Web音遊人(みゅーじん)

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

われら音遊人:同一楽器でハーモニーを奏でる クラリネット合奏団

オーケストラや吹奏楽、ブラスバンドなどで活躍するクラリネット。そのクラリネットだけで編成を組んで合奏すると……。深みのある豊かな音とハーモニーに驚かされる。クラリネット合奏団「クラノワ・カルーク・オーケストラ」は、練習会場で美しい音色を響かせていた。

合奏団の結成は1997年。20年以上の歴史を持ち、現在は10代から60代まで48人が在籍する。設立には、2005年に亡くなった吹奏楽の巨星、アルフレッド・リード氏が深くかかわっているという。「アルフレッド先生の指揮で演奏する〝音の輪〞というアマチュアの吹奏楽団があり、そのクラリネット・セクションのメンバーが母体です」

代表を務める福田豊さんはそう話す。〝音の輪〞から始まったクラリネットの輪だから「クラノワ」。練習時のリード氏が片言の日本語でよく言っていた「軽〜くやりなさい」から「カルーク」。それが楽団名の由来だとか。

福田さんはクラリネット以外にサクソフォンやフルートも操り、指揮までこなす。複数のビッグバンドや吹奏楽団に所属する福田さんにとって、クラリネット合奏団ならではの魅力とは?
「同一楽器で大人数が集まってできる吹奏楽器は、あまりないと思うんです。クラリネットは大勢でもきちんとしたサウンドがつくれます」

音色が主張しあって喧嘩することがない。それどころか、そのアンサンブルはパイプオルガンの音色をも彷彿とさせる重厚な響きをもつ。創設当初からのメンバーのひとりである川口由美子さんも、「同一楽器なので、音色や勢いを変えていかなければ単調な演奏になってしまう。いい面と難しい面が同居していますよね」と笑顔を見せる。

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

クラリネットとひと口にいってもエスクラと呼ばれる小さいもの(Ebクラリネット)から、アルトクラリネット、バスクラリネット、コントラバスクラリネットまで、種類はさまざま。

活動は、年に一度の定期演奏会と春の音楽会がメイン。記念すべき第20回を迎えた昨年の定期演奏会は、ミューザ川崎シンフォニーホールで。日本フィルハーモニー交響楽団の首席クラリネット奏者である伊藤寛隆氏ほか大御所を迎え、盛況だった。

レパートリーはクラシックからポップスまで幅広い。クラリネット合奏の市販の楽譜が少ないことから、9割以上がオリジナルアレンジだという。プロの作曲家への委嘱作品などオリジナル曲もある。

練習は日曜日で月2〜3回。メンバーは神奈川、東京、千葉など幅広い地域から参加し、会場もさまざまだ。春と秋の合宿ではみっちり練習した後、反省会という名の飲み会が行われるそうだ。

奏者とは別に指導者を迎えているのも同楽団の特徴だろう。
「練習のクオリティが大切だと思っています。それが活気につながるのでは?だから指導者にはこだわりますね」と福田さん。川口さんは「と言っても、ただ厳しくギスギスやるのではなく、吹いていて楽しくさせてくださる先生がいちばんです」

みんなで練習を重ねるごとに、曲が仕上がっていく。そんな喜びをメンバーたちは感じているようだ。まさに「クラの輪」。クオリティを大切にしているからこそ、それぞれの音が絡み合ったアンサンブルは美しく、心地よいハーモニーを奏でるのだろう。

■バンド紹介

●バンド名:クラノワ・カルーク・ オーケストラ
●結成時期:1997年5月
●モットー:協調性を持ち、常に前向きな向上心を持とう
●練習頻度:月2~3回(基本的に第2、4、5日曜日の午後)
●平均年齢:41歳
●メンバー:代表・福田豊さん、登録人数48人
●活動内容:年に一度の定期演奏会、春の演奏会を主催。ほかに各種イベントへの参加など。
●クラノワ・カルーク・オーケストラ第21回定期演奏会
 日程:2018年10月14日(日)
 会場:幸市民館大ホール(神奈川県川崎市)
 入場料:無料

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:村治佳織さん「自分が出した音によって聴き手の表情が変わったとき、音楽の不思議な力を感じます」

8282views

ジャズとデュオの新たな関係性を考える

音楽ライターの眼

ジャズとデュオの新たな関係性を考えるvol.12

3251views

楽器探訪 Anothertake

目指したのは大編成のなかで際立つ音と響き「チャイム YCHシリーズ」

9760views

初心者におすすめのエレキギターとレッスンのコツ!

楽器のあれこれQ&A

初心者におすすめのエレキギターと知っておきたい練習のコツ

20990views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

11924views

オペラ劇場の音楽スタッフの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

稽古から本番まで指揮者や歌手をフォローし、オペラの音楽を作り上げる/オペラ劇場の音楽スタッフの仕事(前編)

30256views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

4167views

Kitaraあ・ら・かると

こどもと楽しむMusicナビ

子どもも大人も楽しめるコンサート&イベントが盛りだくさん。ピクニック気分で出かけよう!/Kitaraあ・ら・かると

5744views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

21577views

上海ブラスバンド日本支部

われら音遊人

われら音遊人:上海で生まれた縁が続く大家族のようなブラスバンド

1743views

パイドパイパー・ダイアリー

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

8236views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

28742views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:若き天才ドラマー川口千里がエレキギターに挑戦!

10694views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

12431views

J・シュトラウス2世の《美しく青きドナウ》は、オーストリアの第2国歌のような存在

音楽ライターの眼

J・シュトラウス2世の《美しく青きドナウ》は、オーストリアの第2国歌のような存在

20432views

ホールのクラシック公演を企画して地域の文化に貢献する/音楽学芸員の仕事

オトノ仕事人

アーティストとお客様とをマッチングさせ、コンサートという形で幸福な時間を演出する/音楽学芸員の仕事

11218views

われら音遊人

われら音遊人:路上イベントで演奏を楽しみ地域活性にも貢献

2888views

練習用のバイオリンとして進化する機能と、守り続けるデザイン

楽器探訪 Anothertake

進化する機能と、守り続けるデザイン

4861views

サラマンカホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

まるでヨーロッパの教会にいるような雰囲気に包まれるクラシック音楽専用ホール/サラマンカホール

20016views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は、いつ買うのが正解なのだろうか?

7868views

楽器のメンテナンス

楽器のあれこれQ&A

大切に長く使うために、屋外で楽器を使うときに気をつけることは?

49050views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

2647views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

24582views