今月の音遊人
今月の音遊人:小林愛実さん「理想の音を追い求め、一音一音紡いでいます」
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「習うは一生」を胸に技術を磨き続ける、管弦打楽器技術者の取り組み
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2023.10.13
tagged: お客様コミュニケーションセンター, カスタマーサポート通信
長い歴史のなかで、世代を超えて連綿と受け継がれてきたヤマハのものづくりDNA。その本質は、アフターサービスにもしっかりと息づいています。
今回は、管弦打楽器の修理を担当する「カスタマーサポート部・管弦打楽器技術サービス課」の若手技術社員の技術向上への取り組みをご紹介。入社2年目の小桐秀介さんと田中楓恋さん、そして彼らの教育担当を務める角田紗弥子さんと山形紫穂さんにお話を聞きました。
ヤマハの管打楽器のメンテナンスやリペアの窓口となるのは、ヤマハ特約店や購入店。お店に在籍する修理技術者が、お客様の大切な楽器を扱っています。「管弦打楽器技術サービス課」はそうした技術者をサポートするとともに、お店では困難な修理作業を実施。お店を通して全国から送られてくる多種多様な管打楽器の修理を請け負っています。
それだけにスペシャリストとしての高い技術と知識が求められますが、その維持・向上のためにも重要なのが、若手の技術社員の育成です。
そのための取り組みの大きな柱となっているが実習。ヤマハは楽器の製造から販売、アフターサービスまでを行っていますが、職種や担当製品にかかわらず、新入社員は研修時に何らかの工場で生産工程を経験します。その後、「管弦打楽器技術サービス課」に配属された技術社員は数か月間、管楽器の生産工程の実習を行うことになります。
小桐さんと田中さんは、新入社員研修において掛川工場でグランドピアノの生産工程を経験。その後、2か月間、管楽器の生産工程の実習に参加しました。
管弦打楽器技術サービス課が行う修理は、タンポなど消耗品の交換からバランス調整、金管楽器のへこみ直しまで多様です。なかでも、修理依頼の割合がさほど多くないために経験値を積むのが難しく、かつ高度な技術を必要とするのが、はんだ付けとバフ研磨。いずれも火を用いたり、回転する研磨機に楽器を当てて磨いたりと危険が伴う作業でもあります。実習では生産工程におけるこのふたつの作業を重点的に行い、スキルを身につけます。
「管のなかにもう1本管が入っているなど、完成品からは見えない部分を実際に目で見ることで新たな視点を持つことができました。今後、修理に活かしていきたいと思います」と小桐さん。
田中さんは、バフ研磨の実習が強く印象に残っているそう。
「最初は研磨機に楽器を当てることが怖かったのですが、ひるんで力を弱くしてしまうときれいに磨けません。実習で基礎を学んだことで、今後もっといろいろな経験を積んでいく必要があると実感しました。実習前とは考え方が変わりました」
オーバーホール修理などは、楽器を可能な限り新品に近づけて最良の状態にする、いわば生産の各工程を部分的に組み合わせたもの。生産工程においては、ひとつの工程に特化したベテランが日々作業にあたっています。自分が目指すべきそうした熟練の技術を目の当たりにすることは、修理をするうえでの大きな収穫となります。
実習が終わり、管弦打楽器技術サービス課に正式に着任した後も、生産工場とのやり取りや技術交流は続きます。6年ほど前、自らも管楽器の生産工程実習を経験した角田さんは、その後の交流についてこう語ります。
「修理作業に困った際、実習時の担当者に相談して解決することもあります。ひとつの工程を熟知したベテランのアドバイスによって、的確な修理工程が確立できたり、ほかの修理技術に応用できたり。ときには生産部門に作業を依頼することもありますが、実習時に培ったつながりでコミュニケーションが円滑に進みます。実習は得難い体験でした」
こうした形での技術者育成は、楽器メーカーであるヤマハならではの特長といえそうです。
さらに、管弦打楽器技術サービス課内でももちろん、先輩から後輩への技術継承が積極的に行われています。
「若手が悩むことは、過去に自分たちや先達も悩んだこと。何でも話せる雰囲気づくりと日ごろからのコミュニケーションを大切に考えています」(角田さん)
現在、若手2人は先輩の指導を受けながら、金管楽器のへこみ直しなど初めての作業にも積極的に取り組み、できることが少しずつ増えていることを日々実感しているといいます。
その先輩である山形さんは、さらに未来を見据えていました。
「若手にはどんどん吸収してもらいたいですし、それを次の世代へとしっかり伝えることでお客様にずっと良い品質を提供し続けることを目指しています」
管弦打楽器技術サービス課で一人前の技術社員になるには、どのぐらいの期間がかかるのでしょうか。その質問に「十数年のキャリアを持つ人ですら、まだまだ未熟と考えています」という答えが返ってきました。
管弦打楽器技術サービス課は、「習うは一生」を胸に、常に修理技術を磨き続けています。
文/ 福田素子
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