今月の音遊人
今月の音遊人:生田絵梨花さん「ステージに立つと“音楽って楽しい!”という思いが、いっそう強くなります」
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躍動感と深い情感あふれた音を生み出すポップス・バイオリニスト /式町水晶インタビュー
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2020.1.27
tagged: バイオリン, インタビュー, 式町水晶, エレクトリック・バイオリン
弦楽器の多彩な感情を生かしたオリジナル曲をはじめ、洋楽・邦楽の名曲、ジャズやワールド・ミュージックなど、実に幅広いレパートリーを開拓して、多くの聴き手から注目されているバイオリニストの式町水晶。ライブでは、ステージから客席までを飛び回るアクティブなパフォーマンスを展開し、深みのある弦のサウンドでメロディを歌いあげる彼の音楽は、強いインパクトを与えてくれるものだ。
「4歳のときにバイオリンを始め、多くの人と同じように『きらきら星』『ガヴォット』などを弾きながら楽器に親しみました。8歳のときに恩師である中澤きみ子先生と出会い、その頃にはプロへの道を夢見ていたと記憶しています。バイオリンという楽器は自分の身体にフィットしていましたし、厳しいレッスンだったので辞めたいと思ったこともありましたが、やはり『バイオリンが好きだ』という気持ちが強かったですね」
その「好きだ」という気持ちをさらに増幅させたのが、のちに師事することになるバイオリニスト、中西俊博との出会いだ。1980年代から長きにわたり、ジャンル超越型の弦楽器奏者として人気を得てきた中西は、自身のソロ活動を中心に国内外の超一流シンガーたちと共演。エレクトリックも含むバイオリンの可能性を広げ、幅広い音楽シーンで地位を確立した。式町は10歳のときにコンサートで中西の生演奏を聴き、それまでのバイオリンに対する意識がくつがえったという。
「自由度が高く、音の出し方ひとつでこれだけ音楽にバリエーションが生まれるのかと驚きましたし、目標とするべきものが目の前に現れたような気持ちでした。何ともいえない甘くて心地よい音色や心をくすぐるようなポルタメント奏法などが新鮮で、聴いた瞬間から目がハートになっていたと思います」
ポップス・バイオリンに目覚めた式町は中西俊博のレッスンを受けるようになり、その影響は演奏、練習の方法、レパートリー、エフェクターの活用、音色の研究など、あらゆるところに及んだという。
「中西先生に出会えていなかったらエレクトリック・バイオリンを弾いていなかったでしょうし、バイオリン自体も途中で挫折していたかもしれません。アナログ人間のはずなのにエフェクターの奥深さに目覚め、ロックギターのような音色を作るディストーションや空間系のディレイ、音にふくらみをもたせるピッチシフトなどのエフェクトが自分の個性の一部になっていますので、先生との出会いが本当に人生の分岐点だったと実感しています。2枚目のアルバム『希望への道』に収録されている〈メイオウ〉という曲はピッチシフトありきで作曲しましたし、エフェクターも自分の音楽の一部になっています」
自らの音楽を追求する中で、理想とする音はどういったものだろうか。
「バイオリンの魅力は高音部の輝きだと思いますが、僕の場合はミドルっぽい音域といいますか、温かくて柔らかな音を出したいと思っています。お客様からも『アルトのよう、ビオラっぽい』などと言っていただくことがあるのですが、とてもうれしいですね。オリジナル曲でも、特にバラード系の曲では高音域の音からではなく中音域、D線やA線から入るものが多いですし、過去に命の宣告を受けたせいもあるのか、のんびり生きたいという気持ちが曲調やテンポに表れているのかもしれません」
数多くのライブや音楽祭で演奏し、メジャー・レーベルからは『孤独の戦士』『希望への道』という2枚のアルバムをリリース。さらには東日本大震災の被災地支援活動にも取り組んできた式町だが、幼少時に脳性麻痺(小脳低形成)と診断され、視覚などの障がいも抱えながら、外出中などは車椅子生活を余儀なくされた。そもそもバイオリンを手にしたきっかけはリハビリの一環であり、上達するまでにさまざまな困難を経験してきたが、そうした体験があったからこそ有意義な活動につながっているという。
「自分から積極的に障がいについてアピールすることはなくなりましたが、同じような境遇にある方のため、講演会などもお引き受けします。コンサートにもいろいろな方がいらっしゃいますから、目が不自由な方のためにはエフェクターを使っていろいろな音色を楽しんでいただきたいし、耳が不自由な方にはステージ上でのアクティブな演奏を見せることで楽しんでいただければうれしいです」
東日本大震災の流木から生まれた「TSUNAMIバイオリン」として知られる楽器の公式演奏者でもある式町は、コンサートやアルバムでも、音にさまざまな思いのこもるこの楽器を演奏。また、ときどき癒しを求めて足を踏み入れるプラネタリウムでコンサートをしてみたいという願望など、夢は多方向へと広がる。一台のバイオリンから生まれるエネルギーは、多くの聴き手を感動させ、心に希望の光をもたらしてくれるだろう。
『希望への道』
発売元:キングレコード
発売日:2019年10月23日
料金:2,727円(税抜)
詳細はこちら
グランシップ春の音楽祭2020 がんばるキミに届け
日時:2020年2月23日(日・祝)開演15:00(開場14:15)
会場:静岡県コンベンションアーツセンター「グランシップ」大ホール・海(静岡市駿河区東静岡2-3-1)
料金:一般2,500円/こども・学生1,000円(税込・全席指定)
詳細はこちら
文/ オヤマダアツシ
photo/ 坂本ようこ
tagged: バイオリン, インタビュー, 式町水晶, エレクトリック・バイオリン
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