今月の音遊人
今月の音遊人:さだまさしさん「僕にとって音楽は、最高に好きなものであり、最強に嫌いなもの」
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俳優の佐野史郎をホストに、達人の手法から大人の音楽の愉しみ方を発見しようというトークショー、『音座銀座(おんざぎんざ)』。そのスペシャル版が、ヤマハ銀座コンサートサロンで大貫妙子をゲストに迎え開催された。今回のテーマは「フレンチ音楽」。
音楽といえばアメリカのロックやポップスが主流であった60〜70年代、ヨーロッパの音楽、しかもフレンチ音楽といえば、たとえば『男と女』『白い恋人たち』などの映画を通して知ることが多かった日本。大貫が持参したジャンヌ・モローやマリー・ラフォレといったフランス女優のヴィンテージなLP版アルバムは、今あらためて聴くと新しく響き、アナログレコード収集が趣味の筆者にとっても新鮮な価値を感じさせられる選曲であった。
対して、佐野のセレクトは邦楽も絡めたお茶の間のフレンチとして、ザ・フォーク・クルセダーズ、美輪明宏、浅川マキ、ムッシュかまやつ、そして中村晃子に細川俊之と、サブカル感を裏切らない、これまたレアな選曲であった(大貫は苦笑していたが)。
今回のイベントは、二人がそれぞれ持ち寄ったフレンチ音楽(その数200曲強!)をトークに合わせて流すというスタイルであったが、ペースは完全に大貫主導。
佐野が『オー・シャンゼリゼ』をかければ「これ苦手!」と一蹴。シュガー・ベイブ時代から大貫の大ファンである佐野は、タジタジといった状態。そんなふたりのやりとりに、会場は終始笑いが絶えなかった。
また、当時20代の佐野が渋谷ジャン・ジャンで、昼はシュガー・ベイブのステージを観て、夜には舞台をこなしたという思い出話や、今はなき荻窪ロフトで行われた伝説のシュガー・ベイブ解散コンサートのエピソード、大貫が本当は「ジャニス・ジョプリンのような声になりたかった」という裏話(?)など、レアなトークもたっぷりと披露されたことは、その時代をともに歩んでいなくとも十分楽しめた。
一時期フランスで過ごしていたという大貫は「アメリカと違い、フランスをはじめとするヨーロッパでは普通に三島由紀夫が読まれていて、日本の文化が自然に浸透していた」と語り、佐野は「アメリカでは理解されにくい作品、例えば北野武の世界観はフランスでは絶賛されている」という。日本とフランスは、互いに持つ「何か」で惹かれあっているのだと。
今回の音座銀座で、フレンチ音楽は意外に身近な存在だったと改めて気づかされた。そして音楽のみならず映画や文化など、がぜん興味が湧いてきた。
さて、アメリカのロック、ポップス、そしてフレンチと続いたこの「音座銀座」、次回は5月14日(木)、ヤマハ銀座ビル1Fポータルに場所を戻して、J-WAVEの番組『サウージ! サウダージ』の選曲・制作を手がけている音楽プロデューサー中原仁氏をゲストに、サンバやボサノヴァだけではないブラジル音楽の魅力について語り合うという。
果たしてどんな音の世界が繰り広げられるのか。大人の夜の音楽旅行はまたまだ続く。
こちらのPDFファイルをご覧ください。
日時:2015年5月14日(木)開場16:30/開演17:00
場所:ヤマハ銀座ビル1F“ポータル”(東京都中央区銀座7-9-14 )
観覧:無料※座席は事前予約制
席数:予約席35名(抽選)※立ち見フリースペースあり(当日先着順)