今月の音遊人
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今月の音遊人:児玉隼人さん「音ひとつで感動させられるプレーヤーになれるように日々練習しています」
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2024.11.1
5歳でコルネットを手にしてから、わずか10年で若きトッププレーヤーとして人気を集める児玉隼人さん。「僕の心の拠りどころ」という音楽や演奏に対する素直な思いをうかがいました。
小学3年生くらいまでは、トランペットの巨匠と呼ばれるモーリス・アンドレばかりを聴いていました。小さいころから「彼の演奏しか聴かない」というくらい大好きで。その中でもハイドンの『トランペット協奏曲』を毎日聴きながら、いつか自分も吹きたいなと思っていました。もう1曲は、カナディアン・ブラス(金管五重奏団)のパッヘルベルの『カノン』です。この2曲は、今でも飽きることなく聴き続けています。
最近はジャズやJ-POPも聴くようになりましたが、もともとオーケストラ曲が大好きなので、クラシックを中心にマーラーやチャイコフスキーを聴くことが多いです。
また、誕生日にレコードプレーヤーをプレゼントしてもらったので、レコードでクリフォード・ブラウンなどをよく聴いています。レコードは見ているだけでも嬉しくなるし、手間をかけて大切に聴く感じがすごくいいですね。盤に針を落とした時の、かすかな「カサカサ」というような音にもグッときます。
「音楽」は、今の僕にとって何よりの楽しみです。楽しいからあっという間に時間が過ぎるし、音楽に触れている時がいちばん自分らしくいられます。嬉しい時や悲しい時、音楽がそばにあることでもっと幸せに感じたり勇気づけられたりするので、心の拠りどころなのかもしれません。
「音」は、こだわりをもって大切にしているものです。音ひとつで感動させられるプレーヤーになれるように日々練習をしています。特にオーケストラでのトランペット奏者はメロディーを吹くことが少なく、一音しか出さないことも多いのですが、その一音でこれだけいろいろなことを伝えられるのかと尊敬と憧れの存在です。
ソロは自分だけの世界を作ることができますが、誰かと一緒に演奏することもやっぱり楽しいです。他の人と一緒だからこそ今までにないアイデアが生まれたり、新しい発見ができたりする。これはアンサンブルの魅力のひとつだと思います。
考えるとたくさん浮かんできて……1人目は、指揮者のカルロス・クライバーです。指揮のレパートリーはそれほど多くないんですが、これほどオーケストラの音を操っている、音楽で遊んでいる人はいないんじゃないかなと。コンサート映像を観ると、オーケストラのメンバーたちが「クライバー先生!」って、まるで子どもみたいに指揮に集中しているのがわかるんです。音を自由に操りながらみんなの気持ちをひとつにする、そんな指揮者だと思います。
あとは、ピアニストの角野隼斗さんや藤田真央さん。演奏する曲をとことん理解したうえで自由に遊んで、おふたりそれぞれの魅力を音で伝えてくれる、そんな印象です。
この方たちは、聴いている人やお客さんを自分の世界に引き込んで、一緒に遊んでいるように思います。クラシックのルールを尊重しつつ遊びを感じさせるってすごいことですよね。僕もそこを目指して頑張ります。
常によかったと思っていますし、お客さんの前で演奏して、喜んでくださることが本当に幸せです。特に、コンサートで観客の皆さんが演奏に集中してくれている空間が大好きで、あの空気感はライブでしか味わえないもの。物音ひとつ立てずに、僕の演奏を集中して聴いてくれている、こんな幸せなことはありません。練習とは比べ物にならないくらい本番が楽しいです(笑)。
以前よりは本番に対する緊張感が減ってきた気がします。もちろん今でも緊張はするんですが「楽しい!」という気持ちのほうが勝ってきたというか。少し前までは「コンクールでいい成績を収める、自分のための演奏」という側面が強かったのかもしれません。けれど、いろいろなコンサートで演奏する機会が増えて、「聴いてくれる人に喜んでもらえる演奏」になってきたのだと思います。そこを意識するようになってから、お客さんの反応や客席との対話が一層楽しみになってきました。僕の演奏を聴いてもらえることが、何よりの励みになっています。
児玉隼人〔こだま・はやと〕
2009年北海道釧路市生まれ。2023年から拠点を関東に移して活動中。5歳のクリスマスにプレゼントされたコルネットがきっかけとなり、9歳のころから本格的にトランペットを始める。10歳以降に出場したコンクールではすべて1位及び最高位を受賞。2022年にヤマハホールでデビューリサイタルを開催して以来、日本各地でソロリサイタルを開催。また、東京フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、札幌交響楽団、群馬交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団、東京佼成ウインドオーケストラなどと共演。トランペットを松田次史、辻本憲一の両氏に師事。そのほか著名な奏者のマスタークラスを多数受講。今年2024年8月には日本管打楽器コンクール トランペット部門にて念願の優勝、全部門での史上最年少を記録した。
オフィシャルサイト
文/ 高内優
photo/ 坂本ようこ
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tagged: トランペット, インタビュー, 今月の音遊人, 児玉隼人
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