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ペット・ショップ・ボーイズのポップへのこだわりを捉えた映画『ペット・ショップ・ボーイズ・ドリームワールド』が限定公開
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2024.1.26
tagged: 音楽ライターの眼, ペット・ショップ・ボーイズ, ペット・ショップ・ボーイズ・ドリームワールド, THE GREATEST HITS LIVE AT THE ROYAL ARENA COPENHAGEN
ポップ・ミュージックを究めて40年。ペット・ショップ・ボーイズのライヴ体感ムービー『ペット・ショップ・ボーイズ・ドリームワールド』が全国の映画館で限定公開される。
1984年に『ウェスト・エンド・ガールズ』がクラブ・シーンから火が付き、一躍トップ・グループに。世界のチャートを総ナメにしてきた彼らが歴代のヒット曲を披露する“DREAMWORLD – THE GREATEST HITS LIVE”ワールド・ツアーは2022年から2023年にかけて行われたが2023年7月7日、デンマークのコペンハーゲン“ロイヤル・アリーナ”公演の全貌を収めたのが本作だ。
約2時間のコンサートをフル収録、曲順通り完全再現。会場の全景を映した後は、単刀直入にショーが幕を上げ、カメラはひたすらグループと1万6千人の大観衆を追っていく。バックステージの模様やインタビューもなく、凝った映像処理もない。
そんなものは必要ないのだ。1曲目『サバービア』から会場はひとつとなり、1986年を知るリアルタイマーもTikTokで知った若いリスナーも立ち上がって声援を送る。一連のシングルは大半が世界各国のチャートにランクインしており、“グレイテスト・ヒッツ”を銘打ったライヴは終わることのないヒット曲のオンパレードだ。続く『キャン・ユー・フォーギヴ・ハー?』『オポチュニティーズ』『ドミノ・ダンシング』『ニューヨーク・シティ・ボーイ』などはいずれも映像から観衆の熱気が伝わってくる。
当代随一のポップ・ソングライターであるニール・テナント(ヴォーカル)とクリス・ロウ(キーボード)のコンビだが、彼らの“ポップ”に対するこだわりには凄まじいものがある。自らが数多くの名曲を書いてきたのに飽き足らず、他アーティストの手による名曲もカヴァー。『ホエア・ザ・ストリート・ハズ・ノー・ネーム/君の瞳に恋してる』『オールウェイズ・オン・マイ・マインド』『ゴー・ウェスト』などをライヴ披露する。それらの曲の彼らによるカヴァー・ヴァージョンも、どれもシングル・ヒットしているのだから手に負えない。
ステージはシンプルなものだが、色彩豊かなライティングやプロジェクション、映像の投影によってヴィジュアル・スペクタクルに仕上げており、2人のミニマルな編成でもステージを平坦にすることがない。初期から彼らのトレードマークのひとつであるかぶり物も最初からフィーチュアされている。
2人編成でスタートするショーだが中盤戦、『レフト・トゥ・マイ・オウン・ディヴァイセズ』からはサポート・メンバーとしてシモン・テリエ(パーカッション、ギター、キーボード、ヴォーカル)、内間くれあ(キーボード、ヴォーカル)、アフリカ・グリーン(パーカッション、ヴォーカル)の3人が登場する。パーカッションはサウンドに肉体的な厚みを加え、また『とどかぬ想い What Have I Done To Deserve This』で内間くれあが聞かせるヴォーカルは、オリジナルでのダスティ・スプリングフィールドのものに決して引けを取らない。
本編ラストの『哀しみの天使 It’s a Sin』、アンコールの『ウエスト・エンド・ガールズ』『ビーイング・ボアリング』まで、この映画は生のライヴ・フィーリングを再現しながら、代替品ではなく、ライヴでは見ることの出来ないディテールを掘り下げていく。
ペット・ショップ・ボーイズは2024年4月にニュー・アルバムを発表、翌5月からヨーロッパ・ツアーを開始する。新曲をステージで聴けるのは嬉しい一方で、“DREAMWORLD”ツアーほどオールタイム・ベストにメーターを振り切った内容は望めないのでは。とはいっても2019年4月の来日公演はグレイテスト・ヒッツに当時の最新作『SUPER』(2018)から4曲を加えたセットリストで思い切り楽しませてくれた。歌って踊って、ポップでちょっと泣ける彼らのライヴをまた体験したくなる。彼らのステージのカタルシスがたっぷり詰まった『ペット・ショップ・ボーイズ・ドリームワールド』だが、同時に新たな欲求を催させる作品でもあるのだ。
なお本作は2024年1月31日(水)、2月4日(日)の2日間のみ全国で劇場公開。東京・TOHOシネマズ 日本橋と大阪・TOHOシネマズ 梅田では1月31日(水)〜2月8日(木)まで特別上映が行われる。
2024年1月31日(水)、2月4日(日)の2日間のみ全国で劇場公開
※東京と大阪は、1月31日(水)~2月8日(木)まで続映
※劇場によりスケジュールが異なる場合があります。詳しくはご鑑賞劇場へお問い合わせください
©️ 2024 Pet Shop Boys Partnership Limited
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山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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文/ 山崎智之
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