Web音遊人(みゅーじん)

CLP-800シリーズ

グランドピアノの演奏体験を全身で感じられる電子ピアノ── クラビノーバ「CLP-800シリーズ」

鍵盤やペダルのタッチ、それによる音のニュアンスの変化、そしてピアノを目の前にしたときのたたずまい。
新たなクラビノーバ「CLP-800シリーズ」はグランドピアノの繊細な演奏をこれまで以上に体感できるほどの進化を遂げた。

タッチ、響き、デザイン、すべてでグランドピアノらしさが感じられる

クラビノーバ CLPシリーズとしては4年ぶりのリニューアルとなる「CLP-800シリーズ」が登場。グランドピアノさながらの演奏体験を目指してどのような進化を遂げたのか、商品企画担当の大西健太さんに話を聞いた。

「グランドピアノの上質な体験を、電子ピアノを通して多くのご家庭に届けたい。では、よりグランドピアノに近づけるにはどうしたらいいか?そもそもグランドピアノらしさとは何か? といった根本的なところからチーム内で意見交換をし、“奏者が意図した表現に応えて多彩で魅力的な音色を奏でられる”“空間を上質な音の響きで満たす”“楽器と向き合ったときにグランドピアノを演奏するのと同じ気持ちで没頭できる”という大きな3つのポイントにまとめました。そのうえで、これらをかなえるにはどのような技術が必要かを、音源、ソフトウェア、鍵盤、デザインなど各セクションの担当者が一緒になって考えていったという流れです」

CLP-800シリーズ

商品企画を担当した大西さん。以前はアコースティックピアノ部門で企画・開発を担当しており、電子ピアノにもその知見が生かされた。

鍵盤とペダルのタッチ感が向上

その結果、よりグランドピアノらしさを感じられる「CLP-800シリーズ」が生まれた。具体的にはどのような部分が新しくなったのだろうか。

「まず鍵盤に関しては、これまで開発されてきた鍵盤をベースに、よりコントロール性を高めていきました。グランドピアノは鍵盤を押すと内部のアクションが動き、ハンマーが弦に当たって音が鳴るわけですが、ピアニストは鍵盤を押した瞬間からハンマーが弦に当たるまで、この一連の動きをイメージしながら、意思を込め続けることでタッチに変化をつけています。このとき指先に感じる荷重の感覚と、返ってくる音がピアニストの意図通りになっていることが大切。鍵盤機構と音源を細かく調整し、グランドピアノのようなタッチと音色変化を再現しています」

ペダルに関しても、踏んだときの荷重をリアルに感じられるグランドタッチ™ペダルが採用されている。「ピアニストはペダルをどれだけ踏み込むかを細かく調整して響きの広がりをコントロールしています。このペダルはグランドピアノのペダルのように、踏み込んだときに重く、離すときに軽く感じるように物理的な工夫を施すことで、ハーフペダルでの細かい調整がしやすくなりました」

この「物理的な工夫」に関しては、さらに興味深い話も。
「クラビノーバは電子ピアノではありますが、このように物理的な工夫も数多く施されています。そしてここがヤマハならではの考え方なのですが、グランドピアノの演奏体験を再現するにあたり、必ずしもグランドピアノの構造をそのまま真似して持ってくることだけが正解ではないのです。柔軟な発想で、グランドピアノの体験を電子ピアノで実現するために最適な方法を生み出すチャレンジを続けています」

グランドピアノのような響きに包まれる音源・音響システム

いっぽうで、デジタルの部分での技術も飛躍的に向上した。特筆すべきは新開発の音源チップだ。
「楽器の音を録音したサンプリング音源を、鍵盤を弾く強さに応じて再生するというのが電子ピアノの基本的な仕組みなのですが、電子ピアノの表現が単調であると言われる理由もそこにありました。グランドピアノでは、同じ大きさの音を弾くにも、鍵盤を押し込むように弾くのと、軽やかに脱力して弾くのとでは音色が違いますよね。また、たとえばリストの『ため息』のように、速いパッセージのなかにメロディが混ざっているような曲を演奏する場合、はっきり出す音と脇役に入る音を弾き分けることができます。こうした奏法による音色の違いを再現するのがグランド・エクスプレッション・モデリングという技術ですが、今回新たに開発された音源チップによりシミュレーションの精度が向上し、これまで以上に繊細で幅広い表現を生み出せるようになりました」

開発にあたってはプロのピアニストから意見をもらったほか、グランドピアノの構造を知り尽くしたプロフェッショナルたちの経験が生かされているとのこと。
「単に性能の良い、すなわち計算処理能力の高い音源チップが入っているから良い音が鳴らせるわけではなく、グランドピアノの表現を再現するためにどういう計算処理をするかが重要なのです」

グランドピアノのような響きを再現する音響システムにおいては、ヤマハのオーディオ機器のノウハウも使われている。
「電子ピアノはスピーカーから音を出しますが、スピーカーには音を一方向にまっすぐ飛ばす性質があります。それに対しグランドピアノは、大きな響板や筐体全体で音を増幅し、空間を響かせる楽器。その響きを再現するため『CLP-800シリーズ』では、スピーカーから出る音を適度に拡散させながら空間に放射するディフューザーやバイディレクショナルホーンという音響部品を開発し搭載することで、楽器全体から音が鳴るグランドピアノのような音場を作っています」

