトノによって1928年に発明された電気楽器および電子楽器の一種)を担当するのは、この楽器の第一人者であり、『トゥーランガリラ交響曲』を国内外で何度も演奏している原田節である。
「『トゥーランガリラ交響曲』は、これまでさまざまな楽団の演奏を聴いてきました。最初に聴いたのはもう35年ほど前のことですが、パリで小澤征爾指揮 ボストン交響楽団の演奏で、ピエール=ロラン・エマールがピアノを担当していました。その衝撃は大きく、メシアンの偉大さ、作品のすばらしさに驚嘆しました。私はメシアン夫人のイヴォンヌ・ロリオ先生(メシアン作品のほとんどの初演者)との交流も深く、『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』をはじめメシアン作品は数多く演奏していますが、『トゥーランガリラ交響曲』は空間を染めるというか、空気の流れを変えるというか、教会のステンドグラスのように光や色が変容していく感じがします。それはホールでの生の演奏で体感できる貴重な感覚だと思います」
児玉桃
児玉桃はロリオ夫人からメシアンの未発表作品『ヴァイオリンとピアノのための幻想曲』の楽譜を託され、世界初演を行っている。なお、原田節はロリオ夫人の妹ジャンヌ・ロリオ(オンド・マルトノ奏者)に師事している。
「原田さんとは長年のお付き合いがあり、いつも新たなことを視野に入れ、話がとても興味深い。高関さんは、私がミュンヘン国際音楽コンクール後に初めて日本でショパンのピアノ協奏曲第2番を演奏したときに指揮をしてくださり、それ以来もっとも多く共演している指揮者です。ですから、今回はとても楽しみです」
また、11月11日(火)には武蔵野市民文化会館 小ホールでフランスの個性派ピアニスト、アレクサンドル・タローとの初のデュオ・リサイタルを開く。これはブラームス、フォーレ、メシアン、サティなど多彩な作品が組まれている。
「アレクサンドルとは長年の親友です。パリ音楽院時代、彼が13歳、私が11歳のときに出会いました。当時からクリエイティブな考えの持ち主で、それが彼のピアノを形作り、初めての連弾はとても刺激的なものになると思います。彼が録音した『タローと22人の仲間たち 46手によるフォーハンズ』では、ハイドンの曲で共演しているんですよ」

コンクールでは新たな才能を見いだしたい

児玉桃は2025年のエリザベート王妃国際音楽コンクールの審査員を務めたばかりだが、今秋にはショパン国際ピアノコンクールの審査員として名を連ね、2027年の浜松国際ピアノコンクールでは審査委員長を務める。
児玉桃
「コンクールの大変さは身をもって知っています。私は審査をするというよりも、コンサートを聴いている気持ちで演奏を楽しみ、新たな才能を見いだしたいと考えています。ショパン・コンクールはショパンのみの作品による特別なコンクールですので、その意味ではどんなショパンが登場してくるか興味は尽きません。浜松国際ピアノコンクールの審査委員長を依頼されたときはとても驚き、サプライズのような感じでしたが、私はいまアルフレート・ブレンデルやアンドラーシュ・シフら偉大なピアニストと若手ピアニストのちょうど真ん中の世代ですので、巨匠の教えを受けて、今は自分が指導にあたっていることによって両方に繋がりが強いこと、また、日本人であってヨーロッパに拠点を置いていることなど、これまでの経験を生かし、新たな発見や目標や夢を求め、自分の役割を真摯に受け止め、精一杯行っていきたいと考えています。音楽のない世界は考えられません。私は音楽なしでは生きられず、ピアノを弾いてきて本当によかったと思っています。音楽は景色や色彩や物語を思い描くことができ、その場にいる人たちと同じ感覚を共有できる、まさにミラクルな存在。私は日々の練習のなかで、その音楽の魅力を聴いてくださる方たちと分かち合いたいと思っています」
彼女が弾くメシアンの『トゥーランガリラ交響曲』では、ホールが教会の響きに満たされるに違いない。

■東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第383回定期演奏会

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第383回定期演奏会『トゥーランガリラ交響曲』

日時:2025年11月8日(土)
会場:東京オペラシティ コンサートホール(東京都新宿区)
出演:高関健(常任指揮者)、原田節(オンド・マルトノ)、児玉桃(ピアノ)
料金:S席7,000円、A席6,000円、B席5,000円、C席4,000円(すべて税込)
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■児玉桃&アレクサンドル・タロー デュオ・リサイタル

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photo/ Lyodoh Kaneko

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