今月の音遊人
今月の音遊人:今井美樹さん「私にとって音楽は、“聴く”というより“浴びる”もの」
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今月の音遊人:川口千里さん「音楽があるから、ドラムをやっているから、たくさんの人に出会うことができて、積極的になれる」
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2021.11.1
世界的に注目されているドラマーの川口千里さん。彼女の言葉の端々からは、音楽とドラムの楽しさを教えてくれた師匠への愛が伝わってきました。
いわゆる「マイブームな曲」というのは、そのときどきで変わるんですけど、いつも聴いているのは、師匠である菅沼孝三さんがドラムを叩いている音楽ですね。インストゥルメンタルの音楽にのめり込むようになったきっかけも、音楽の楽しさを教えてくれたのも菅沼さんなんです。私の経歴を語るうえで、そこは絶対に外せません。
そこで、一曲挙げるのもなかなか難しいのですが、アルバムでいうと、菅沼さんがベーシストの水野正敏さん、ギタリストの矢堀孝一さんと結成したユニットFRAGILEが、1997年に発表したセカンド・アルバム『Handle with Care』です。菅沼さんはさまざまなミュージシャンと活動されていますが、初めて生で聴いたのがFRAGILEの演奏でした。名古屋にあるジャズクラブでのライブだったのですが、菅沼さんの凄まじいパフォーマンスをとても近くで贅沢に体感することができて、かなり感動したのを覚えています。
普段の生活では出せない感情や想いも表現できる。音楽って、そういうものだと思います。
「ドラムを叩いているときは普段と別人のよう」とよく言われるんです。あまり自覚はないのですが、よく考えてみると、そうかもしれません。普段の、割とゆったり過ごしているのも自分ですし、ドラムを演奏しているときの、「この音は絶対に聴き逃さない!」とか「こんなこともやっちゃうぞ!」みたいな、攻めの姿勢になっているのも自分なんですよね。出す音、奏でる音楽、それもひとつの自分なんだよ、と思うようになりました。
あと、「ドラムがなかったら、一体どうなっていたんだろう?」と考えることがよくあるんです。基本的に家にいるのが好きですし、人とずっと話していたいかというと、そうでもない。だから、もしドラムと出合っていなかったら相当狭い世界の中で生きていただろうな、と思うんです。でも、音楽があるから、ドラムをやっているから、たくさんの人に出会うことができて、積極的になれる。私にとって、音楽は生きていくために必要なものでもあるんです。
Q1.の続きみたいな感じなんですけど、やはり菅沼孝三さんです。菅沼さんには8歳のときから師事しているのですが、最初にお会いしたときのことを今でも鮮明に覚えています。当時、地元のドラムの先生が、名古屋で菅沼さんがグループレッスンをしていることをどこかで聞いてきて、「せっかくだから行ってみたら?」と勧めてくれました。それで、大人たちに交じって参加してみたのが初めてです。
その日、菅沼さんが「今日の課題はこれ」と出してきたのは、デイヴ・ウェックルが叩く超絶な曲。「何だ、これは!?」と衝撃を受けました。以来、菅沼さんはレッスンやライブを通じて、まさに「音で遊ぶ」ということを教えてくれています。ともするとドラムを「演奏する」のではなく「叩く」だけになってしまいそうな私に、「自分が歌うままに、こうして音で遊んでいくんだよ」ということを、自らの演奏を通じて伝えてくれたのです。
川口千里〔かわぐち・せんり〕
愛知県生まれ。5歳でドラムを始め、8歳から「手数王」こと菅沼孝三氏に師事。世界的なドラム関連サイト『DRUMMERWORLD』で世界のトップドラマー500人に選ばれたり、アメリカのドラム専門誌「DRUMHEAD MAGAZINE」の表紙を飾り18ページに渡り特集されたりするなど、世界的に注目を集める。2020年に発表した『Dynamogenic』をはじめ、これまで4枚のソロ・アルバムをリリース。ヤマハアコースティックドラム、エレクトロニックドラムの商品企画・開発にも協力。ヤマハドラム、ジルジャンシンバル使用のオフィシャルアーティストとして、世界中で開催されるヤマハのイベントにも数多く参加。
オフィシャルサイト
文/ 山崎隆一
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