Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人:川口千里さん「音楽があるから、ドラムをやっているから、たくさんの人に出会うことができて、積極的になれる」

世界的に注目されているドラマーの川口千里さん。彼女の言葉の端々からは、音楽とドラムの楽しさを教えてくれた師匠への愛が伝わってきました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

いわゆる「マイブームな曲」というのは、そのときどきで変わるんですけど、いつも聴いているのは、師匠である菅沼孝三さんがドラムを叩いている音楽ですね。インストゥルメンタルの音楽にのめり込むようになったきっかけも、音楽の楽しさを教えてくれたのも菅沼さんなんです。私の経歴を語るうえで、そこは絶対に外せません。
そこで、一曲挙げるのもなかなか難しいのですが、アルバムでいうと、菅沼さんがベーシストの水野正敏さん、ギタリストの矢堀孝一さんと結成したユニットFRAGILEが、1997年に発表したセカンド・アルバム『Handle with Care』です。菅沼さんはさまざまなミュージシャンと活動されていますが、初めて生で聴いたのがFRAGILEの演奏でした。名古屋にあるジャズクラブでのライブだったのですが、菅沼さんの凄まじいパフォーマンスをとても近くで贅沢に体感することができて、かなり感動したのを覚えています。

Q2.川口さんにとって「音」や「音楽」とは?

普段の生活では出せない感情や想いも表現できる。音楽って、そういうものだと思います。
「ドラムを叩いているときは普段と別人のよう」とよく言われるんです。あまり自覚はないのですが、よく考えてみると、そうかもしれません。普段の、割とゆったり過ごしているのも自分ですし、ドラムを演奏しているときの、「この音は絶対に聴き逃さない!」とか「こんなこともやっちゃうぞ!」みたいな、攻めの姿勢になっているのも自分なんですよね。出す音、奏でる音楽、それもひとつの自分なんだよ、と思うようになりました。
あと、「ドラムがなかったら、一体どうなっていたんだろう?」と考えることがよくあるんです。基本的に家にいるのが好きですし、人とずっと話していたいかというと、そうでもない。だから、もしドラムと出合っていなかったら相当狭い世界の中で生きていただろうな、と思うんです。でも、音楽があるから、ドラムをやっているから、たくさんの人に出会うことができて、積極的になれる。私にとって、音楽は生きていくために必要なものでもあるんです。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

Q1.の続きみたいな感じなんですけど、やはり菅沼孝三さんです。菅沼さんには8歳のときから師事しているのですが、最初にお会いしたときのことを今でも鮮明に覚えています。当時、地元のドラムの先生が、名古屋で菅沼さんがグループレッスンをしていることをどこかで聞いてきて、「せっかくだから行ってみたら?」と勧めてくれました。それで、大人たちに交じって参加してみたのが初めてです。
その日、菅沼さんが「今日の課題はこれ」と出してきたのは、デイヴ・ウェックルが叩く超絶な曲。「何だ、これは!?」と衝撃を受けました。以来、菅沼さんはレッスンやライブを通じて、まさに「音で遊ぶ」ということを教えてくれています。ともするとドラムを「演奏する」のではなく「叩く」だけになってしまいそうな私に、「自分が歌うままに、こうして音で遊んでいくんだよ」ということを、自らの演奏を通じて伝えてくれたのです。

川口千里〔かわぐち・せんり〕
愛知県生まれ。5歳でドラムを始め、8歳から「手数王」こと菅沼孝三氏に師事。世界的なドラム関連サイト『DRUMMERWORLD』で世界のトップドラマー500人に選ばれたり、アメリカのドラム専門誌「DRUMHEAD MAGAZINE」の表紙を飾り18ページに渡り特集されたりするなど、世界的に注目を集める。2020年に発表した『Dynamogenic』をはじめ、これまで4枚のソロ・アルバムをリリース。ヤマハアコースティックドラム、エレクトロニックドラムの商品企画・開発にも協力。ヤマハドラム、ジルジャンシンバル使用のオフィシャルアーティストとして、世界中で開催されるヤマハのイベントにも数多く参加。
オフィシャルサイト

facebook

twitter

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:中川晃教さん「『音遊人』のイメージは、雲を突き抜けて、限りなくキレイな空の中、音で遊んでいる人」

8655views

音楽ライターの眼

名手ぞろいの楽団員が一夜限りの室内楽/ベルリン・フィル スペシャル・アンサンブル Vol.3

7453views

マーチングドラム

楽器探訪 Anothertake

これからのマーチングドラム ~楽器の進化の可能性~

15829views

バイオリン

楽器のあれこれQ&A

アコースティックからサイレント、エレクトリックまで多彩なバイオリンを楽しもう!

1361views

ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ぱんだウインドオーケストラの精鋭たちがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

15429views

出演アーティストの発掘からライブ制作までを一手に担う/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事 (前編)

オトノ仕事人

出演アーティストの発掘からライブ制作までを一手に担う/ジャズクラブのブッキング・制作の仕事 (前編)

21849views

人が集まり発信する交流の場として、地域活性化の原動力に/いわき芸術文化交流館アリオス

ホール自慢を聞きましょう

おでかけ?たんけん?ホール独自のプランで人々の厚い信頼を獲得/いわき芸術文化交流館アリオス

10814views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

12738views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

27063views

Red Pumps BIGBAND

われら音遊人

われら音遊人:出自がさまざまなメンバーと、誰もが楽しめる音楽をビッグバンドで

2301views

山口正介 Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

マウスピースの抵抗?音切れ?まだまだ知りたいことが出てくる、そこが面白い

7198views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

12346views

大人の楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

13891views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

10243views

スパークス

音楽ライターの眼

ベテランなのに鮮度の高いロック・バンド、スパークスの魅力に迫る

17147views

前澤陽さん

オトノ仕事人

テクノロジーで音楽文化や社会に変容をもたらす/音楽技術研究者の仕事

1529views

われら音遊人:高度&骨太なサウンドにソウルフルな歌声が響く!

われら音遊人

われら音遊人:高度&骨太なサウンドにソウルフルな歌声が響く!

1517views

楽器探訪 Anothertake

ナチュラルな響きと多彩な機能で電子ドラムの可能性を広げる、新たなフラッグシップモデルDTX10/DTX8シリーズ

5870views

人が集まり発信する交流の場として、地域活性化の原動力に/いわき芸術文化交流館アリオス

ホール自慢を聞きましょう

おでかけ?たんけん?ホール独自のプランで人々の厚い信頼を獲得/いわき芸術文化交流館アリオス

10814views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

大人の音楽レッスン、わたし、これでも10年つづけています!

8581views

楽器のあれこれQ&A リコーダー

楽器のあれこれQ&A

リコーダーを長く楽しむためのお手入れ方法

16582views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

12738views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

29050views