Web音遊人(みゅーじん)

マイケル・コリンズ

【優待チケット】極上の可変室内楽アンサンブル、ウィグモア・ソロイスツが日本初のコンサートを開催/マイケル・コリンズ インタビュー

イギリス生まれのクラリネットの名手、マイケル・コリンズ。ソリスト、指揮者としても活躍するが、特に情熱を注いでいるのが室内楽奏者としての活動だ。2020年にはイギリスの由緒あるウィグモア・ホールとのコラボレーションにより、可変室内楽アンサンブルであるウィグモア・ソロイスツを創設。バイオリン奏者のイザベル・ファン・クーレンとともに中心メンバーを務め、時代も編成も多様なレパートリーを取り上げる。
2023年秋、ウィグモア・ソロイスツが初めての日本公演を実施する。コリンズ、クーレンに、浜松国際ピアノコンクールで優勝したピアニスト、ジャン・チャクムルを加え、札幌と東京の舞台に立つ。

ウィグモア・ホールの名を冠した特別なアンサンブルの結成

コリンズは長らく、ソリスト兼室内楽奏者を集めた特別なアンサンブルを結成したいという考えを温め続けていた。あるとき、自身が長く舞台に立ち、親しんできたウィグモア・ホールの名を冠したグループはどうかという考えに至ったという。しかし、ホールのディレクターに話を持ちかけるにあたっては“とても緊張した”と振り返る。
「おそらく、“いい考えだけれど、さすがに無理です。ウィグモアは世界が知る象徴的な名前ですよ”と断られると思っていました。だから、すごく注意深くプレゼンをして……すると、あっさり賛同を得られたのです。その後、すぐにパンデミックが起きてなかなか活動できませんでしたが、ようやく始動するといくつもの録音をリリースでき、あっという間にグループの名も確立され、世界から招かれるようになりました。日本の皆さんにも私たちの音楽をご紹介できて嬉しいです」

情熱あふれるバイオリン奏者、ユニークな若手ピアニストとの競演

今回の公演では、クラリネットとバイオリンを、またはクラリネットとビオラやピアノを組み合わせた作品が並ぶ。
「各プレーヤーが大きな役割を果たすショーケースのようなプログラムです。ベートーヴェンの『バイオリン・ソナタ《春》』と、モーツァルトのクラリネット、ビオラ、ピアノによる『ケーゲルシュタット・トリオ』が一緒に入れられるのは、イザベルがふたつの楽器に優れた奏者だからこそ。彼女はアンサンブルへの強い情熱を持つ音楽家です。
またウィグモア・ソロイスツでは、レパートリーに合わせてピアニストを招きますが、チャクムルとは、ロンドンですでに何度かリハーサルをしました。私は音楽でユニークなことを話そうとする演奏家が好きで、彼からはそれを感じます。火花散る演奏になると思います」

イザベル・ファン・クーレン、ジャン・チャクムル

(写真左)イザベル・ファン・クーレン(写真右)ジャン・チャクムル

『ケーゲルシュタット・トリオ』は、さかのぼること約40年、コリンズとクーレンが初共演した際のレパートリーでもあるという。
「モーツァルトの最も美しい作品のひとつです。ケーゲルシュタットとは、英語でスキットル(ボウリングの元となった遊び)という意味。友人でクラリネットの名手、アントン・シュタードラーとスキットルをプレイしていたときにインスピレーションを得て書いたといわれています。明るさと暗さが入り混じった、とても深く魅力的な作品です」
また、コリンズはモーツァルトの名手としても知られる。
「モーツァルトは、当時まだ新しい楽器だったクラリネットを初めてしっかりと活用し、シュタードラーの助言を得てレパートリーを発展させました。シュタードラーが楽器製作者と開発したバセット・クラリネットのために協奏曲を書いています。しかし彼ら亡き後は200年近く、この楽器も忘れ去られていました。私は16歳でBBCヤング・ミュージシャン・オブ・ザ・イヤーコンペティションに優勝して演奏活動を始めたのですが、当時モーツァルトの協奏曲に取り組んでいたら、先生からバセット・クラリネットを勉強すべきだと言われました。しかしその頃、この楽器を製造しているメーカーはなく、注文して作ってもらう必要がありました。私はこの楽器で世界をまわった最初のひとりだと思います。つまりバセット・クラリネットが思い出されたのは、わずか40年ほど前なのです」

