Web音遊人(みゅーじん)

Yamaha Grand Concert

クラシックギターのポテンシャルを最大限に引き出す4人の名手によるコンサート「Yamaha Grand Concert」/鈴木大介インタビュー

ヤマハのクラシックギター「GRAND CONCERT CUSTOM(GCシリーズ)」の名を冠したコンサートが2023年11月12日(日)、ヤマハホールで開催される。ヤマハが1960年代から研究開発を続けてきたGCシリーズは、世界のトップギタリストから絶大なる信頼を寄せられる存在。今回は、このGCシリーズをはじめヤマハのクラシックギターを愛用する鈴木大介、沖仁、ジュディカエル・ペロワ、樋浦靖晃が一堂に集うスペシャルな機会となる。そこで鈴木に、GCシリーズの魅力や、コンサートの聴きどころを語ってもらった。

ヤマハのクラシックギターの魅力

「GCシリーズのクラシックギターは、僕が子どもの頃からありました。1970〜80年代に荘村清志さんが講師として出演していたNHK教育テレビ『ギターをひこう』のテキストにはGCシリーズの広告が載っていて、憧れのギターでしたね」
鈴木は現在、GC82というモデルを使用しているが、その背景にはギター設計者との出会いがあったという。
「1998年ぐらいにはじめてヤマハの工場に行って、それまでの試作品をすべて見せていただいたことがありました。100本以上も並んでいるギターのなかで、ぱっと見て良さそうだなと思って弾いたのが、何木明男さんという方が設計した試作品で。楽器に関する僕の直感はだいたい当たるのですが、予想どおり素晴らしい楽器でした。何木さんはバーデン・パウエルやジョアン・ジルベルトのギターを作ったすごい設計者なのですが、その彼が2012年に生み出したのが、GC82Sと82Cというモデルです」
現代におけるクラシックギターは、19世紀のスペインのギター製作家、アントニオ・デ・トーレスが作った楽器が原型となっている。トーレスのスタイルや技術は、その影響を受けたスペインの製作家たちに受け継がれ、世界へ広まっていった。ヤマハは1966年に手工ギターの開発に着手して以来、トーレスを祖とするスペインの伝統的な技術を継承した楽器を製作してきた。だが、ヤマハのクラシックギターの魅力はそれだけにとどまらないと鈴木は語る。
「このトーレスを研究し、伝統的なスパニッシュギターを作ったヘルマン・ハウザー1世という製作家がいたのですが、何木さんのギターはハウザー1世、サントス・エルナンデス、マヌエル・ラミレスのギターを参考に作られたそうです。このようにスペインの伝統をしっかり継承しながら、同時に、時代とともに進化していく最新の技術が取り入れられているところが、ヤマハのクラシックギターの最大の魅力ではないでしょうか。ギターはまだ歴史的に発展途上にある楽器で、年を追うごとに操作性が上がり、より鳴りやすくなっています。自分の感じたままに反応してくれる運動性、機能性を備えた楽器はありがたい。ヤマハのギターは伝統的な名器ならではの良さを保ちつつ、それを叶えてくれる存在なんです」

個性豊かなギタリストたちが登場する

鈴木いわく、日本は団塊の世代を中心にクラシックギターの愛好者が多く、独自の発展を遂げてきたがゆえに、日本のギターやその演奏スタイルは、現在の世界の潮流と離れている部分があるとのこと。そのギャップを埋め、最前線で活躍するアーティストの要求にも応えられるのが、ヤマハのクラシックギターなのだそうだ。今回のコンサートには、そんなヤマハのクラシックギターのポテンシャルを最大限に引き出す個性豊かな名手たちが集結する。
「ジュディカエル・ペロワさんは、フランスの若い世代のギタリストたちの先駆者的存在。彼が出てきてから、ティボー・ガルシアやティボー・コーヴァンなど、フランスから超人のようなギタリストが次々と登場するようになりました。樋浦靖晃さんはギタリストでありながら、ご自身で国際ギターフェスティバルを主催し、ヨーロッパの最先端のギタリストたちを日本に紹介してきた立役者でもあります。そして沖仁さんは、日本人としてフラメンコギターを演奏することの意義を問い続け、ご自身のオリジナルの音楽として昇華させた素晴らしいギタリストです」
コンサートでは、4人がそれぞれソロで演奏し、最後に全員でボッケリーニの『序曲とファンダンゴ』を演奏するとのこと。ソロのプログラムは今後、順次発表となる。
「僕は武満徹さんの作品を中心に演奏する予定ですが、それはやはり日本人としてのアイデンティティを考えての選曲です。僕らクラシックの演奏家も沖さんと同じく、海外の作品を演奏しているわけですから、その意義を考えますよね。今回は日本の楽器メーカーが作ったギターということで、日本の作曲家を選んでみました。樋浦さんはトランスアコースティックギターで坂本龍一さんの『Merry Christmas Mr.Lawrence』を演奏なさるそうですし、沖さんはご自身のオリジナルですので、偶然ですが日本人が日本人の作品を演奏するプログラムになりました」
ギタリストと楽器の固い絆を感じられるコンサート、クラシックギターファンは必聴だ。

