
今月の音遊人
今月の音遊人:Chageさん「頭ではなく、心から湧き出てくるものを、シンプルに水のように歌いたい」
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欧米のオルガン文化を取り入れ、日本で独自に開発、発展してきたエレクトーン。両手両足で上鍵盤、下鍵盤、ペダル鍵盤を操り、全身を使って音楽を表現する奏者の姿は躍動感たっぷり。思わず見入ってしまいますよね。
エレクトーンにはありとあらゆる楽器の音が詰まっており、ひとつの楽器の音を単独で鳴らすこともできれば、ストリングスやブラスなどのセクションごとに複数の楽器の音を重ねて鳴らすこともでき、表現力の幅広さはまさに無敵。3つの鍵盤にさまざまな音色(ボイス)を振り分け、リズムをバックに「ひとりオーケストラ」や「ひとりロックバンド」を楽しむこともできます。
またエレクトーンならではの特徴のひとつが、「レジストレーション」(以下レジスト)と呼ばれるボイスやリズムの組み合わせを使う演奏スタイル。なおエレクトーンには、音楽ジャンル別によく使われるボイス、リズムを組み合わせた「レジストレーションメニュー」が内蔵されており、そのまま使ったり、編集を加えたりすることができます。
「例えばオーケストラの曲を弾きたいとなったとき、何もないところからボイスやリズムの組み合わせを考えるのは大変です。ですが、オーケストラ系のレジストレーションメニューを使えばすぐに演奏がはじめられますし、オリジナルのレジスト作りもより簡単に行うことができます」と、開発担当の鳥村浩之さん。
幼いころからエレクトーンに親しみ、ヤマハ入社後はエレクトーンの開発一筋に打ち込んできた鳥村浩之さん。「まるで指揮者のように、音楽全体をコントロールしている気分に浸れるところがエレクトーンの醍醐味のひとつです」
奏法についても、エレクトーンならではの特徴があります。それは鍵盤のタッチ。同じ鍵盤楽器でも、ピアノの場合は減衰音(鍵盤を叩いた後、徐々に小さくなる音)ですが、エレクトーンは持続音で、打鍵後もタッチによって音量や音質に変化をつけられます。そのため、通常は鍵盤で表現できない弦楽器や管楽器の伸びやかな音も再現可能となります。
出せる音が無限にあり、自由に編集を加えられるエレクトーンは、もはやシンセサイザーと同様のハイテク楽器。でも、音作りがメインであるシンセサイザーとは異なり、一度きりの演奏をどう聴かせるかに重点が置かれているのがエレクトーン。このポイントが、楽器の根幹であるといえます。
<写真左>作成したレジスト(ボイスやリズムの組み合わせ)は、上鍵盤の下に16個並ぶメモリーに記録。演奏しながら右手の親指でボタンを押したり、足でスイッチを蹴ったりしてレジストを切り替えます。なお、エレクトーンのスイッチボタンが多いのは、鍵盤を弾きながらメニューなどの切り替え操作を簡易にするためです。
<写真右>上鍵盤でメロディ、下鍵盤でハーモニー(伴奏)、ペダル鍵盤でベースと、音楽の要素を3つの鍵盤に分けて弾くエレクトーン。楽曲の構造を掴みやすく、演奏スキルだけでなく、作曲や編曲の力をつけることもできます。
「エレクトーンは事前にいろいろ仕込む楽器と思われがちですが、仕込みは主にライブ演奏のためにすることですし、ピアノやオルガンのようにその場で弾くことも楽しさのひとつです。また、エレクトーン一台で完結する音楽だけでなく、ほかの楽器と一緒にアンサンブルすることもできます」(鳥村さん)
技術の発展によって多彩な表現が可能となったエレクトーンですが、果たして最新のエレクトーン事情はどうなっているのでしょうか。詳しくは、Take2で見ていくことにしましょう。
Take1:改めて考える エレクトーンってどんな楽器?
Take2:エレクトーンに新風を吹き込んだ「ステージア」
Take3:変えるべきもの、変えざるべきものを見極める
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