Web音遊人(みゅーじん)

誰もが口ずさめる“仲間外れをつくらない曲” ニューシングル『空と青』/家入レオ インタビュー

嘘をつくのが下手──家入レオは、自らをそう評して笑う。
「その時々でやりたいと思ったことを、正直すぎるぐらい正直に作品に落とし込んできました。ファンの方も最初にこの曲を聴いたときにはびっくりしたかもしれないけれど、ここまで一緒に来れたよね、ありがとうという気持ちしかないです」
ヒリヒリとした心の叫びや葛藤を爆発させたシングル『サブリナ』で、17歳の現役高校生シンガーとして衝撃的なデビューを飾った家入レオ。2021年2月には、ついにデビュー10年目を迎える。
そんな彼女の17枚目となるシングル『空と青』が、2021年1月20日にリリース。ドラマ用に書き下ろされた同曲は、日本テレビ系水曜ドラマ『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』主題歌。清らかな声で歌い上げた、アップテンポで優しい楽曲が心に響く。

聴いてくれる人の曲になってほしい

『空と青』は、ドラマの脚本を担当する北川悦吏子が作詞、作曲は[Alexandros]のボーカル&ギター川上洋平、そして歌唱は家入という注目度の高い1曲だ。
「このドラマでしかなし得なかったコラボレーションだと思います。この曲を聴いたとき、今の私には書けない曲だと思いました。おじいちゃんから小さい子まで、誰もが口ずさめる“仲間外れをつくらない曲”だなって。聴いてくださるみなさんを、温かい気持ちで包めたら。そんな思いを込めて歌いました」
シンガーソングライターとしても活躍する家入は、今作ではシンガーに徹している。それは、あらためて“歌うこと”と向き合うことでもあった。
読書家の家入は、山崎ナオコーラ著『人のセックスを笑うな』の一文「私は、伊東さんのことを、頭が良かったり、面白かったりするから、好きだったんじゃないよ。冷蔵庫にハミガキ粉を入れているところが、本当に好きだったんだよ」に例えてこう話す。
「このフレーズには、ふたりのオリジナリティとか個性がそのまま出ているというか。曲をつくるってこういうことだと思うんです。歯磨き粉を冷蔵庫に入れるところが好きだったというのも、その人だからこそ出てきた言葉だなと。でも“歌を歌う”というのは、また別の動作な気がしていて。歌を書くときは自我を一番前に出すのですが、歌うときは一番後ろに持ってくる。それは、聴いてくださる方が自分の思いをその歌に重ねて、その人の曲になったらいいなと思うから。今回、歌い手に徹することで、あらためてそういった考えの整理ができたような気がします」

人の背中を押せるのが音楽

一方、カップリング曲として収録されている『Moon』は家入が作詞を担当。
「『空と青』は楽曲提供していただいた作品なので、カップリングは自分の言葉で伝えることができたらと思いました」
悲しみも喜びも、すべてひと時のもの。だから、今ある気持ちを歌にしたい──そんな思いから制作されたこの曲は、移り変わってしまう切なさを月の満ち欠けに重ね『Moon』と題された。切なさと儚さを宿した言葉が透明な歌声に乗り、胸にぐっと迫る。
もう一曲のカップリングは、2020年1月にリリースした『未完成』。自分が“未完成”であることをさらけ出した直情的なこの曲は、家入のターニングポイントにもなった大切な曲だ。今回収録されたのは、tofubeatsによるリミックスバージョン。
「原曲はすごくエモーショナルに歌っているので、スタイリッシュにリミックスしたらどうなるだろうと思って、tofubeatsさんにお願いしました」
これまでモノトーンのイメージが強かった家入だが、鮮やかなピンク色のシャツをまとったジャケット写真も印象的。新作に詰まった新たな魅力を物語る。
「2020年は本当にいろいろなことがありましたが、そんななかで人ってやっぱり強いんだな、優しいんだな、前に進んでいくしかないんだなということを私は感じました。人が何かに立ち向かっていくときに背中を押せるもののひとつが音楽だと思うし、今、誰かがどこかで歯をくいしばっているかもしれない、前を向こうとしているかもしれないと思いながらレコーディングしたり歌ったりしています。もし力が必要なときは、ぜひ歌を聴いていただけたら嬉しいですね」

2020年末、家入は26歳を迎えた。
「大人でもあり、まだまだこれからでもあり。これは“絶対”だ、と思っていることを壊す出来事がこれからもたくさんあるはずなので、視野を広げていきたいです。いろいろな感情を経験して、どんな曲をつくっても、どんな楽曲を提供していただいても歌いこなせる表現者でありたいと思います」
ナレーションや声優など声を使った仕事、エッセイ集の出版、時が許せば海外留学……やりたいことはたくさんある。そのすべてが歌の原動力となり、これからも彼女は唯一無二の世界を届けてくれるのだろう。

■インフォメーション

シングル『空と青』

発売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2021年1月20日
価格:1,320円
詳細はこちら
オフィシャルサイトはこちら

YouTube公式チャンネル オフィシャルTwitter オフィシャルLINE

特集

渡辺美里

今月の音遊人

今月の音遊人:渡辺美里さん「歌を聴きたいといってくださるファンとの時間は最高の財産です」

5938views

音楽ライターの眼

クラシック・キャラバン2021 クラシック音楽が世界をつなぐ~輝く未来に向けて~コンサート全国ツアーがスタート

1966views

Venova(ヴェノーヴァ)

楽器探訪 Anothertake

やさしい指使いと豊かな音色を両立させた、「分岐管」と「蛇行管」

1views

ヴェノーヴァ

楽器のあれこれQ&A

気軽に始められる新しい管楽器 Venova™(ヴェノーヴァ)の魅力

1610views

大人の楽器練習機

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:世界的ピアニスト上原彩子がチェロ1日体験レッスン

16855views

オトノ仕事人

リスナーとの絆を大切にする番組作り/クラシック専門のインターネットラジオを制作・発信する仕事

5165views

しらかわホール

ホール自慢を聞きましょう

豊潤な響きと贅沢な空間が多くの人を魅了する/三井住友海上しらかわホール

13299views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

7215views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

14439views

if~

われら音遊人

われら音遊人:まだまだ現在進行形!多くの人に曲を届けたい

918views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

音楽知識ゼロ&50代半ばからスタートしたサクソフォンのレッスン

7600views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29069views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

13061views

浜松市楽器博物館

楽器博物館探訪

世界中の珍しい楽器が一堂に集まった「浜松市楽器博物館」

29788views

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.3

音楽ライターの眼

なぜジャズのハードルは下がらないのか?vol.3

6642views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

見えないところこそ気を付けて心を配る/弦楽器の調整や修理をする職人(後編)

8080views

われら音遊人

われら音遊人:路上イベントで演奏を楽しみ地域活性にも貢献

2980views

REVSTAR

楽器探訪 Anothertake

いまの時代に鳴るギターを目指し、音もデザインも進化したエレキギターREVSTAR

5654views

秋田ミルハス

ホール自慢を聞きましょう

“秋田”の魅力が満載/あきた芸術劇場ミルハス

4332views

山口正介さん

パイドパイパー・ダイアリー

「自転車を漕ぐように」。これが長時間の演奏に耐える秘訣らしい

5884views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

25891views

東京文化会館

こどもと楽しむMusicナビ

はじめの一歩。大人気の体験型プログラムで子どもと音楽を楽しもう/東京文化会館『ミュージック・ワークショップ』

7215views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9637views