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新たなディケイドへと向かうFUJI ROCK FESTIVAL ’17。テーマは“革新”と“伝統”
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2017.6.15
tagged: 音楽ライターの眼, フジ・ロック・フェスティバル, クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ
2017年7月28日(金)~30日(日)、FUJI ROCK FESTIVAL ’17(以下、フジロック)が開催される。
1997年に第1回が行われ、日本のロック・ファンにとって「行かないと夏が終わらない!」という恒例のイベントとなったフジロック。2016年に第20回を迎えて、新たなディケイドに向かっていくのがフジロック’17だ。
今回のラインナップはフェスの“革新”と“伝統”が一体となったものだ。
メイン・ステージであるグリーン・ステージのヘッドライナーを務めるのはGORILLAZ、エイフェックス・ツイン、そしてビョーク。“ロック・フェス”でありながら、純然たる“ロック・アーティスト”がトリに不在というのは初めてだ。エイフェックス・ツインの現時点での最新アルバム『サイロ』(2014年)はたしかに素晴らしい作品だったが、グリーン・ステージのトリを務めるというのはかなりの冒険だともいえる。このラインナップは、フジロックが今でもラディカルで挑戦的なフェスであることの宣言である。(ビョークがトリを務めるのはこれが4回目だが、彼女は存在自体がラディカルなので、フェスのテーマに即している)
THE XXやLORDE(ロード)などの新世代アーティストがかなり上の方で出演するのも、フェスの“革新”の部分を象徴する出来事だろう。ただ興味深いのは、グリーン・ステージのヘッドライナーがいずれも初期フジロックを彩ってきた面々だということだ。
オールド・ファンだったら第1回フジロックで伝説となった雨中のエイフェックス・ツインの“犬小屋ライヴ”を覚えているだろう。翌1998年、豊洲で開催されたフジロック’98のトリがビョークだった。そして現在の苗場に舞台を移したフジロック’99で土曜のヘッドライナーを務めたのが、GORILLAZの一員でもあるデイモン・オルバーンが在籍するブラーだった。
フジロックの“伝統”を再現するのが、2017年のフェスだともいえるのだ。
さらに29日(土)にCORNELIUS、小沢健二、石野卓球が集結するのは、渋谷系世代にとっては感涙ものだろう。
1960年代から活躍してきたブルース・ロック・ギタリストのエルヴィン・ビショップ、そして木暮shake武彦、三国義貴、ケネス・アンドリューらによるピンク・フロイド・トリビュート・バンドの原始神母など、シルバー層に訴求するアーティストも登場。フジロックとロック音楽の豊潤な歴史を辿るイベントとなるだろう。
フジロック’17の再注目バンドのひとつとして挙げておきたいのが、クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジだ。
2002年にジョシュ・ホーミ、デイヴ・グロール、マーク・ラネガン、ニック・オリヴェリというスーパーグループとして参戦したのは、フェス史上屈指のエキサイティングな瞬間だった。現在ではメンバー構成こそあれほど派手ではないものの、大傑作の最新アルバム『…ライク・クロックワーク』(2013年)を引っ提げての来日は必見だ。2011年に出演が発表されながらキャンセルとなったため、満を持しての再参戦には期待が高まる。
エクストリーム・ヒップホップ・グループのデス・グリップスやアイスランドの誇るアウスゲイル、英国シューゲイザーのベテランのスローダイヴなど、要注目のアーティストが大挙参戦。夏の聖地は、今年も賑やかだ。
日時:2017年7月28日(金)~30日(日)
場所:苗場スキー場(新潟県湯沢町)
山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に850以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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