Web音遊人(みゅーじん)

美しい音を生み出すための身体の使い方、筋肉の鍛え方──科学的根拠に基づいた黒河メソッドの流儀

『ピアノを弾くからだ』『さぷりキッズ』シリーズなど、科学的根拠に基づいた画期的な教材が話題を呼び、全国各地でセミナーを展開している黒河好子さん
ヤマハのディスクラビア(自動演奏機能付きピアノ)を活用し、国内外のコンクールで優勝、入賞を果たす優れたピアニストを生み出している「黒河メソッド」の秘密に迫った。

自分の演奏を聴きたい!その想いを叶えてくれたヤマハの自動演奏ピアノ

札幌を拠点にコンサート活動を繰り広げていた黒河好子さんは、自分の演奏を客席で聴きたいという強い願望を持っていた。そんなときに出会ったのがヤマハの自動演奏ピアノ「ピアノプレーヤ」 。

「自分の演奏が客席にどのように届いているか、ピアニシモがきれいに聴こえているか、フォルテの音が割れていないか、音色などもチェックしたいと思い続け、プロの録音機材などを購入して聴いていましたが、何か違う。1982年に『ピアノプレーヤ』が発売され、すぐに導入しました」

北海道で初めてヤマハのコンサートグランドピアノCFをレッスン室に入れ、さらにS400Bに自動演奏機能を付けた黒河さん。

「家具調度やライフスタイルはいたって質素ですが、とにかくピアノにはお金をかけてきました。S400Bに自動演奏機能を付けたときは、玩具を?道楽?などと言われました(笑)。それでも、私は自分の演奏を生の音で聴きたかったのです。そのおかげで多くのことを学びました。それが私のメソッドの基礎になっています」

自分自身の演奏のためにも、生徒のためにも、役立つものは何でも取り入れようと、自動演奏機能付きピアノを何度も買い替え、レッスンに活用してきた。

「演奏を録音してテンポを50パーセント落として聴くと、自分の演奏の欠陥がよくわかるんです。私の奏法や理論は、すべてヤマハの自動演奏機能に教えてもらいました。生徒たちにも、自分の演奏を客観的に聴くために付けるよう勧めています。とにかく耳がよくなり、テクニックや音楽性が大きく伸びます」

美しい音色と響きを生み出す「黒河メソッド」の秘密

海外の巨匠たちのレッスンを受けて、音色への意識が変わったと語る黒河さん。それを感覚ではなく、奏法として確立しようと研究を続けてきた。

「“こうすればこういう音が出る”ということを、指導者はしっかりと理解して生徒に伝えなければいけません。イメージ通りの音を出すためには“打鍵”だけでなく、“離鍵”への意識がとても重要。タッチ、打鍵のスピード、離鍵のスピード、ペダリングの違いで、音色は変化します。それを自動演奏ピアノの鍵盤やペダルの動き見ながら耳で確かめ、美しい音色と響きを生み出すための身体の使い方、筋肉の鍛え方を徹底的に考えました」

最先端の科学技術を使って成績を向上させるのは、スポーツの世界では今や常識となっているが、ピアノも同じ。合理的な練習によって時間を有効に使い、人間的な成長とのバランスを取りながら上達させるのが「黒河メソッド」だと語る。

「多くの曲を弾くために時間をかけるのはいいけれど、コンクールのために10分の曲を1日5時間も6時間も練習するのはどうかなと思います。私は小さい子には、とにかくバッハ、そしてハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンなどの古典作品を与え、独自のメソッドで手指の筋肉を鍛え、小学5年生くらいからは、近現代作品を積極的に学ばせています。ラヴェル、プロコフィエフ、ラフマニノフなどを弾くと、初見力、さまざまな種類のテクニック、音色への感性が育ちます」

ディスクラビア エンスパイアを使い、札幌・東京・大阪をつないだリモートセミナーを開催

2020年10月、自動演奏機能付きピアノ「ディスクラビア エンスパイア」を使い、札幌・東京・大阪をつないだリモートセミナーが開催された。これは、札幌の黒河さんが東京と大阪の生徒に遠隔レッスンをするという試みで、各会場にある「ディスクラビア エンスパイア」の鍵盤やペダルが同時に動くことで、細やかなニュアンスを伝える演奏のやりとりが繰り広げられた。

「私が演奏を交えながら、打鍵、離鍵のタイミング、フレージング、ペダリングなどをアドバイスすると、各会場の生徒たちの演奏がみるみる変わっていき、セミナーに参加したピアノ指導者の方たちが驚いていました」

ペダリングの指導では、黒河さんがペダルを踏み、生徒たちがペダルに足を乗せて直にそれを感じ取っていた。

「ヤマハの自動演奏機能付きピアノは6台購入していますが、『ディスクラビア エンスパイア』は、遂にここまで来たか!というくらい打鍵、離鍵、ペダルの反応が繊細で、遠隔レッスンでも、伝えたいことを充分に伝えることができました」

札幌と東京のピアニストによるリモート連弾の試みも披露され、コロナ禍の中、ディスクラビアを使ったレッスン、アンサンブル、コンクールなど、さまざまな可能性を感じさせるセミナーとなった。

■Disklavier™(ディスクラビア)

自動演奏ピアノを越えたエンターテイメントピアノ
詳細はこちら

特集

Chageさん「心から湧き出てくるものを、シンプルに水のように歌いたい」 Web音遊人

今月の音遊人

今月の音遊人:Chageさん「頭ではなく、心から湧き出てくるものを、シンプルに水のように歌いたい」

9825views

ディープ・パープル

音楽ライターの眼

ディープ・パープル、最後の来日となるか?2018年10月、The Last Goodbyeジャパン・ツアー決定!

15250views

【楽器探訪 Another Take】人気のカスタムサクソフォンが13年ぶりにモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

人気のカスタムサクソフォンが13年ぶりにモデルチェンジ

11520views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

26726views

ホルンの精鋭、福川伸陽が アコースティックギターの 体験レッスンに挑戦! Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ホルンの精鋭、福川伸陽がアコースティックギターの体験レッスンに挑戦!

10783views

ホールのクラシック公演を企画して地域の文化に貢献する/音楽学芸員の仕事

オトノ仕事人

アーティストとお客様とをマッチングさせ、コンサートという形で幸福な時間を演出する/音楽学芸員の仕事

11657views

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

ホール自慢を聞きましょう

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、刺激的なコンテンツを発信/東京芸術劇場 コンサートホール

12349views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

9169views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

19416views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:人を楽しませたい!それが4人の共通の思い

6451views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう

8057views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9904views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

11542views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

11226views

音楽ライターの眼

ブリティッシュ・ロックの神ドラマー、ビル・ブルーフォードの1970年代の2作品がリミックス再発

4010views

オトノ仕事人

音楽フェスのブッキングや制作をディレクションする/イベントディレクターの仕事

12863views

ゲッゲロゾリステン

われら音遊人

われら音遊人:“ルールを作らない”ことが楽しく音楽を続ける秘訣

1495views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

ピアノのエレガントなフォルムを大切にしたデザイン

6669views

サントリーホール(Web音遊人)

ホール自慢を聞きましょう

クラシック音楽の殿堂として憧れのホールであり続ける/サントリーホール 大ホール

22297views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は、いつ買うのが正解なのだろうか?

8163views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

26726views

こどもと楽しむMusicナビ

オルガンの仕組みを遊びながら学ぶ「それいけ!オルガン探検隊」/サントリーホールでオルガンZANMAI!

8594views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

25066views