集合住宅や夜間などでは、ヘッドホンをつければ周りへの音の配慮ができる。音量制限機能で最大音量を調節できるので、不意に大きな音を出してしまうといったことで起こる耳への負担が防げる。

そしてデザインもグランドピアノらしさを体現する大きな要素である。
「このサイズのピアノを一から作るなら、どんな形がいいのだろう? というところからデザイナーと考えていきました。椅子に座ったとき、目の前にある楽器がグランドピアノのように感じる要素とは何か。ピアノを演奏するときの気持ちを第一にして考えました」

最後に、「CLP-800シリーズ」をどのような人に届けたいかを尋ねた。
「ピアノの大きな魅力のひとつに、演奏の上達に合わせて次々と新しい表現を発見していけることがありますが、『CLP-800シリーズ』はそんなピアノとしての奥深い魅力を持った楽器に仕上げることができました。
これからピアノ演奏を始める方にも上級者の方にも、深く長く演奏を楽しんでほしいです」

【進化のポイント1】細部まで表現できる鍵盤とペダル
●グランドタッチ™鍵盤/グランドタッチ-エス™鍵盤

グランドピアノを演奏するときにピアニストが指先に感じる荷重を忠実に再現。繊細なタッチの変化を捉えた表現が可能になった。グランドタッチ鍵盤は、グランドタッチ-エス鍵盤よりも支点までの長さを長くとっており、鍵盤奥で弾いたときにもグランドピアノに近いタッチ感で演奏することができる。

●グランドタッチ™ペダル

デザインがグランドピアノのペダルに近いだけではなく、ペダルの踏み込み・踏み戻しの際に足にかかる荷重の感覚をグランドピアノと同じように感じながら操作できるペダル。回転機構の形状や素材・位置の工夫による摩擦の力を利用することで、ペダリング時に適切な深さでコントロールできて、止めたいところで簡単に止めることができる。

【進化のポイント2】グランドピアノのように空間を描き出す音と響き
新開発音源チップで音質向上

新開発の音源チップでは、ハンマーやダンパーの弦への当たり方など、ピアノの内部機構の動きをシミュレーションするアルゴリズムの導入に成功。奏者の意図に応じて、同じ音・同じ音量であっても異なる音色のコントロールが可能になった。また、バーチャル・レゾナンス・モデリングにより、弦の共鳴による複雑な響きの変化も、よりリアルに再現できるようになった。

音に包まれる感覚を再現する新音響システム

グランドピアノを弾いているときのような音の聞こえ方を再現するため、音を拡散するディフューザーやバイディレクショナルホーンを採用。スピーカーを上向きに配置するといった工夫も施されている。また、CLP-885/875にはグランドピアノの音像や音場を再現する音響技術のグランドアコースティックイメージングが採用されている。

グランドピアノの音響を再現するスピーカー構造

高音域、中音域、低音域の3ウェイがステレオで配置された6スピーカーを内蔵。
※CLP-885、875の場合

スピーカーからの音の放射

グランドピアノの音がどのあたりにどのように放射されるのか、どういった成分の音がどこから放射されるのかといったことを解析したうえで、CLP-800シリーズの低・中・高各帯域のスピーカーの配置、向き、音量バランスを最適化した。

CLP-800シリーズ

上記のスピーカーシステムによって響板から空間に行き渡るような奥行きを感じられる音響を実現する。また、楽器を壁際に置いた時にも後方に拡散された音が適度に反射し、奥行きを感じることができる。

【進化のポイント3】優雅なデザイン

ピアノの前に座った瞬間からグランドピアノらしい演奏体験ができるよう、細部までつくり込まれたデザイン。3本の細い脚で支えられ、ずっしり重い筐体が空中に浮いているグランドピアノ。その重量感と浮遊感のバランスを、いかにしてデザインに落とし込むか?といった哲学的とも言える問いへの答えを模索する日々だったという。

CLP-800シリーズ

①譜面台
今回新たに付け根の部分にくぼみを作ることで、楽器としての一体感を感じられるようになった。

②腕木・脚
鍵盤の両脇にある腕木をなだらかな曲線を描くデザインにしたことで、グランドピアノらしさを演出。奏者から見たときの腕木と脚との位置関係もグランドピアノを弾いている時のイメージを再現している。

③妻土台
ピアノの脚を支える妻土台で、下支えのある重量感と適度な浮遊感を演出。こうしたデザインはクラビノーバの機能には直接関係しないが、奏者に無意識のうちに与える印象まで考え抜かれている。

■クラビノーバ CLP-800シリーズ

「Digital Never Felt So Grand」というフレーズのもと、グランドピアノに最も近い家庭用電子ピアノを目指して開発されたクラビノーバの最新シリーズ。新開発の音源チップや音響システム、刷新されたデザインなどにより、奏者がピアノの前に座った瞬間から、演奏し終えて立ち上がるまで、グランドピアノらしい演奏体験が無意識的かつ自然に持続するよう考えられている。
製品サイトはこちら

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