今月の音遊人
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新開発の音響システムが表現力のカナメ。管楽器の可能性を広げる「デジタルサックス」
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2021.5.28
tagged: 楽器探訪AnotherTake, デジタルサックス, YDS-150, デジサク
「アコースティックサクソフォンのデジタル化は、以前から企画案は出るものの、なかなか製品化に至っていませんでした。それが今回、サクソフォン設計・生産、電子楽器設計、音響機器生産などの部署を超えてスタッフが連携し、知恵を出しあうことで、ようやく実を結んだといえます」。そう語るのは、デジタルサックス開発担当の宮崎裕さん。
2020年秋に発売以来、高い人気を誇るデジタルサックス「YDS-150」。人気の理由のひとつは、音量調節が可能で、自宅でボリュームを落として吹けること。またサクソフォンと同様の操作性で豊かな音色と響き、吹奏感が得られるところも奏者の支持を得ています。
「一般的なデジタル管楽器は、キイレイアウトや操作法が独自のもので、サックスというよりウインドシンセサイザーであることが多いです。ですがヤマハのデジタルサックスは、サクソフォンと同様のキイレイアウトで、操作法も同じなので、持ち替えがスムーズにいくところが強みです」と、マーケティング担当の玉井洋行さん。
普段サクソフォンを吹いている人が、違和感なく操作できるのに加えて、管楽器初心者でも簡単に音を出せるハードルの低さもデジタルサックスのポイント。「サクソフォンを吹いてみたい」「昔サクソフォンをやっていたけれど、ブランクがあり自信がない」といった人も、手にしたその日から演奏を楽しめます。
デジタルサックスの表現力の要は、新開発の「ベル一体型アコースティック音響システム」。スピーカーだけでなく、管体内部の音響管、ベルが一体となって音が鳴ることで、管楽器らしい豊かな響き、吹奏感を得られます。
「また、サクソフォン(ソプラノ/アルト/テナー/バリトン)の内蔵音は、プロのサクソフォン奏者が一音一音吹いてサンプリングしています。音色の種類によりますが、サクソフォンらしい荒々しさ、ノイズをあえて残しているところも、管楽器らしさにつながっています」(宮崎さん)
ベルは、アコースティックサクソフォンと同じ、イエローブラス製のものが採用されています。
「ベルによって響きが増幅されることでも、管楽器特有の鳴りが生まれます。当初、簡易形のベルにする案もありましたが、長年サクソフォンをつくってきたヤマハとして、“本物のベル”にこだわりました」(宮崎さん)
デジタルの利点を生かした、多彩な機能もポイント。ヘッドホンをつなげば完全に消音でき、夜中でも音量を上げて演奏できるほか、手持ちのスマホとBluetooth®接続すれば、ヘッドホンから音源と演奏音を一緒に鳴らすこともできます。
「楽器とパソコンをUSBケーブルでつなぐと、マイクがなくても演奏音を録音でき、しかも高音質なので、ネット配信や音楽制作に活用できます。また、アプリを使ってソプラノ・アルト・テナー・バリトンを多重録音し、一人でサクソフォン四重奏を表現するといった楽しみ方もあります」(玉井さん)
さらに、無料の専用アプリ「YDS Controller 」を連携させると、楽器の調性や運指のカスタマイズが可能。
「アプリを使って自由に移調(トランスポーズ)できるので、普段アルトを吹いている人がソプラノを吹いたり、フルートやバイオリンの曲を吹いたりもできます。室内楽のチェロのパートを担当するといったことも、デジタルサックスなら簡単にできます」と宮崎さん。
「デジタルサックスは、サクソフォンの表現力を持っていますが、代替の楽器ではありません。使い手である皆さんによって、新しい楽しみ方、表現法が生まれることにデジタルサックスの存在意義があると思っています。ベルにステッカーを貼るといった外見のカスタマイズもありですし、“デジサク”と気軽に呼んで親しんでもらいたいです」(宮崎さん)
デジタルサックスなら、肩の力を抜いて、自由に、気の向くまま管楽器と触れ合えそうです。
吹き込んだ息が楽器の振動となり、あなたの唇、指先、そして心さえも震わせる。アコースティックとデジタルの融合によって生み出された「ベル一体型アコースティック音響システム」が、まるでアコースティック楽器を演奏しているような、オーセンティックで心地よい吹奏感と自然で美しい音の響きを実現しました。
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