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超絶技巧と灼熱のサウンド放つ、ピアソラのスペシャリスト集団「El Cielo 2020」
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2020.10.20
tagged: インタビュー, El Cielo 2020, エルシエロ
「私は、2020年に私の作品が人々に聴かれているという幻想を抱いている。時々それを確信するのは、私のつくる音楽が他とは違うものだからだ」
タンゴの革命児、アストロ・ピアソラが1990年に病気で倒れる少し前のインタビューで語った言葉だ。
アルゼンチン・タンゴにクラシックやジャズ、ロックなどさまざまな音楽のエッセンスを取り込み、新たなサウンドを生み出したピアソラ。“ピアソラ”というひとつのジャンルをつくり上げたと称される。
インタビューでの言葉通り、自身亡き後も世界中の人々を熱狂させ、さまざまなジャンルのアーティストたちがその作品を演奏してきた。
そして、まさに2020年となった今年、まったく新しいアプローチでその楽曲を演奏するクラシックバンド「El Cielo 2020」のファーストアルバム『ASTOR PIAZZOLLA』がリリースされ、話題を呼んでいる。
「El Cielo 2020」は、ピアソラ作品を演奏するスペシャリスト集団として2015年に結成されたバイオリン、チェロ、コントラバス、ピアノによる四重奏団だ。
美しく、激しい音楽を放ちたい。そんな思いのもとに集まったメンバーは、超絶技巧と官能的な“歌”で魅せるバイオリニスト桜井大士、新鋭チェリスト橋本専史、ジャズ界注目の逸材であるジャズベーシスト金森基、限りなく透明な音を生むピアニスト高木梢の4人。
熱さと生々しさ、そしてある種のグロテスクさをもはらんだ美しさ──ピアソラの“魂”を継承しつつも、その作品を分解し、再構築。彼らの語法によって生まれた新たな音楽スタイルを展開する。
「El Cielo 2020」のスタイルがいかに斬新か。それは、本来ならピアソラの要であるはずのバンドネオンを含まない編成に象徴されるだろう。
「ピアソラの楽曲を掘り下げていくと、実はバンドネオンでなくてもあのエネルギーや魅力は成立するんです。それを体現していきたいという思いから、あえてバンドネオンを入れないことをコンセプトのひとつとしています」(桜井)
たった4つのアコースティック楽器でありながら、そのサウンドは極めて高い熱量をたたえ、激しくそして重厚。本質的ながら聴いたこともないピアソラに、魂をもっていかれそうな感覚に陥る。これは悪魔か?はたまた天使か。
「人間のなかには、悪魔と天使の両方の部分がありますよね。そういう人間臭い音楽だということです」(金森)
このデビューアルバムを“本格的な始まり”と位置付け、リリースされた2020年6月からは毎月ライブも開催している。
「CDは、我々にとってのスタンダード。ライブでそのスタンダードをそのままお届けすることは、まずないだろうと思っています。いかにスタンダードを超えるかは我々の挑戦でもあり、それをお客さまに感じていただけるのが最大の喜びでもあります」(桜井)
「先日ライブに来てくださったお客さまから『すばらしかった!ところで、今日弾いたのは誰の曲?』と質問されたんです。ピアソラやEl Cieloを聴きたいと思って足を運んでくれた方でなくても、来てよかったと感じていただけるライブになっていると思いますし、それを一番大事にしたいです」(高木)
2021年はピアソラ生誕100周年、そして2022年には没後30周年を控え、ますます注目を集めそうだ。
「周年ということで、東京のみならず地方都市でも盛り上げていければと動いているところです」(橋本)
ピアソラがタンゴを“壊し”、独自のジャンルを創り上げたように。El Cieloという新たなジャンルの確立を目指し活動を続ける彼らに、これからも期待大だ。
橋本と桜井には最近、ヤマハのサイレントチェロ、サイレントバイオリンを試す機会があったそうだ。
「クラシック奏者は消音楽器に抵抗がある人が多いんです。見た目はアコースティックとは全然違うし、弾き心地もかなり異なるのかと思っていたのですが、意外と近しい感じを受けました。El Cieloという新しいジャンルを築いていくことを考えたとき、これを使ってできることもあるのかなと思いましたね」(橋本)
「アコースティック楽器とはまったく異なるジャンルとして、また別の魅力もあります。端的にいえば、かっこいい。かっこよさは、El Cieloとして追求していきたいことのひとつです」(桜井)
また、何度もサイレントベースを弾いたことがあるという金森は、こんな感想を語ってくれた。
「ほかの同様の楽器とは比較にならないくらいすばらしいです。野外フェスでも活躍すると思いますね」
El Cieloのライブにヤマハのサイレントシリーズが登場したら……そんな想像もまた楽しい。
2020年
12月17日(木)Live DOXY(名古屋)
12月18日(金) 100BANホール(神戸)
12月23日(水)南青山MANDALA(東京)
詳細はこちら
文/ 福田素子
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