Web音遊人(みゅーじん)

こうしてわたしは「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました

前回、この話を書こうと思っていたら、自分自身の音楽的バックボーンを書いているうちに文字数が尽きてしまった。

ともかく、最近はレッスンで間違えても気にならなくなった。というか、気にしていたら先に進めないという境地に達したのである。
つまり、音楽というのは時間芸術とも言われていたと思うが、時間経過と共に、楽曲はどんどん先に進んでいってしまう。通常のレッスンでは録音されたバック演奏を使って、使用楽器はアルトサクソフォンだから、自分自身は主旋律を演奏することになる。

そのとき、僕は生来、緊張してしまうタイプなので、音が出せないと、そこで演奏が止まってしまったり、ドミソ、と吹かなければならないところを、ドォと長くなってしまうとバック演奏とずれてしまったりした。そうすると、もう次のフレーズを吹かなければならないのに、ミソ、と続けようとするから、ますますずれてしまうのである。
また、指がこんがらかって、譜面通りのフレーズが吹けないときもある。そんなときにもう一度、吹こうとしたりするから、もちろんバック演奏とずれてしまう。それでは、どうしたらいいか。

もちろん、しっかりと予習復習して、完全にバック演奏と同じテンポで吹ければ、それにこしたことはないだろう。
しかし、なかなか、そこが上手く吹けないのだ。
ごく最近のことだが、ある意味で、開き直ればいいじゃないか、と思うようになった。つまり、出来ない部分は飛ばせばいいと。これは余り褒められたことではないのかもしれない。でも、大切なのは自分が楽曲の中で、どこにいるかということだろう。
バック演奏はどんどん進むので、出来ないフレーズでもたもたしたり、もう一度吹いたりしている暇はないのである。だから、どんどん先に進むバックの演奏にそって、常に共にあることのほうが大切なのではないかと、最近では思っている。

間違えると、講師に止められるのではないかと戦々恐々するものだが、そういうことはごく初期に限られると思う。
どうも上手く説明できないのだが、最近は演奏それ自体が楽しくてしようがない、という心境に達したというのが本当のところでしょうか。

こうしてわたしは、「演奏が楽しくてしょうがない」 という心境になりました
CDショップでは音楽が流れています。初めて聴く曲も多いのですが、そこで気に入り、やがて愛聴するようになることはよくあります。先日も御茶ノ水のCDショップをのぞいていたら「この曲、誰だろ?」と一瞬立ち止まるほど、いい感じのスタンダードっぽい曲が流れました。バリトンサクソフォンが印象的です。自分が知らないだけで、著名なミュージシャンかもしれません。
でも、ここは恥をしのんで店員さんに聞いてみよう。そしたら、ジョアン・チャモロというスペインのジャズミュージシャンでした。ベースも、テナーサクソフォンもこなし、またスペインの音大ジャズ科の教授でもあるといいます。その教え子の一人が、トランぺッター&ジャズシンガーのアンドレア・モティス。いま売り出し中のミュージシャンです。
2017年、この師弟がクインテットで来日したと知りましたが、時すでに遅し。次回の来日を楽しみにしつつ、彼らのCDを聴く毎日です。

■山口正介〔やまぐち・しょうすけ〕

作家。映画評論家。1950年生まれ。桐朋学園芸術科演劇コース卒業。劇団の舞台演出を経て、小説、エッセイなどの文筆の分野へ。主な著書に『正太郎の粋 瞳の洒脱』『ぼくの父はこうして死んだ』『江分利満家の崩壊』など。現在、『山口瞳 電子全集』(小学館)の解説を執筆中。2006年からヤマハ大人の音楽レッスンに通いはじめ、アルトサクソフォンのレッスンに励んでいる。

 

特集

今月の音遊人

今月の音遊人:石川さゆりさん「誰もが“音遊人”であってほしいですし、音楽を自由に遊べる日々や生活環境であればいいなと思います」

7736views

音楽ライターの眼

早熟の天才ギタリスト、ティボー・ガルシアのアランフェス協奏曲

9345views

reface

楽器探訪 Anothertake

個性が異なる4機種の特徴、その楽しみ方とは?

7910views

日ごろからできるピアノのお手入れ

楽器のあれこれQ&A

日ごろからできるピアノのお手入れ

65825views

おとなの楽器練習記:岩崎洵奈

おとなの楽器練習記

【動画公開中】将来を嘱望される実力派ピアニスト、岩崎洵奈がアルトサクソフォンに初挑戦!

11810views

トーマス・ルービッツ

オトノ仕事人

アーティストに寄り添い、ともに楽器の開発やカスタマイズを行うスペシャリスト/金管楽器マイスターの仕事

1991views

札幌コンサートホールKitara - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

あたたかみのあるデザインと音響を両立した、北海道を代表する音楽の殿堂/札幌コンサートホールKitara 大ホール

18289views

こどもと楽しむMusicナビ

“アートなイキモノ”に触れるオーケストラ・コンサート&ワークショップ/子どもたちと芸術家の出あう街

7055views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

23460views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:仕事もバンドも、常に真剣勝負!

9819views

山口正介さん

パイドパイパー・ダイアリー

「自転車を漕ぐように」。これが長時間の演奏に耐える秘訣らしい

6265views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10371views

桑原あい

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若きジャズピアニスト桑原あいがバイオリンの体験レッスンに挑戦!

15649views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

専門家の解説と楽器の音色が楽しめるガイドツアー

8628views

クラシック名曲 ポップにシン・発見(Phase6)

音楽ライターの眼

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase6)ロドリーゴ「アランフエス協奏曲」、マイルス・デイヴィスにはないスペインの明るさ

1444views

オペラ劇場の音楽スタッフの仕事 - Web音遊人

オトノ仕事人

舞台上の小さなボックスから指揮者や歌手に大きな安心を届ける/オペラ劇場の音楽スタッフの仕事(後編)

13990views

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

われら音遊人

われら音遊人:音楽仲間の夫婦2組で結成、深い絆が奏でるハーモニー

7323views

楽器探訪 Anothertake

存在感がありながら他の楽器となじむシンフォニックなサウンドが光る、Xeno(ゼノ)トロンボーンの最上位モデル

5666views

ホール自慢を聞きましょう

地域に愛される豊かな音楽体験の場として京葉エリアに誕生した室内楽ホール/浦安音楽ホール

10779views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.7

パイドパイパー・ダイアリー

最初のレッスンで学ぶ、あれこれについて

4806views

ピアノやエレクトーンを本番で演奏する時の靴選び

楽器のあれこれQ&A

ピアノやエレクトーンを本番で演奏する時の靴選び

47261views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

3294views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

30890views