“レーダー”を使ったやりとりで、その場で音楽が生まれるステージに

優れた奏者の存在が、その楽器のレパートリーを充実させることは、当時も今も変わらない。ウィグモア・ソロイスツでは、各メンバーが新作に積極的に関わることをポリシーとしている。
「新作も200年後には古典になります。我々はそれを生み出し続ける文化を継承しなければなりません。新作には、強い個性があるものも、そうではないものもありますが、一部の強い作品は解釈に限界がありません。そういうものこそ古典になっていくのです」
ときには楽譜が届くのが本番1週間前になることもあるので、メンバーには“開かれた心、知性、すばやさ”が求められる。
「すばやさといっても、速いパッセージの演奏技術の話ではありません。複雑なリズムやハーモニーを瞬時に把握する能力、ときに10人以上になるアンサンブルでお互いを聴き、即座に反応する能力のことです。
優れた室内楽奏者にとって重要な言葉があります。それは“レーダー”──目と耳で相手に反応する能力です。
ソリストになるのはある意味簡単で、自己中心的でも務まります。協奏曲でも、オーケストラの前に出て派手に奏でれば聴衆は賞賛するでしょう。でも、本当に意味があるのは、音楽家仲間からの賞賛なのです。その意識があれば、ソロを演奏するときのスタンスも変わります」
彼が室内楽を愛するのは、そんな“レーダー”を使った仲間とのやりとりができるからであり、その日だけの音楽が生まれることが嬉しいから。
「ウィグモア・ソロイスツは、ひとり一人が信じられないほどの強さを持っています。全員同意しないことがあっても、お互いの強さを尊重しているので悪いムードにはなりませんし、必ず良い答えが見つかります。ただ、いざ本番になると、うまくいくこともあれば、そうではないこともある。でもいいんです。“Tomorrow is another day(明日は明日の風が吹く)”という言葉がありますよね。何が起きるか把握するため全てを計算するより、その場で音楽が生まれるステージを私は望みます。そうでなければ、とても退屈です」

マイケル・コリンズ

ヤマハホールには4度目の登場となる。
「私は木管楽器奏者ですから、ヤマハホールは木材が話しかけてくれる感触があって心地よいです。ウィグモア・ホールも木のホールで温かい響きがしますが、ヤマハホールはその現代版。音の周りに自然なオーラが生まれ、音をいっぱいに満たすことも、柔らかく吹くこともできます。特に私はヤマハの楽器を使っていますから相性も抜群、お互いに補完しあってくれます」
何千回演奏した曲からも、常に新しいものを見つけたい。その思いと、共演者、ホールからのインスピレーションをエネルギーに、この日だけの音楽を届けてくれるだろう。

■珠玉のリサイタル&室内楽 Wigmore Soloists Concert

日時:2023年9月4日(月)19:00開演(18:30開場)
会場:ふきのとうホール(札幌市中央区)
価格:一般4,000円 学生3,000円(全席自由・税込)
ふきのとうホールの詳細はこちら

日時:2023年9月7日(木)19:00開演(18:30開場)
会場:ヤマハホール(東京都中央区)
価格:一般4,500円 学生3,000円(全席指定・税込)
ヤマハホール公演詳細はこちら

出演:マイケル・コリンズ(クラリネット)、イザベル・ファン・クーレン(バイオリン)、ジャン・チャクムル(ピアノ)
プログラム:L.v.ベートーヴェン/バイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 「春」 Op.24、A.I.ハチャトゥリアン/バイオリン、クラリネットとピアノのための三重奏曲 ト短調、F.プーランク/クラリネット・ソナタ、M.ブルッフ/8つの小品 Op.83より 第5、6、7、8番、W.A.モーツァルト/ピアノ、クラリネットとビオラのための三重奏曲 変ホ長調 「ケーゲルシュタット」 K.498

■優待チケットの特別販売

優待チケットを各公演20枚ご用意いたしました。
ご希望の方は、下記「応募はこちら」ボタンからご応募ください。
優待価格:一般3,500円 学生2,500円(おひとり様2枚まで)
※ご応募の際は、ヤマハミュージックメンバーズの会員登録(登録無料)が必要です。

ふきのとうホールの応募はこちら
2023年8月27日(日)23:59まで
ヤマハホールの応募はこちら
2023年8月29日(火)23:59まで

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