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一日の始まりを明るく元気な音楽で彩る/朝の情報番組のエレクトーン奏者の仕事

一日の始まりを明るく元気な音楽で彩る/朝の情報番組のエレクトーン奏者の仕事

関西ではおなじみのテレビ番組『おはよう朝日です』で、長きにわたり名物となっているエレクトーンの生演奏。現在、その大役を務めているのが第13代奏者の多田憲伸けんしんさんだ。朝の情報番組でエレクトーンを演奏する仕事のやりがいや、演奏時の工夫などについてお話を伺った。

4小節のジングルで番組を彩る

1979年より朝日放送テレビで放映されている『おはよう朝日です』(平日午前5〜8時)。ニュースや生活に役立つ情報などを発信するMCやアナウンサー、レポーターに加えて、コーナーの切り替わりやコマーシャルのタイミングでエレクトーン奏者が登場し、生演奏を行うという演出が取り入れられている。

奏者は4小節ほどの短い曲(ジングル)を披露した後に、現在の時刻をお知らせし、「行ってらっしゃい!」と元気よく視聴者に呼びかける。関西にお住まいの方ならば、一度は見たことのある光景ではないだろうか。

多田さんは2025年1月に、長沼美衣奈さんと同時に第13代奏者に就任。長沼さんが月~水曜日を、多田さんが木・金曜日を担当している。

「2024年11月にオーディションに合格し、2か月後の1月に初出演という急ピッチのスケジュールでした。男性奏者としては初の起用だったので、視聴者に受け入れられるかどうか、また12代目の赤﨑夏実さんをはじめ、歴代奏者の方々が担ってこられた役割が自分に果たせるかどうか、最初はさまざまな不安がありましたが、少しずつ慣れていき、今では楽しく取り組んでいます」

新エレクトーン奏者としてのお披露目となった出演シーン。月~水曜日担当の長沼美衣奈さんと一緒に。

新エレクトーン奏者としてのお披露目となった出演シーン。月~水曜日担当の長沼美衣奈さんと一緒に。

さまざまな音色を出せるエレクトーンに魅せられて

人気番組のエレクトーン奏者として活躍する一方で、多田さんは2026年3月に卒業予定の現役大学生でもある。現在も朝8時に大阪での生放送を終え、そのまま大学のある滋賀県へ向かい授業を受ける日もあるそうだ。

彼がエレクトーンを始めたのは3歳のとき。ヤマハ音楽教室の講師である母親の影響だった。中学生のときにヤマハエレクトーンコンクールで全国1位となり、音楽にのめり込むように。「エレクトーン1台でさまざまな楽器の音色を出すことができ、それをひとりで操ることができる。それがうれしかった」と語るように、エレクトーンそのものに魅せられてきた。

演奏と同時に学んだ作曲のスキルは、番組のオーディション合格直後に、長沼さんと共同で行ったジングルのアレンジにも生かされた。

視聴者の方が朝に何度も聴くことになるため、明るく元気の出る音楽にしたいと考えました。メジャー調にして、音が上がっていく旋律にすることで、聴く人もテンションが上がるのではないかと思ったんです」

軽やかにジングルを弾いている多田憲伸さんの写真

軽やかにジングルを弾いた後の「おはよう朝日です。ただいま〇時□分。行ってらっしゃい!」が決めゼリフ。

朝の番組だからこその工夫

多くの視聴者にとって朝は慌ただしく、またスムーズに気持ちよく一日のスタートを切るための重要な時間でもある。3時間の生放送の中で10回以上の出番がある多田さんの演奏は、そんな大切な時間に花を添える役割を担う。

心がけているのは、とにかく明るく演奏すること。エレクトーンを弾いているときも鍵盤を見ることはなく、カメラをにこやかに見つめる。

「コンクールなどでは真剣な表情で弾くのが当たり前で、笑顔で弾いたことはなく、最初は慣れませんでしたね。出演当初の録画をチェックしてみると、こわばった表情ばかりで(笑)。でも、少しずつ音楽を感じながら笑顔で弾けるようになっていきました」

また、朝の時間帯だからこその工夫も。

「演奏や表現に変化をつけると、視聴者に『あれ?いつもと違う』という違和感を与えてしまうため、毎回同じ演奏を心がけています。音の切り方やつなげ方も変えません。長沼さんの演奏ともできるだけ同じになるよう、事前にふたりで細かく演奏方法を擦り合わせました」

加えて、視聴者は必ずしも映像を見ているとは限らず、耳だけで情報をキャッチしていることも多い。そのため、時刻を正確に伝えることも大切にしている。

「時刻を聞くことで『そろそろ朝ごはんを食べないと』『歯磨きをしないと』などと行動に移す方も多いはず。だから、時刻は視聴者にとって大切な情報なんです。実は、出演当初に時刻を1時間、間違えてしまったことがあって……。それ以降、より緊張感を持って伝えるようにしています」

多田憲伸さんインタビュー写真

エレクトーンの魅力をもっと伝えていきたい

『おはよう朝日です』のエレクトーン奏者に就任しておよそ1年。これまでは音楽に携わる人とばかり関わっていたが、番組の制作スタッフや幅広い層の視聴者、番組イベントの来場者など、さまざまな人との出会いが増えた。それによって、自身のエレクトーンへの向き合い方も変わったという。

「世の中には、そもそもエレクトーンがどんな楽器なのかを知らない方もたくさんいます。そうした方々に向けて、番組やイベントでの演奏をとおして『こんな音色が出せるんですよ』『こんな演奏もできるんですよ』というエレクトーンの魅力をもっと伝えていきたいと思っています」

そう語る多田さんの表情は、エレクトーン奏者としての自信と向上心があふれていた。

Q.音楽以外の趣味は?
スポーツ観戦が好きで、子どもの頃から阪神タイガースの大ファンです。大学生になってからは海外サッカーを見るのも好きになりました。イギリスのサッカーチームを応援しているので、日本時間の早朝4時前に起きて、オンラインで試合を観戦することもあります。

Q.よく聴く音楽は?
クラシックやJ-POPをよく聴いています。特に好きなアーティストはKing Gnuさん。自分がこれまで弾いてきたクラシックなどの音楽とは異なりますが、コード進行や楽器の使い方から、彼らのルーツにクラシックがあることがわかり、とても興味深く聴いています。メンバーの中では常田大希さんのファンで、髪型を真似したこともあります(笑)。

Q.緊張に打ち勝つコツは?
何があろうと自信を持つこと。高校時代から、学校の大事なテストや、エレクトーンのコンクールなどで極度に緊張したときは、とにかく「きっと大丈夫」「自分はできる」と何度も唱えるようにしています。この習慣を続けることで、番組やイベントの出演などの緊張も乗り越えることができたと思います。

■『おはよう朝日です』

放送日時:月~金曜 朝5:00〜8:00
放送局:朝日放送テレビ

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photo/ 村川荘兵衛

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