今月の音遊人
今月の音遊人:上原彩子さん「家族ができてから、忙しいけれど気分的に余裕をもって音楽と向き合えるようになりました」
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全米デビューから32年間でアルバムのリリースは28枚目。権威ある「ビルボード」のコンテンポラリー・ジャズ・チャートでは常連であり、ヨーロッパ諸国やロシアなどを含む世界レベルで熱狂的な人気を博している松居慶子。2019年2月にリリースされた最新アルバム『Echo(エコー)』は、アコースティックピアノのサウンドが心地よく、メロディアスなバラード調の曲からラテン・フレーバーあふれるナンバーまで、素敵な写真集のページをめくるような趣にあふれている。
「デビューした頃からの長い付き合いになるミュージシャンたちを含め、スタジオで顔を合わせながら和気あいあいと演奏するという昔ながらのレコーディングを楽しみました。それぞれに素晴らしいミュージシャンですが、お互いを聴き合い、無心に音へ没頭している姿と演奏に、鳥肌が立ちました。みんなが心と魂を音に込めてくれたアルバムであり、その象徴として『Echo』という曲をアルバム・タイトルにしました」
尊敬するアーティストであり、最近では共演の機会もあるベーシストのマーカス・ミラーが参加したその曲を筆頭に、ロベン・フォードの爽快なギター・ソロが花を添える『Marlin Club Blues』、人気シンガーのグレッチェン・パーラトがスキャットで参加するブラジル音楽テイストの『Spirit Dance』、カイル・イーストウッドのアコースティック・ベース・ソロが際立つ『Return to Eternity』など、ゲスト・アーティストたちのプレイに耳を奪われるトラックも。前作『Journey To The Heart』で“新しい松居慶子サウンド”に貢献したミュージシャンや、“旅の家族”(ツアーメンバー)も参加。ファミリーならではの和気あいあいとした演奏を聴かせてくれる。
「基本的な楽譜はありますが、各曲、2回ほどの通しのリハーサルのみで、すぐに本番のテイク。それぞれの個性を演奏に反映させつつ、私の曲に対するリスペクトも感じられて、幸せなひと時でした」
収録された10曲はすべて松居自身のペンによるもの。ピアノの前で集中し、メロディーやモティーフが降りてくるのを待つというデビュー当時からの作曲スタイルは変わらない。「作る」という意識ではなく、「受け取る」という姿勢なのだという。
「メロディーを大切にしたいという気持ちはずっと変わりません。今回のアルバムもそうして私の中に宿った曲ばかりですが、中でも『Unshakable』のベースラインや『Echo』『Return To Eternity』のメロディーたちは最初に届いてきて頭の中で鳴り続け、まるで『私たちをアルバムに入れなくちゃだめよ!』と主張しているみたいでした」
アルバムのリリースを機に、2019〜2020年は全世界100か所以上にも及ぶ長いツアーを行う。日本でもこの6月、ブルーノート東京での2デイズ4公演を予定。2年ぶりとなる貴重な来日公演だけにファンは待ちこがれているはずだ。
「自宅に帰ってもすぐにパッキングし直して別の街へ向かいますから、空の上(飛行機)が自分の家なのかなと思うほどですが、いろいろな街でお客様の笑顔を見ていると、音楽は国境も人種も宗教も越えて人をつなぐものだなと実感します。自分の音楽はたくさんの人を笑顔にするため役立っているのだなと思えますし、それが自分のミッションなのだろうと気づきました。私自身も皆さんの笑顔でリチャージしています。それに、長くツアーをしていると同じ曲でも常に新鮮な気分で楽しんでいますから、自然に演奏が育つのです。東京はツアーの中盤(6月21日、22日)ですから、きっと充実したプログラムをお届けできるでしょうね」
プロデビュー以前よりヤマハとの関係も強い。
「私にとって理想的なピアノは、自分のエネルギーや感情から生まれるダイナミクスや抑揚などを受け取ってくれて、ストレートに音にしてくれるパートナー。ですから訪れたホールのピアノがCFXだとハッピーですし、素晴らしい調律師の方がケアしてくださるので安心なのです」
アルバム『Echo』でも、そのCFXによるピュアなサウンドが聴き手に心地よいシグナルを送る。初夏〜盛夏〜初秋と季節が移り変わる中、新時代を迎えた2019年をフレッシュに過ごすパートナーとして、松居慶子の音楽はいかがだろうか。
『Echo』
発売元:avex trax
発売日:2019年2月22日
価格:3,000円(税抜)