Web音遊人(みゅーじん)

ヨーロッパを活動の拠点にしているヴァイオリニスト佐藤俊介、オランダ・バッハ協会の次期音楽監督に決定

ヨーロッパを活動の拠点にしているヴァイオリニスト佐藤俊介、オランダ・バッハ協会の次期音楽監督に決定

2010年、ヨハン・セバスティアン・バッハ国際コンクールで第2位入賞に輝いたヴァイオリニストの佐藤俊介は、現在ヨーロッパを拠点にモダン奏法と古楽器(オリジナル)奏法の両方で活躍、レパートリーもバロックから現代作品まで幅広く演奏している。

彼は2013年からオランダ・バッハ協会のコンサートマスターを務めているが、同協会の音楽監督に就任することが決まった。現在の音楽監督であるヨス・ファン・フェルツホーフェンの後任として、2018年6月1日に就任することになる。

オランダ・バッハ協会は、国内外の17、18世紀の音楽の演奏を専門とする世界最高峰レベルの演奏者と歌手で構成され、ヨーロッパの古楽演奏を牽引する存在。1921年に創設され、2021/22年シーズンに100周年を迎える歴史と伝統を備えた協会で、来年の就任時に33歳を迎える若き日本人の音楽監督は、奏者たちのなかでともに演奏しながら、音楽をリードしていく方法をとる。

「ぼくはこの4年間、バッハ協会でコンサートマスターとして演奏してきましたから、メンバーとのつながりや協会の音楽作りなどは理解しているつもりです。でも、2月ころから音楽監督の話が持ち上がり、最初は冗談でしょうという感じでした。指揮台に立って指揮をすることもなく、この協会のもうひとつの母体である合唱に関しても専門ではありませんから。ただし、この協会は独特の運営方法や内容、レパートリーなどを維持して長年積み上げてきたものがあり、それらに関してリーダーシップがとれる人はなかなかいなかったようです。そこでぼくのところに話がきて、徐々にまとまり、正式なオファーがきました」

当初はとまどいがあったり、責任の重さを感じたり、さまざまな葛藤があったが、やがてひとつずつ解決策を見出し、正式に音楽監督を引き受ける決意をした。

「合唱に関しては、まわりに専門家や知識のある人たちが大勢いますから、その人たちに助言を仰ぎ、じっくり勉強していこうと思っています。作品に関しても、ぼくよりも長くこの協会で演奏している人がたくさんいますから、意見を聞く。そして《マタイ受難曲》などの大きな宗教作品を指揮するのは、得意な指揮者を見つけて依頼し、それらすべてのまとめ役を担う立場になるという考えで進めることにしました」

オランダ・バッハ協会は、現在「All of Bach」と題するJ.S.バッハの全作品を約10年かけて録音するというプロジェクトが進行中で、佐藤俊介もこれがもっとも楽しみだと熱く語る。さらに、新たな作曲家や作品との出合いが楽しくてたまらず、日々勉強だという。

オランダ・バッハ協会は各地の教会などで演奏を行っているが、本拠地はユトレヒト。佐藤俊介はデンハーグに住みながらユトレヒトに通い、20人強のメンバーたちとともに演奏している。

「ぼくは作品によって楽器を使い分けていますが、パリに移ったばかりのころに当時ベルリン・フィルのコンサートマスターをしていた安永徹さんから紹介された製作家、シュテファン・フォン・ベアのバロックとモダン楽器を使用しています。もう1台、19世紀の作品を演奏するときに使う1846年製のパリで作られた楽器も愛用しています」

まだ音楽監督就任まで時間があるが、すでに佐藤俊介は来シーズンのプログラムを決めたり、協会の新たな可能性を広げるためにレパートリーの開拓を試みたり、さまざまなチャレンジを行っている。

そしてもうすぐ日本に帰国し、コンサートも行う。2017年11月12日(日)川口リリアホール、11月15日(水)野木エニスホール、16日(木)宗次ホール、18日(土)いずみホール。新たな船出を控え、大いなるチャレンジに意欲を燃やしている佐藤俊介の「いま」を聴く絶好の機会となりそうだ。

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:亀田誠治さん「音楽は『人と人をつなぐ魔法』。いまこそ、その力が発揮されるべきだと思います」

8777views

AKIRA’S Special Live Vol.4

音楽ライターの眼

井上鑑、岡沢章、神保彰。3人のAKIRAとの躍動感あふれる70分/AKIRA’S Special Live Vol.4

7761views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

すぐに音を出せて、自由に演奏できる。管楽器の楽しみを多くの人に

14731views

金管楽器のパーツごとのお手入れ方法 - Web音遊人

楽器のあれこれQ&A

金管楽器のパーツごとのお手入れ方法

16591views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

9804views

楽器博物館の学芸員の仕事 Web音遊人

オトノ仕事人

わかりやすい言葉で、知られざる楽器の魅力を伝えたい/楽器博物館の学芸員の仕事(後編)

9150views

紀尾井ホール

ホール自慢を聞きましょう

専属の室内オーケストラをもつ日本屈指の音楽ホール/紀尾井ホール

15798views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

3544views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

33238views

われら音遊人

われら音遊人:アンサンブルを大切に奏でる皆が歌って踊れるハードロック!

5399views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

6137views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10809views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

13367views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

24568views

音楽ライターの眼

連載22[ジャズ事始め]上海というアジアの拠点を失った“日本のジャズ”が次に求めたスタイル

2405views

オトノ仕事人

あらゆるトラブルに対応できる、優れたリペア技術者を世に送り出す/管楽器のリペア技術者を育てる仕事

7671views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:音楽は和!ひとつになったときの達成感がいい

6232views

マーチング

楽器探訪 Anothertake

見て、聴いて、楽しいマーチング

16559views

紀尾井ホール

ホール自慢を聞きましょう

専属の室内オーケストラをもつ日本屈指の音楽ホール/紀尾井ホール

15798views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

だから続けられる!サクソフォンレッスン10年目

5198views

楽器のあれこれQ&A

エレキギター初心者を脱したい!ステップアップ練習法と2本目購入時のアドバイス

6587views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

11406views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10809views