Web音遊人(みゅーじん)

お客様の生の声から学び、開発や改良に活かすために。「お客様コミュニケーションセンター」の取り組み

楽器は1世紀以上、オーディオ機器は約半世紀の歴史をもつヤマハ。その歴史は、ユーザーとともに歩んできた道でもあります。
本質を押さえながらも、革新的でわくわくするものづくりを目指して……。そこには、使い手の声がどのように反映されているのでしょうか。ユーザーからのさまざまなお問い合わせに最前線で応対するお客様コミュニケーションセンターのセンター長 平井大生さんに、その取り組みについて伺いました。

「お客様の望む製品の開発や改良には、研究・開発部門だけでなく、カスタマーサポート部門も関わっています。なかでも、お客様からのお問い合わせに直接お答えするお客様コミュニケーションセンターでは、ユーザーの声やそれらを分析した情報を研究・開発部門にフィードバックして、より良い楽器や製品づくりに役立てています」
楽器や製品は研究・開発に始まり、生産され、営業やマーケティングを通じて販売店からユーザーのもとへ。そして、ユーザーの皆さまに常に寄り添う存在がお客様コミュニケーションセンターです。一方、独自の研究や技術でヤマハを牽引する研究・開発部門は、ふだん、ユーザーの皆さまと直接触れ合う機会はほとんどありません。
「お客様の生の声を忘れてはいけないということから、お客様コミュニケーションセンターでは毎年、研究・開発部門の新人などのお問い合わせ応対体験研修を実施しています。これまでの約6年間で、のべ100人の新人たちが、この研修を体験しています」
音が出ない、操作方法がわからない、モデルによる違いは?セットアップ方法は?故障?質問や相談の内容は多岐にわたります。
「相手の様子を目で見ることができないので、電話応対には知識と経験に裏打ちされた想像力が欠かせません。楽器や製品の知識はもちろん、自分とは違う立場の視点を持つことも重要です。それらを培い、そこから問題点や改善点を見つけ出せるようになることが目的です」
研修は、ピアノ、管弦打楽器、エレクトーン、電子ピアノ&キーボード、シンセサイザー&デジタル楽器、ギター&ドラム、オーディオ&ビジュアルの7つのチームにそれぞれ配属され、ベテランスタッフの指導のもとで行われます。
「期間は約2週間。同センターのスタッフが受けている新人研修をぎゅっと濃縮し、ダイジェストにした内容ですね」
1週目は、マニュアルを読み込むなどして、サポート対象製品を徹底的に学ぶことからスタート。リアルタイムの電話応対や過去1年間の録音音声が聞けるモニター機器も活用されています。さらにロールプレイングも経験し、2週目からはいよいよ電話応対の体験です。

リアルタイムの電話応対や過去1年間の録音音声が聞けるモニター機器が置かれたスペース。研修以外でも、社員が勉強のためにここを利用することもあります。

この日、電子ピアノ&キーボードチームで研修を行っていたのは電子楽器開発部の新人です。指導にあたるスタッフは隣でスタンバイし、ヘッドセットで応対の内容を聞きながら、お問い合わせの楽器に関する資料を探し出し、新人はそれを確認しながら、無事にお答えすることができました。
「操作説明がとくにそうでしたが、目の前にお客様がいらっしゃるわけではないので、相手の方と自分が見ている視点が同じなのかを想像しながら話すのは大変なことだと感じました。どういったことをお客様が求めているのか、何がわからなくなるのかといったことなど、設計側としては役に立つ経験ばかりです」

電話応対を終えたあと、取扱説明書を読み返し、お客様がなぜ「わからなかった」のかを改めて確認。この積み重ねがよりよいご案内やサービスの改善につながります。

エレクトーンチームで研修を行っていた電子楽器開発部の別の新人は、「音がよく鳴らない」という相談を受けました。周りのスタッフたちのフォローにより、原因が判明。
「お客様コミュニケーションセンターのスタッフは、もともと楽器に親しまれている人も多く、プレイヤーとしての視点もありますし、長年お客様に寄り添ってきた経験もあります。僕には真似できないことだらけです。どういった使いづらさやわかりにくさがあるのかということを振り返り、開発に活かすことができると思っています」
ふだんは、直接お客様と接することがない研究・開発系のスタッフたち。この体験研修は、彼らが多くの気付きを得る有意義な機会となっているようです。

エレクトーンのお問い合わせには、お客様と同じ楽譜を見ながらお答えすることも。スタッフの席の近くに、過去に出版された楽譜集がずらりと並んでいます。

「日常の業務を行いながら研修生を受け入れることは、実はとても大変です。でも、お客様の感覚をわかっているスタッフが増えていくことは、何より大切なこと。そして、彼らがここでの経験を各部門に持ち帰ってくれることで、私たちが吸い上げたお客様の声がよりスムーズに伝わるようにもなります」と平井さん。
「お客様の身になって、お客様のために何ができるのか。常にそれを考えているヤマハでありたいと思っています」

部門の枠を取り払い、思いを同じにした“ワンチーム”が、ユーザーのニーズに応えた製品づくりを支えています。

■よくあるお問い合わせ(Q&A)

お客様からお寄せいただいた、よくある問い合わせを掲載しています

特集

﨑谷直人

今月の音遊人

今月の音遊人:﨑谷直人さん「突き詰めたその先にこそ“遊び”はあると思います」

5076views

音楽ライターの眼

大人げないロック・バンド、メルヴィンズが新作『ワーキング・ウィズ・ゴッド』を発表

4612views

P-515

楽器探訪 Anothertake

ポータブルタイプの電子ピアノ「Pシリーズ」に、リアルなタッチ感が得られる木製鍵盤を搭載したモデルが登場!

36692views

バイオリン

楽器のあれこれQ&A

アコースティックからサイレント、エレクトリックまで多彩なバイオリンを楽しもう!

865views

桑原あい

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若きジャズピアニスト桑原あいがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

17062views

誰でも自由に叩けて、皆と一緒に楽しめるのがドラムサークルの良さ/ドラムサークルファシリテーターの仕事(後編)

オトノ仕事人

リズムに乗せ人々を笑顔に導く/ドラムサークルファシリテーターの仕事(後編)

7916views

ザ・シンフォニーホール

ホール自慢を聞きましょう

歴史と伝統、風格を受け継ぐクラシック音楽専用ホール/ザ・シンフォニーホール

30353views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

8751views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

25162views

武豊吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人: 地域の人たちの喜ぶ顔を見るために苦しいときも前に進み続ける

2833views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

だから続けられる!サクソフォンレッスン10年目

5567views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28222views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

14834views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

歴史的価値の高い鍵盤楽器が並ぶ「民音音楽博物館」

27483views

音楽ライターの眼

連載13[多様性とジャズ]デビューの危機に救いの手を差し伸べたアトランティックとの“見えない絆”

2028views

ヤマハ株式会社 神島由幸さん

オトノ仕事人

楽器になる樹木と最前線で向き合い、職人の元へ届ける/楽器用木材調達の仕事

517views

われら音遊人

われら音遊人:みんなの灯をひとつに集め、大きく照らす

6746views

82Z

楽器探訪 Anothertake

アンバー仕上げが生む新感覚のヴィンテージ/カスタムサクソフォン「82Z」

8698views

ホール自慢を聞きましょう

ウィーンの品格と本格派の音楽を堪能できる大阪の極上空間/いずみホール

8683views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

6558views

ヴェノーヴァ

楽器のあれこれQ&A

気軽に始められる新しい管楽器 Venova™(ヴェノーヴァ)の魅力

4497views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

10342views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

35018views