Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人:渡辺真知子さん「幼稚園のころ、歌詞の意味もわからず涙を流しながら歌っていたのを覚えています」

『かもめが翔んだ日』『唇よ、熱く君を語れ』など数々のヒット曲を持ち、2020年でデビュー43年を迎えるシンガーソングライターの渡辺真知子さん。ポップスはもちろん、ジャズやラテンなど様々なジャンルの音楽に取り組んでいます。渡辺さんの音楽にかけてきた思いや歩みをうかがいました。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

17歳の時に、音楽面でいろいろとアドバイスをくださっていた方から、「これ聴いてみたら」と勧められた、プログレッシブ・ロックのエマーソン・レイク・アンド・パーマーの『展覧会の絵』ですね。彼らのアレンジによる演奏が素晴らしくて、クラシックのムソルグスキーの曲に歌詞が付いた歌まで入っていました。ピアノで弾いてみようと譜面を見たら、上級者の曲でとても無理。でも素敵な曲だからあきらめられず、ならばいつか歌おう!と心して、大事にしまっていました。
30代になってピアノトリオ(ピアノ、バイオリン、チェロ)の女性たちと知り合い、コンサートをするチャンスができた時、この編成なら『展覧会の絵』が歌えるのでは、とひらめいて。英語の作詞とアレンジをそれぞれ専門家にお願いして、歌うようになったんです。さらに40代に入って音楽番組で東京フィルハーモニー交響楽団の演奏で歌い、50代ではムソルグスキー生誕の地、ロシア・サンクトペテルブルグで開かれた日露友好コンサートで、オーケストラとこの歌を披露することができたのです。高校生の時に描いた夢以上のところまで、段階を経て到達できたのかと感慨深いですね。
毎日レコードを聴いていたわけではないけれど、私の気持ちを離さず、人生の場面場面で歌う機会がめぐってきました。35周年記念のアルバムにも収録しましたし、この先も歌い続けていきたい曲です。

Q2.渡辺さんにとって「音」や「音楽」とは?

自然なもの。自分を表現する最も身近な方法です。私にとっては揺るぎない存在ですね。いい音楽に触れると、落ち込んでいるときでも気分が持ち上がりますから。普段はそんなに音楽を聴きこむことはないけれど、時代時代で、出会いがあるんです。その一つが、映画『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』で知られるキューバの歌手、オマーラ・ポルトゥオンドさんとの出会い。番組でご一緒したフルート奏者の赤木りえさんに誘われてキューバに行った時に、まだ映画がヒットする前のオマーラさんの歌を聴いて自然と涙が出てしまったんです。それからいろいろお話しして仲良くしていただきました。当時、私が40歳で彼女は67歳。以来、今も現役で歌っているオマーラさんは、私にとって音楽の道しるべとなっています。
20代はポップスを歌って、30代でジャズやラテンと出会い、40代の時にはJ-POP、スクリーンミュージックなど、ジャンル、年代を問わず歌い込みました。その時々で、音楽が私に近寄ってきてくれた、そう感じています。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

シンセサイザーなどを使って、音をいろいろと出すのが「音で遊ぶ」でしょうか。オーケストラだと「音で描く」というイメージなんですよね。以前、イッセー尾形さんの舞台で、ドイツの3人グループのパフォーマンスを見たことがあるのですが、1人が新聞を「ビリビリ」と破くと、隣の人が負けじとさらに大きな音で「ビリビリッ」と破いて音を伝達していく。音のコントかな。こういうのも音で遊んでいますよね。
私自身で言うと、幼稚園の頃に仲宗根美樹さんの『川は流れる』を、レースのカーテンをつかんで涙を流しながら歌っていたのを覚えています。歌詞の意味もわからないのに、歌の世界に入り込んで、気持ちが良かった(笑)。あれは、私にとっての遊びだったんだなと思います。

衣装協力

渡辺真知子〔わたなべ・まちこ〕
1975年にヤマハのポピュラーソングコンテストで特別賞を受賞し、77年に自ら作詞・作曲を手がけた『迷い道』でデビュー。翌78年リリースの『かもめが翔んだ日』で第20回日本レコード大賞最優秀新人賞を受賞。ライブ活動も積極的に行っており、その歌唱力から国内外の音楽祭や各種イベントに招かれて歌声を披露する機会も多い。近年はラテン&ジャズのアルバムをリリースするなど、活動の幅をますます広げている。
オフィシャルサイトはこちら

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:挾間美帆さん「私は音で遊ぶ人のために作品を作っているのかもしれません」

9629views

ロニー・モントローズの最後のアルバム『10x10』が遂に発売

音楽ライターの眼

ロニー・モントローズの最後のアルバム『10X10』が遂に発売

6699views

ヤマハギター50周年を機にアコースティックギターのFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

楽器探訪 Anothertake

アコースティックギターFG/FSシリーズがフルモデルチェンジ

19533views

楽器のあれこれQ&A

サクソフォン講師がアドバイス!ステップアップのコツ

2346views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:独特の世界観を表現する姉妹のピアノ連弾ボーカルユニットKitriがフルートに挑戦!

4554views

音楽市場を広げたい、そのために今すべきこと/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事(後編)

オトノ仕事人

音楽市場を広げたい、そのために今すべきこと/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事(後編)

7250views

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

ホール自慢を聞きましょう

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

14095views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5386views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

30651views

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人:ずっと続けられることがいちばん!“アツく、楽しい”吹奏楽団

10633views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

もしもあのとき、バイオリンを習っていたら

5609views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

25170views

今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】今、注目の若き才能 ピアニスト實川風が ドラム体験レッスン!

8647views

上野学園大学 楽器展示室

楽器博物館探訪

日本に一台しかない初期のピアノ、タンゲンテンフリューゲルを所有する「上野学園 楽器展示室」

19590views

音楽ライターの眼

トリオでなくてカルテット ホールと共に奏でるベテランの三重奏/徳永二男、堤剛、練木繁夫による珠玉のピアノトリオ・コンサートVol.7

3414views

江藤裕平

オトノ仕事人

音楽ゲームの要となるリズムノーツをつくる専門家/『太鼓の達人』の譜面制作の仕事

8540views

横浜レンタル倉庫(YRS)

われら音遊人

われら音遊人:目指すはフェス! 楽しみ、楽しませ、さらなる高みへ

1381views

楽器探訪 Anothertake

目指したのは大編成のなかで際立つ音と響き「チャイム YCHシリーズ」

10628views

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

ホール自慢を聞きましょう

武満徹の思い「未来への窓」をコンセプトに個性的な公演を/東京オペラシティ コンサートホール:タケミツ メモリアル

14095views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

5473views

知って得する!木製楽器の お手入れ方法

楽器のあれこれQ&A

木製楽器に起こりやすいトラブルは?保管やお手入れで気を付けること

21305views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

2970views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29943views