■Yamaha Grand Concert
ヤマハクラシックギター スペシャルコンサート

日時:2023年11月12日(日)17:00開演(16:30開場)
会場:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14)
料金:6,000円(税込・全席指定)
出演:鈴木大介、沖仁、樋浦靖晃、ジュディカエル・ペロワ
詳細はこちら

特集

松井秀太郎

今月の音遊人

今月の音遊人:松井秀太郎さん「言葉にできない感情や想いがあっても、音楽が関わることで向き合える」

2700views

音楽ライターの眼

連載46[ジャズ事始め]ジャズの枢軸を動かさんとするアジアン・チームはどのように膨張していったのか

1517views

REVSTAR

楽器探訪 Anothertake

いまの時代に鳴るギターを目指し、音もデザインも進化したエレキギターREVSTAR

7216views

ヴェノーヴァ

楽器のあれこれQ&A

気軽に始められる新しい管楽器 Venova™(ヴェノーヴァ)の魅力

2438views

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

9352views

オトノ仕事人

子ども向けコンサートを企画し、音楽が好きな子どもを増やす/コンサートプロデューサーの仕事

8598views

グランツたけた

ホール自慢を聞きましょう

美しい歌声の響くホールで、瀧廉太郎愛にあふれる街が新しい時代を創造/グランツたけた(竹田市総合文化ホール)

7323views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

14299views

ギター文化館

楽器博物館探訪

19世紀スペインの至宝級ギターを所蔵する「ギター文化館」

15116views

ONLYesterday

われら音遊人

われら音遊人:愛するカーペンターズをプレイヤーとして再現

874views

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい 山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

『チュニジアの夜』は相当に難しいが、次回のレッスンが待ち遠しい

5618views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10311views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

9908views

民音音楽博物館

楽器博物館探訪

16~19世紀を代表する名器の音色が生演奏で聴ける!

11552views

音楽ライターの眼

連載18[多様性とジャズ]政治的なテーマを直截に音楽へ注ぎ込んだミンガスの遺志

1886views

小林洋平

オトノ仕事人

感情や事象を音楽で描写し、映画の世界へと観る人を引き込む/フィルムコンポーザーの仕事

2180views

5 Gravities

われら音遊人

われら音遊人:5つの個性が引き付け合い、多様な音楽性とグルーヴを生み出す

1980views

最新の音響解析技術で低音域のパワフルな音量と響きを実現

楽器探訪 Anothertake

アコースティックギター専用の音響解析技術で低音域のパワフルな音量と響きを実現

10120views

人が集まり発信する交流の場として、地域活性化の原動力に/いわき芸術文化交流館アリオス

ホール自慢を聞きましょう

おでかけ?たんけん?ホール独自のプランで人々の厚い信頼を獲得/いわき芸術文化交流館アリオス

8001views

パイドパイパー・ダイアリー

パイドパイパー・ダイアリー

泣いているのはどっちだ!?サクソフォン、それとも自分?

6056views

ヴェノーヴァ

楽器のあれこれQ&A

気軽に始められる新しい管楽器 Venova™(ヴェノーヴァ)の魅力

2438views

日生劇場ファミリーフェスティヴァル

こどもと楽しむMusicナビ

夏休みは、ダンス×人形劇やミュージカルなど心躍る舞台にドキドキ、ワクワクしよう!/日生劇場ファミリーフェスティヴァル2022

3176views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

10311views