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俳優として言葉に魂を宿す一方、声という音を奏でる新たな表現を拓く/鶴田真由インタビュー
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2023.6.15
tagged: インタビュー, 舞台, 鶴田真由, haruka nakamura
子どものころにピアノを10年ほど習い、学校の合唱コンクールで伴奏することもあったという鶴田真由。俳優として、さらに朗読やナレーションで数えきれない声を発してきた彼女にとっては、言葉も音楽だ。そしていま、声という音を奏でる新たな表現に挑んでいる。
「言葉を音として捉え、何かを表現したい」。近年、そんな気持ちが強くなってきたと語る鶴田。さまざまなアーティストとジャンルを超えた活動を積極的に行ってきた。
2021年に開催された「山口ゆめ回廊博覧会」のアート・プロジェクトでは、音楽家haruka nakamuraとタッグを組み、ピアノと朗読による映像作品を制作。そして、2023年2月には彼とのコラボレーションアルバム『archē(アルケ)』を配信リリースし、話題を集めた。
アルバムに収録されている12曲には、鶴田が書き下ろした12篇の詩が収められている。haruka nakamuraの親密なピアノと、深く静かな熱量を帯びた鶴田の朗読が共鳴するセッションは、どちらが主ということもなく、音楽と言葉の単なるコラボレーションでもなく、音と音とが呼応し、立体感あふれる壮大な物語を紡いでいく。始まりや起源を意味するタイトルの『archē』のように、あたかも世界の創造に立ち会う感覚に陥る作品だ。
「相性がいいと思いました。私の声質とharukaさんが奏でる音の相性もそうですし、言葉で説明しなくてもパッとできる感じもそう。おそらく、価値観が似ているのでしょうね」
世界中に配信されたその音は海を越え、リスナーたちの心を動かした。
「日本語がわからない多くの人々に聴いてもらえたことで、やはり言葉と音には境界線はなく、言葉も音楽なのだということを改めて感じました」
もっと自由に声という音を奏でたいという彼女は今、インドのラーガと向き合っている。ラーガとはインド古典音楽の旋法。旋法とは簡単に言えば、音の配列のことだ。音階よりもはるか以前から存在していた考え方で、比較的知られているのは教会旋法だろうか。それぞれ独特の響きを持ち、ラーガもまたしかりだ。
「ラーガの理論は難しすぎてきちんと理解するのは時間がかかりますし、まだ音が取れなくて苦しんでいるのですが、音階ではない世界に入り込むのが面白いですね。その向こう側に何があるのか。音を通して世界に触れることに今、興味があるんです。音の秘儀のようなものがラーガにはあって、神秘を垣間見ている感じがします」
俳優としても無数の言葉に魂を宿してきた鶴田。2023年7月からは、劇団「ONEOR8」率いる田村孝裕 作・演出の舞台『チノハテ』が始まる。海外で暮らす怪しい日本人家族に危機が訪れ、究極の状態に追い込まれるというストーリー。“チノハテ”で、彼らは何を想うのだろう。鶴田は、非情な母親役を演じる。
「これまでも田村さん演出の作品に出演させていただいたことがありますが、彼が書く作品は初めてになります。彼の作品には必ず真ん中に愛があるんです。私は、そこがすごく好きです。今回も楽しみです」
舞台や映画、テレビでの芝居、そしてナレーションや朗読……。フィールドは違えども、鶴田の言葉はいつも真っすぐに心に響いてくる。それは、彼女が言葉や声という音に内在する力を信じ、真摯に向き合って表現しているからではないだろうか。
期間:2023年7月6日(木)〜7月16日(日)
会場:赤坂RED/THEATER(東京・赤坂)
キャスト:鶴田真由、松島庄汰、池岡亮介、竹内夢、浜谷康幸、寺十吾、依田啓嗣
企画・製作:Nana Produce
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文/ 福田素子
photo/ 後藤泰宏
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