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親密かつ緻密な空間で美しく奏でられた、坂本龍一最後のピアノソロコンサート/映画『Ryuichi Sakamoto | Opus』
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2024.2.29
2023年3月に逝去した音楽家、坂本龍一の最初で最後の長編コンサート映画『Ryuichi Sakamoto | Opus』が2024年春に公開される。
第80回ヴェネチア国際映画祭でのワールドプレミア後、山形、釜山、ニューヨーク、ロンドン、東京と世界中の映画祭で上映され、賞賛を浴びてきた注目の作品である。
2014年に中咽頭がん、2021年に直腸がんを公表し、闘病を続けながらも国内外で精力的な活動を展開してきた坂本。本作の撮影は2022年9月、自身が「日本でいちばんいいスタジオ」と評していた東京・渋谷のNHK509スタジオで行われた。用意されたのは1台のピアノ。2000年に坂本のためにカスタムメイドされ、長年コンサートで愛用されてきたヤマハのグランドピアノである。心を通じ合わせたピアノと対峙し、残された力を振り絞るようにして演奏に臨んだという。奏でられたのは、坂本の代名詞ともいえる『Merry Christmas Mr. Lawrence』、初めてピアノソロで演奏されたYMO時代の『Tong Poo』、日記を書くように制作された音楽のスケッチからなる最後のアルバム『12』からの曲など、自身が選び抜いた20曲。その構成からは、ジャンルやボーダーを超えて時代の最先端を駆け抜けてきた軌跡をたどることができる。
本作の監督を務めたのは、映像作家の空音央。事前に渡された演奏リストをもとにストーリーボードを作るなど綿密な準備を重ね、4Kカメラ3台を用意して撮影に臨んだ。こうして作り出された親密かつ緻密な演奏空間で、一音一音に感情を込める坂本の表情や息遣い、人生が刻まれたような手、鍵盤を操る指の繊細かつ大胆な動きなどが美しいモノクローム映像によって克明に記録されている。
かねてヤマハと親交のあった坂本は、2018年音楽情報誌「音遊人」のインタビューに登場し、次のように語っている。
「ピアノを前に美しい響きを探っていたら何時間も経っていることは珍しくありません。今でも技巧よりも音の響きに惹かれますね」
世界的な作曲家であると同時に、ピアニストでもあった坂本。人生の有限性を意識し、余分なものが削ぎ落とされ、心が研ぎ澄まされた巨匠による最後の演奏を劇場で体感し、その響きの美しさを心ゆくまで堪能したい。
なお、ヤマハ銀座店では、愛用したピアノの展示をはじめ、ヤマハとの関係性に焦点を当てたイベント「坂本龍一のピアノ展/Ryuichi Sakamoto and the Piano」を2024年3月13日(水)より開催する。映画とともに、このイベントも楽しんでほしい。
2024年4月26日(金)109シネマズプレミアム新宿先行公開、2024年5月10日(金)全国公開
監督:空音央 音楽・演奏:坂本龍一 撮影監督:ビル・キルスタイン
編集:川上拓也 録音・整音:ZAK 製作:空里香、アルバート・トーレン、増渕愛子、エリック・ニアリ
製作会社:KAB America Inc. /KAB Inc. 配給:ビターズ・エンド
日本/2023/モノクロ/DCP/103分/Atmos &5.1ch
Ryuichi Sakamoto | Opus(X:旧Twitter)
文/ 編集部
photo/ ⓒKAB America Inc. /KAB Inc.
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