今月の音遊人
今月の音遊人:曽根麻央さん 「音楽は、目に見えないからこそ、立体的なのだと思います」
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自宅で楽器を演奏したいけれど、防音室を設置するのはスペースの関係でハードルが高い……。そんなジレンマを解決するユーザー組立型簡易防音室「DIY.M(ダイム)」が登場。ヤマハで同製品の開発を手掛けた栗原誠さんと、企画・営業を担当する生澤卓也さんにお話を聞きました。
「DIY.M」は広さ0.5畳ほどで、フルートやクラリネットなど、小型で音圧の低い中高音域の楽器の使用が想定されています。簡易防音室ながら31dB(500Hz)音を減衰することができる遮音性能を持ちながらも、本体の総重量は約80kgと軽量で、設置条件や価格のハードルも下げた、組み立て式の身近な防音室です。
「『DIY.M』とは、“Do It Yourself”と“Do It Your Music”の2つの意味を込めたもので、お客様自身で組み立てることがコンセプトになっています。開発にあたり社内外の楽器奏者に幅広い意見を求めたところ、遮音性能は必要最低限でも、サイズは大きすぎず、手ごろで手軽な防音室を求めている方が大勢いることがわかりました。また、練習のために外出するのは面倒と感じる方もいるようで、手が届きやすい防音室のニーズは高いと確信しました」(栗原さん)
長年にわたり、防音室の開発を行っているヤマハですが、使う人が自分で組み立てるタイプの開発は初めてのため、製品化に至るまでには試行錯誤があったとか。
「組み立てやすいサイズ、壁やドアに使うパネルの重量(材質)の見極めや、ケガをしないための安全性の確保などには苦労しました。試作品ができてからは、組み立てテストで“パネルの表裏を間違いやすい”などといったつまずきポイントを洗い出し、初めてでも間違えることなく、簡単で安全に作業ができる方法を考えました」(栗原さん)
コンパクトで、遮音性能も実現した「DIY.M」。フルートの演奏音でその効果を確認してみたところ、「DIY.M」のドアを開けた状態では、となりの人の話し声が聞こえないくらいの大音量(90dB)が、ドアを閉めるとテレビの音量(60dB)くらいになり、さらに部屋のドアを閉めると遠くでかすかに音が鳴っていると感じるくらいまでになりました。
「遮音性能と扱いやすさを両立できる厚みや構造になるように、パネルのつくりを工夫しています。また、天井の換気ファンから、パネル内を通して換気をするパネル内ダクトシステムを採用し、換気流路から音が漏れないよう配慮するなど、細かなところにもこれまでに培った技術を生かしています」(栗原さん)
気になるのが「DIY.M」の中に入ったときのサイズ感や体感温度。実際に入ってドアを閉めてみたところ、閉塞感はなく、小型の椅子や譜面台を持ち込むことは十分に可能と感じました。栗原さんによると、換気ファンの性能は1時間に約14回(約4分に1回)空気が入れ替わる計算となるため、息苦しさを覚えることなく、真夏でも部屋のエアコンが効いていれば、内部の温度が急激に上がることはなさそうです。
なお、楽器の音が響きすぎると感じるときは、オプションで吸音パネルを取り付けて調整することもできます。
「専用に開発した吸音パネル『OWP2A』を、最大4枚設置することが可能です。奏者の感じ方、好み次第で自由に配置でき、取り付け・取り外しは手で簡単に行えます。『DIY.M』の遮音性能、音響は展示のあるヤマハ楽器特約店で試せるので、ぜひ一度体験いただきたいです」(生澤さん)
「DIY.M」の開発には、学生時代に楽器を演奏していたのに、社会に出てから一定数の人が演奏環境の問題で楽器をやめてしまう現状を変えたいという思いが根底にありました。
「身近に練習できる場所がないために、楽器から離れてしまうのは非常にもったいないと感じています。『DIY.M』で自宅に演奏環境をつくることで、一人でも多くの方が演奏を続けるための役に立てたらいいですね」(栗原さん)
防音室がぐっと身近になる「DIY.M」。
ヤマハのサイトでは、組み立て方を動画でご紹介しています。楽器をもっと練習したい人も、久しぶりに再開したい人も、ぜひチェックしてみてください。
防音性能を必要最低限とすることで、低コストと軽量化を実現した、ユーザー組立型の1人用簡易防音室。
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文/ 武田京子
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