今月の音遊人
今月の音遊人:反田恭平さん「半音進行が使われている曲にハマります」
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楽器の販売はもちろん、さまざまな相談に応じ、ユーザーの音楽生活をトータルにサポートするヤマハの特約楽器店。楽器の調子が悪い、故障かな?修理の相談をしたい。そんなとき頼りになるのも、各地にある特約楽器店です。
修理を依頼すると、特約楽器店に所属する技術者が対応します。そして、そんな修理のプロたちが“最後の拠り所”と頼りにしているのが、ヤマハのカスタマーサポート部内にある「技術サポートセンター」。いわば、全国の特約楽器店の技術者たちの要となる存在です。
ユーザーと直接接することはない「技術サポートセンター」ですが、どのような業務を行っているのでしょうか。主事であり技術教育チームに属する森下諒一さんに伺いました。
「技術サポートセンター」は、パーツのウェブ注文などITシステムを構築する「ITシステムチーム」、在庫だけでも数十万アイテムにおよぶアフターサービス用パーツの管理や受注に対応する「パーツチーム」、特約店技術者の教育を行う「技術教育チーム」が3つの柱です。
なかでも「技術教育チーム」は技術者育成の研修を行ったり、技術資料を提供したりするなど、技術者たちと直結する立場にあります。特約店技術者からの修理技術相談に電話やメールで対応するコールセンター(電話技術相談)も開設。お客様と直接接することはないものの、間接的な立場から楽器のアフターサービスに大きく貢献しているのです。
同センターが扱っているのは、エレクトーン、電子ピアノ、ハイブリッドピアノを主軸とした電子鍵盤楽器。これらの楽器の修理を担当する技術者は全国に約350人います。
「技術教育チームが行っている研修会は、新規の技術者を養成する研修と、認定更新のための研修の2種類があります」
新規の技術者を養成する研修は、静岡県浜松市で4泊5日の日程で開催。技術者の主な修理業務は、お客様の楽器の修理と音楽教室の備品のメンテナンスであるため、これらがしっかりできるようなカリキュラムを組んでいます。座学だけでなく実機を分解するなどして、基本構成と電気回路の基礎を修めます。
一方の認定更新のための研修会は札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、高松、福岡の全国8か所で、年2回実施。新商品に関する技術情報や事例が多い修理などについて学びます。こちらも実機を用いた分解・組み立てなど実習にも注力するなど、実践的な内容になっています。
「単に修理の技術を身に付けるだけでなく、構造がわかっているからこそ知り得た内容をお客様にお話しすることもできるようになります。商品の価値がより伝わりやすくなるのです」
こうして定期的に知識とスキル、顧客対応力に磨きをかけることで、技術者たちはよりよいサービスをユーザーに提供できるわけです。
それでも困ったときに技術者をフォローするのが、技術教育チームのコールセンター(電話技術相談)です。問い合わせは月に400件ほど。状況を聞き、基本的には各商品の回路図や分解手順などが記された膨大な資料をもとに故障診断を行って指示を出します。
「典型的な修理は、資料としてまとめて専用のWebサイトで公開しており、現場の技術者がそれらの資料を見て自己解決できるようになっています。それで対処できないものがコールセンターに集まるわけですから、パターンもいろいろです」
古いモデルに関する問い合わせも多く、1970年代に製造されたエレクトーンの修理相談を受けたことも。また、お客様の自宅や音楽教室など、現場にいる技術者からSOSの電話がかかってくるケースも少なくありません。
「故障なのか取り扱いの問題なのか。また故障なら、たとえば電気的なことであれば回路のどこに問題があるのか。質問を重ねることで原因を絞り込み、指示しながら修理作業を進めてもらいます」
依頼を受けて技術者が修理に出向いても、その場で故障の状況が再現されないこともあるそう。
「常に不具合が発生している場合は、基本的に何かの部品が壊れています。たまにしか不具合が発生しない場合は、接触不良や温度上昇など、特定の条件を満たさないと症状を確認できないことが多いです。そのような場合は、原因を探るために、揺らしたりドライヤーを当てるなど、不具合が発生しやすい状況になる方法を伝えます」
これらに対応するのは、現場を知り、多くの知識と経験を積み重ねてきたスタッフです。森下さんも、十数年にわたって現場での修理を経験してきました。
「電話で問い合わせを受け、数分で故障診断を完了させてそれを伝えるというスキルは、現場で実際に修理をやってきた者でないと得られないと思います。われわれは、お店の技術者の方にとっては最後の拠り所なので、絶対に解決しないといけない。技術者の方よりも常に知識が上でなければいけないというプレッシャーもあり(笑)、個々がアンテナを高く張り、日々の業務以外でも勉強しています」
技術者に技術と情報を提供しながら、受けた相談によって自らの「引き出し」を増やしている、技術教育チームのスタッフたち。常に自己研鑽を積んでブラッシュアップを図ることで、現場の技術者たちを支えています。