今月の音遊人
今月の音遊人:平原綾香さん「未来のことを考えず、純粋に音楽を奏でる人こそ、真の音楽家だと思います」
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今月の音遊人:SUGIZOさん「音楽は人生そのもの。僕は音楽のために存在している」
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2025.12.1
LUNA SEA、X JAPANという日本を代表するロックバンドのギタリスト、バイオリニストであり、ソロアーティストとしても映画や舞台のサウンドトラックを手がける作曲家としても縦横無尽に活躍するSUGIZOさん。音楽を信じ、音楽に生かされ、音楽を愛してやまない思いをうかがいました。
デヴィッド・シルヴィアンの『シルバー・ムーン』が、僕の人生で最も大切で、世界で一番美しいと思っている曲です。シルヴィアンは、僕が中学の時に大好きになった英国のバンド、ジャパンのボーカリストです。ジャパン時代は、シンセ・ポップやニューロマンティック的な音楽をやっていましたが、ソロに転向すると、よりアコースティックなものや音響派といわれるもの、そしてアンビエント的な音楽の巨匠になっていくんです。『シルバー・ムーン』は、『ゴーン・トゥ・アース』というソロアルバムのリードトラックです。
『ゴーン・トゥ・アース』は1986年発売の2枚組で、1枚目はシルヴィアンの歌が中心。そこで素晴らしいのが、キング・クリムゾンのロバート・フリップが全面協力し、大半の曲で唯一無二のギターを弾いていることです。この2人のケミストリーが最高のアルバムで、同時に全ての楽曲がエレクトリックにしてもアコースティックにしても、メロディーも音像もこの上なく美しくて、全ての楽曲に深遠な景色が見える。僕はビジュアルが見えるような音楽や、風景や映像を感じるようなサウンドスケープが大好きなんです。2枚目は全曲インストゥルメンタルで、僕のアンビエント面の最重要ルーツです。高校2年の時に出会って、間違いなく人生で最も聴いているアルバムです。いまだに頻繁に聴いています。
人生そのものですね。それがない人生は、たぶん僕の中には存在しない。僕は3歳からクラシックを身に付けさせられ、当時は地獄だと思っていましたが、その経験が今となっては重要です。そこで基礎ができましたから。楽しさとか、充実感も教えてほしかったけれど、それは自分で勝ち取るしかなかった。
そういう意味で、クラシック音楽の教育に対しては、やはりもっと視野を広げなければいけないと思う。子どもの頃からそれだけを特化して勉強してくると、他のセンスを養うことができず、生き方に偏りが出てしまう恐れもある。音楽にしても、カルチャーにしても、服装にしても、他のセンスを磨くことを知らずに大人になってしまうのではないか。
僕がラッキーだったのは、自己が形成される前にいろんなことを吸収できたこと。クラシックをしっかり勉強しつつも途中でドロップアウトした故に他のセンスを学べた。そうした意味で、最高峰ともいえる存在が、僕が敬愛する坂本龍一さんだと思います。坂本さんはダサさが1ミリもなかった。

「音で遊ぶ人」。いい言葉ですよね。パッとイメージしたのが、スナフキンです。僕はムーミンが好きでね(笑)。スナフキンに憧れてたんです、小さい頃。彼はギターを弾きますよね。で、旅人でね。ギターを弾く旅人に憧れたんだと思います。人生は遊んでるけど、遊びの中に実は哲学がある。
僕の生きがいのひとつが旅です。音楽もある意味、最大のインナートリップといえます。インナートリップにせよ、実際の旅にせよ、自分が知らなかったことを知りたい、見たい、聞きたい、感じたい。そういう気持ちが強い。知らなかった風景を見たい、知らなかった扉を開けたい、全ての場所に立ってみたいと思う。この30年間、旅を続けている人生ですね。
音楽、楽器があるから、今の自分が形成された。そして50年以上、生きながらえてきた。音楽をやってきて、食えているからこそ、今の自分の生活もある。大富豪ではないけど、ありがたいことに貧乏ではない。音楽って、稼ぐという意味ではすごく効率が悪い仕事。本当にお金が好きだったら、もっと効率よく稼げる方法が無数にある。そもそも稼ぎたくて音楽をやっているわけじゃないですし。
自分の存在する根本に音楽ありきなので、音楽に対しては感謝しかありません。いつも言っているんですけど、僕は音楽のために存在していると思っている。音楽は、僕より偉い。僕が音楽の僕(しもべ)なんだ。表現させてもらって、音楽を作らせてもらって、音楽を奏でさせてもらって、本当にありがとうございます。そう考えています。
音楽は、自分からあふれ出るというよりは降ってくるんです。自分の中から、無から生まれてるんじゃなくて、どこかに存在していて、それが自分を通って出てくるだけ。本当にそういう感覚なんです。2025年はすごい量の作曲をしました。現時点(10月上旬)で100曲超えですからね。夏の『氷艶 hyoen 2025 -鏡紋の夜叉-』というアイスショーで40曲以上書いて、2026年公開のアニメ作品のサウンドトラックを40曲以上書いて。
でも、まだ尽きない。降ってくるものを形にするだけなので、音楽に僕が生かされている。それは生涯変わらないと思います。僕は音楽を信じています。
SUGIZO〔スギゾー〕
日本を代表するロックバンド LUNA SEA、X JAPAN、THE LAST ROCKSTARSのメンバーとして世界規模で活動。同時にソロアーティストとして独自のエレクトロニックミュージックを追求、更に映画・舞台のサウンドトラックを数多く手がける。2020年、サイケデリック・ジャムバンド SHAGを12年振りに再始動。音楽と並行しながら平和活動、人権・難民支援活動、再生可能エネルギー・環境活動、被災地ボランティア活動を積極的に展開。アクティヴィストとして知られる。2025年12月にSUGIZO TOUR 2025「FINAL OF THE SNAKE」を開催。
オフィシャルサイト
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文/ Osamu Mameta
photo/ 田辺佳子
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tagged: SUGIZO, インタビュー, 今月の音遊人
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