
今月の音遊人
今月の音遊人:三浦文彰さん「音を自由に表現できてこそ音楽になる。自分もそうでありたいですね」
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今月の音遊人:カニササレアヤコさん 「音楽は、自分の居場所をあたえてくれるものです」
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2025.3.3
お笑い芸人として活躍する一方で、ロボットエンジニアとしても働きつつ、現在は東京藝術大学音楽学部邦楽科での学び直しに励むカニササレアヤコさん。多彩な側面を併せ持つカニササレさんに音楽に対する想いをうかがいました。
ジャンルになってしまいますがタンゴです。これは、伯母の影響が大きいかもしれません。私が小学生のころ、家では伯母からもらったタンゴのCDが家でずっと流れていました。中でもアストル・ピアソラの『リベルタンゴ』はそのころから大好きな曲ですし、作曲家でバンドネオン奏者であるJ.P.ホフレの曲も熱心に聴きました。熱は治まらず、高校卒業後に進学した早稲田大学では4年間アルゼンチンタンゴの演奏サークルに入っていたので、まさにタンゴ漬けの毎日でした。
今も変わらず大好きで、笙で演奏することもあります。タンゴで使われる楽器、バンドネオンは構造としては笙と同じフリーリード楽器ですから音の印象が似ていて親和性もあるんです。
「居場所をあたえてくれるもの」でしょうか。音や音楽に限らず、アート全体がそうした役割をもっているとも思っています。言葉にできない感情やいろいろな情景、そういったものすべてに居場所をあたえてくれるものです。
音楽があると、言葉を交わさなくても同じ空間にいられるという感覚もあります。たとえば、知らない人と無言で一緒に過ごすとなった場合でも、そこに音楽があることで居場所を作り出すことができる。
以前、モンゴルのある村を訪れたとき、野良犬が私のそばで座り込んだんです。エサをねだるでもなく、構ってほしそうにするでもなく、機嫌よくそばにいるだけ。ただ一緒にいるだけのそんな空間がとても心地よくて、ふと「音楽がある空間と似ているな」と感じた経験があります。
それって音楽のもつ力であり、大きな魅力のひとつだなと思いました。
音そのものを楽しんでいる人。楽音だけでなく、噪音やノイズのような音、そのあたりを叩いて出る音にもおもしろさを発見して、音楽を見いだせる人です。
私は2022年に東京藝術大学音楽学部邦楽科に進学して、学び直しをしています。大学では即興の授業があって、学生数人ごとのグループで即興演奏をするんですが、楽器だけじゃなく椅子やホワイトボードを使ったり、自分の体を叩いたり、ありとあらゆる音をまずは出してみるということがとても楽しいです。先日も、「水中、それは苦しい」のドラマーのアナーキー吉田さんと即興ライブを開催しましたが、おもちゃの笛やプリペアド・ピアノ、水などを使って出す変わった音で遊ぶようなライブでした。そんなふうに「音楽」にとらわれず、鳴っている音を純粋に楽しめる人を音遊人と呼びたいです。
楽器や音楽に触れていなければ絶対に出会えなかったような方々と知り合えて交流ができていることが本当に楽しいです。先日、ある先輩が「藝大は勉強だけでなく“つながりをつくる”ことにも大きな価値があるよ」とおっしゃっていました。一緒に音楽を奏でつつ、お互いにアプローチしながらコミュニケーションが育める。そんなエキサイティングな経験を積んでいけることが楽器や音楽をやっていてよかったことであり、まさに今、そう実感しています。
カニササレアヤコ〔かにさされあやこ〕
埼玉県出身、神奈川県育ち。早稲田大学文化構想学部卒業。「お笑い」のネタで使っている雅楽の管楽器「笙」だけでなく、4歳でピアノを始め、アルトサックスやバイオリンなど、さまざまな楽器に触れてきた。現在はサンミュージックプロダクションに所属し、雅楽芸人として活躍する一方、ロボットエンジニアの仕事も続けている。また、2022年4月からは東京藝術大学邦楽科にも進学し、本格的に雅楽の学び直しに励んでいる。
オフィシャルサイト
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文/ 髙内優
photo/ 宮地たか子
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tagged: アーティスト, インタビュー, 今月の音遊人, カニササレアヤコ
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