今月の音遊人
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今月の音遊人:亀田誠治さん「音楽は『人と人をつなぐ魔法』。いまこそ、その力が発揮されるべきだと思います」
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2021.5.6
音楽プロデューサー、ベーシストとして数えきれないほどのヒット曲にその名を連ねる亀田誠治さん。その原点にある曲や、音楽の魅力についてお聞きしました。
ビートルズの『ハロー・グッドバイ』です。アルバム『マジカル・ミステリー・ツアー』に入っていますが、僕は小学校2年生のときに買ってきたベスト盤(青盤)で初めて聴きました。そのときのことはいまでも鮮明に覚えています。僕は部屋に置いてあった母親のクラシックギターを手に取って、なぜかベースラインを真似し始めたんです。まだベースという楽器も、ポール・マッカートニーが弾いているのかも認識していないのに。だから、ベーシスト・亀田誠治を生むきっかけとなった曲だといえますね。「ハロー」と「グッバイ」とか「イエス」と「ノー」とか、小学生でもわかる簡単な言葉に深いメッセージを込める表現方法は、僕が考えるロックやポップスの基本形となりましたし、イントロがなかったり、最後に民族音楽っぽい展開になったりするところなどは、音楽は自由なんだということを教えてくれました。バンドサウンドの中にビオラが出てくるところも大好きです。いまでもこの曲を聴くと安心するし、ふとした瞬間に聴きたくなる。自分がいま立っている場所を確かめたり、原点を見つめ直すために頭の中で流したり、この曲の影響は計り知れません。僕にとってのバイブルであり、人生のテーマソングともいえる曲ですね。
「人と人をつなぐ魔法」だと思います。ライブで同じ空気を共有するときはもちろん、ラジオで聴いていても、違う場所にいるみんなの気持ちをひとつにしてくれますよね。人の感情を高ぶらせてくれたり、落ち着かせてくれたり、記憶を蘇らせてくれたり。本当に魔法だなぁ、と思います。コロナ禍において、「いまこそ音楽が必要だ」という想いを日に日に強くしています。時代の空気に不寛容さや不確かさを感じたり、誰もが“もやっ”とする気持ちを抱いていたり、誰かを疑っていたり……。自分に確信が持てないこともあると思う。こんな時代だからこそ、音楽による調和が求められているし、音楽が持つ包容力や人と人をつなぐ力が発揮されるのではないでしょうか。僕は東京の日比谷公園をまるごと会場にした「日比谷音楽祭」というイベントを2019年から毎年開催しているのですが、まさにそんな音楽の力を実感しています。
それは……僕自身です(笑)。本当に僕は、文字通り音で遊んでいます。よく人から「音楽を仕事にして嫌になったことはありませんか?」など聞かれますけど、そんなことは全くありません。スタジオに入ってみんなで「せーの」と音を出す瞬間は最高だし、最近はデータのやりとりで音楽を作ることも多くなりましたが、そんなときも「どんな音源が送られてくるだろう?」とワクワクしますし。カッコいいフレーズや気持ちいい音に囲まれていると、楽しくてしょうがないんですよ。東京事変のメンバーからは「亀田さんが最年長なのに、いちばん子どもっぽい」とよく言われるのですが、音楽が鳴っているとき、音を出しているとき、ミュージシャンとして人と接しているとき、僕はひたすら無邪気になれるんです。あと「類は友を呼ぶ」ではないけれど、僕の周りにいるミュージシャンもみんな「音遊人」だと思います。コロナ禍では「おうち時間」が増えて、ひとりで静かに音楽を作る時間をたくさん持つことができました。まるで学生時代に戻ったかのように宅録気分でいろいろ音を重ねたりしていると、新しい発見がたくさんありますね。僕はプロミュージシャンになってから30年以上経ちますけど、本当に、音楽に飽きたことがない。音楽は僕の天職なんです。もし生まれ変わったとしても絶対ミュージシャンになりますよ!
亀田誠治〔かめだ・せいじ〕
1964年生まれ。音楽プロデューサー、ベーシスト。これまでに椎名林檎、平井堅、スピッツ、GLAY、いきものがかり、JUJU、Little Glee Monster、山本彩、Creepy Nuts、石川さゆり、MISIA、Novelbright、アイナ・ジ・エンドなど数多くのアーティストのサウンドプロデュース、アレンジを手がける。
2004年に椎名林檎らと東京事変を結成。2005年、Bank Bandにベーシストとして参加。2007年第49回、2015年第57回日本レコード大賞、編曲賞を受賞。2013年にはシグネチャーモデルとなるベース「BB2024カメダ・エディション」をヤマハと共同開発。2021年には映画「糸」にて日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞。
2019年から開催されている親子孫三世代が様々な音楽体験ができるフリーイベント「日比谷音楽祭」の実行委員長を務めている。2021年は5月29日(土)、30日(日)にオンラインで開催する。
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