Web音遊人(みゅーじん)

中村佳穂

今月の音遊人:中村佳穂さん「私にとって音楽は“取り繕わなくていい場所”」

“どこにも”いない歌声で“どこかへ”と連れて行ってくれる中村佳穂さん。多様なジャンル、多彩なアーティストとのコラボも積極的で、さまざまな世界へと誘ってくれる。そんな中村さんに、音楽に感じる想いをお聞きしました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

私は普段曲をたくさん聴くほうではなくて。シーズンごとに、いろいろな曲を移り気に聴く感じなんです。そんななかで、高校生のころに油絵を描きながらドビュッシーの『夢』をずっと聴いていたことを思い出しました。この曲を聴いていると違う場所にいるような気持ちになれたというか、学生なので旅行とかの経験もあまりないなか、行ったことのない美しい場所にいるような感覚になれたんです。当時描いていた油絵でもまだみたことのない景色を描いていたのでその世界に浸るような気持ちで『夢』を聴いていました。
私は2歳からヤマハ音楽教室に通っていて、高校生になるとレッスンでも『夢』を弾いていたんです。ただかなり異端児というか、集中力が続かないからいつまでたっても楽譜が読めなくて。そしたら担当の先生がのんびりした優しい方で、“佳穂ちゃんが弾きたいものを私が弾くから、それを聴いて憶えてください”と言ってくださって。レコーダーに録音した先生の演奏を聴き返しながら覚えて、弾けるようになりました。

Q2.中村さんにとって「音」や「音楽」とは?

いろいろな世界の人と話せる限定されていない「言語」だと思います。「日本語」「英語」のような感じ、まさに「音楽語」ですね。どんな国の人であっても楽曲を弾いた瞬間にどういうことを考えているか、何を大事にしているかが解りあえるというか。

私自身、普段から音楽は素の自分を表現できる“取り繕わなくていい場所”と感じていて。たとえば私は膝を抱えてピアノを弾くこともありますが、意識してやっているわけではないんです。“教わっていたピアノの先生が見たらなんて言うだろうな”とは思いますが、演奏中にやりたいことをやりたいようにしているってことは、私にとって音楽は、何かに引け目を感じずに自然のままでいられる場所だからなんです。

中村佳穂

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

等身大の自分からさらに突き進むというか、ちょっとずつ自分をはみ出させながら演奏する人でしょうか。
以前ピアニストの上原ひろみさんとご一緒したことがあるんですけど、ピアノの連弾をしていて私がちょっとしたフレーズを弾くと、上原さんがそのフレーズのいろんなパターンを3分間くらい演奏で返してくれたんです。まるで“最近こういうことがあってね”って話しかけるみたいに。それで私も“こういうことがあったんですけど”って拙いながらも返すことで、すごくいい会話が演奏で続けられたんです。そのときに、初めて自転車に乗れるようになったときの、ちょっと勢いよくペダルを踏み込む、あれと似た感覚があって。いままででいちばんピアノがうまくなった瞬間だったと思います。
音楽は時間芸術だから、“人に何か思われたらどうしよう”とか気にしているひまがないんですよね。だから意外と自分も、ライブでやろうと思ったことをやる瞬発力は速いんじゃないかと思います。後でライブの動画を見返すと“自分、すごい元気だなぁ”って感心しますから。

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

音楽を通して友人が増えたことに尽きます。私はライブをするときのバンドメンバーを自分でアサイン(選任)するようにしていて。普段から仲のいい人だけでなく、ネットで知って直感的にいいなと思った人にもお願いするんですが、音楽をやっていなかったら、こんなに積極的に人と接することはなかったですね。結構インドア派ですし、ずっと油絵を描いているような性格だったので、ほぼ誰とも会わないことも可能でした。
この1年くらい、だんだん音楽シーンや、自分が好きだと思うものが変わってきています。いまは次の一歩を踏み出す力を手助けしてくれるのは、人の話なんじゃないかなと思っています。なるべく人に質問をして、自分の活動にも生かせそうだったらすぐに取り入れる、それによって自分のバランスが変わっていくのが楽しみなんです。

中村佳穂〔なかむら・かほ〕
1992年生まれ、ミュージシャン。20歳から京都にて音楽活動をスタートし、音楽そのもののような存在がウワサを呼ぶ。ソロ、デュオ、バンド、さまざまな形態で、その音楽性を拡張させ続けている。2021年7月に公開された細田守原作、脚本、監督のアニメーション映画『竜とそばかすの姫』の主人公すず/Belleの声、うたを担当し、同年末、millennium parade×Belleとして『第72回NHK紅白歌合戦』に出演。最新アルバムは2022年3月リリースの『NIA』。2024年個人事務所Yapi合同会社を設立した。
オフィシャルサイト

YouTube公式チャンネル オフィシャルX(旧Twitter)

■中村佳穂 PIANO SOLO TOUR 2025

2月27日(木)東京 すみだトリフォニーホール(SOLD OUT)
3月1日(土)大阪 サンケイホールブリーゼ(SOLD OUT)
3月7日(金)福岡 福岡国際会議場メインホール
3月21日(金)北海道 札幌市教育文化会館
4月17日(木)愛知 Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
4月25日(金)東京 すみだトリフォニーホール
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