Web音遊人(みゅーじん)

ONLYesterday

われら音遊人:愛するカーペンターズをプレイヤーとして再現

ある週末の夕暮れ時、高層ビルに入るライブレストランを訪ねると、入り口には開場を待つ熱心なファンの列ができていた。オープンすると同時に100席近いテーブル席があっという間に埋まり始める。そして、開演を待つ来場者の熱気が会場に充満した頃、大きな拍手に迎えられてカーペンターズのフルコピーバンド「ONLYesterday」のメンバーが登場した。一瞬の静けさのあと、幕開けを告げる『Close to You(遥かなる影)』のピアノのメロディが奏でられるとファンの集中力は急上昇。ステージから生み出される美しいハーモニーとコーラスワークを堪能しながら、時に一緒に歌詞を口ずさみ、時にはリズムに合わせて手拍子を送り、曲が終わるごとに歓声を上げる。

ONLYesterday

インタビューにご協力いただいた5人のメンバー。左から、岸田さん(ベース)、廣島さん(キーボード)、田中さん(ボーカル)、荻野さん(キーボード)、バンマスの堀江さん(ドラム)。

ONLYesterdayが結成されたのは2013年のこと。そもそもはSNSでの交流会が発端だったという。
「交流会のメンバーが楽器を持って集まってセッションしていたんですが、ある日、ベースを担当している岸田さんが“これはライブをやらなきゃもったいないよ”と言い出して」
そう教えてくれたのはバンドマスターであり、ドラムを担当する堀江さん。自身の大好きな一曲『Only Yesterday』をバンド名に決めた本人でもある。
「最初は、カーペンターズのコピーバンドなんて難しくてやるもんじゃないと思っていたんですが、音を合わせてみると想像以上にしっくりきた。なら挑戦してみるかと一年間の準備期間を経て、正式にバンドとしてスタートしました」(堀江さん)
当初より「やるからにはカーペンターズの音楽をじっくり、たっぷりと聴いてほしい」とライブはワンマンが基本。そして「プレイヤーとしてカーペンターズを再現する」ことをバンドのポリシーとして掲げた。
「カーペンターズの特徴ともいえる多重録音のサウンドに見合うだけの楽器をきちんとそろえて再現したかったんです。だからこそ、うちにはサックスとフルート、オーボエがいる。シンセで代用するのではなく生の音にこだわっている点が醍醐味です」(堀江さん)
「当時と現在では使用する楽器や機材が異なりますから全く同じにはなりませんし、私たちなりのアレンジもしていますが、可能なかぎりオリジナルに近づけたい。“ここまでしっかりとやっているのは日本ではきっと私たちだけだ”という自負が、ある種のモチベーションにもなっています」(廣島さん)

ONLYesterday

一人ひとりが自分の音に責任を持ち、そこから極上のバンドアンサンブルが生まれ、世界中で愛された名曲が披露される。

お客さんとバンドとで共有する大切な思い

結成後に幾度かのメンバーチェンジを経て、現在の12人体制になったのは約5年前。コーラス担当からボーカルに転じた田中さんは、もともとライブを見に来ていたファンだったとか。楽器演奏同様にボーカルスタイルにもこだわりがある。
「カレン・カーペンターの歌い方の癖や節回しなど、ちょっとしたニュアンスを丁寧に表現することが大切だと思います。私自身も聴き手側として“そうそう、この感じ”という瞬間があるとうれしいものですから。そのポイントを外さないように歌うことを特に意識しています」(田中さん)
「そのポイントが聴いてくださる方々とズレることなくきっちりと合うことが満足感につながるのではないでしょうか。お客さんと演奏する側の思いの共有は、活動をするうえでとても大切なことだと実感しています」(荻野さん)
年に2回のワンマンライブは常に大盛況、すでに根強い人気を得ているONLYesterdayが目指す先は、新しいファン層を開拓するのと同時に、次世代へとバトンをつなぐこと。
「若い世代にカーペンターズの音楽を継承していきたいし、いくべきだと思ってこのバンドを続けている側面もあるような気がします」(岸田さん)
「だからこそ、できるだけ長くバンドを続けたい。セカンドジェネレーションとして後継バンドが出て来てくれるとうれしいな」(堀江さん)
ここで「私はちょっと違うんだけど……」と荻野さん。
「ここまで来たら、リチャード(・カーペンター)さんの前で演奏したい。そして“私たち、どのくらいできていますか?”と聞いてみたい!」
これを受けて「うわ~、厳しそうだなあ」「案外ちゃんとわかってくれたりして」と笑い合うメンバー。自信に裏打ちされながらも、自分たちの限界を定めることなく切磋琢磨を続ける。ONLYesterdayは今日もその歩みと進化を止めることはない。

ONLYesterday

この日のステージは2部構成で、全18曲を熱演。満席の観客を巻き込み、カーペンターズへの愛にあふれた一夜となった。

ONLYesterdayのQ&A

Q.使用楽器・機材のこだわりは?
サックスやフルート、オーボエといった生の管楽器はもちろんですが、オーケストレーションを支える機材としてヤマハのエレクトーン「STAGEA(ELC-02)」を使用しています。トランスポーズ機能の使い勝手がよく、細かい設定ができるのでカーペンターズの楽曲に適しているように思います。バンド結成当初はやはりヤマハの「D-DECK」を使っていました。

Q.演奏の完成度を高める秘けつは?
月に1回、メンバー全員で集まって4時間練習しています。ライブが近づくと5時間、集中してしっかりと。この全体練習のために各自で楽譜を作ったり個人練習をしたりと、毎日の積み重ねが自信につながります。現在のレパートリー数は約70曲で、この中からライブではヒット曲をメインにして20曲前後を演奏します。

バンド紹介

●バンド名:ONLYesterday
●結成時期:2013年
●活動内容:年に2回のワンマンライブとイベント参加を中心に、東京都内のライブハウスで活動。
●練習頻度:月に1回程度
●年齢構成:40代〜70代
●メンバー:ボーカル、コーラス、ギター、ベース、ドラム、パーカッション、キーボード、サックス、フルート、オーボエの全12名。
オフィシャルサイト
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