今月の音遊人
今月の音遊人:﨑谷直人さん「突き詰めたその先にこそ“遊び”はあると思います」
3614views
人前でエレクトーンを演奏するのは10年ぶりだという。ブランクに不安はないのかたずねると、「大丈夫か?って自分にツッコんでますよ」。そんな言葉とは裏腹に、その指先は鍵盤の上で滑らかに動き回っていた。
作曲家・編曲家として活躍する小見山優子さんは、あるウェブサイトで日本を代表する10人に選ばれている。そのジャンルはゲーム音楽だ。
2002年から2009年までゲームソフトメーカーのカプコンに在籍。その間、現在も大ヒット中の『モンスターハンター』の制作に関わり、作曲や音楽監修を担当した。ゲームに疎い方は驚くかもしれないが、通称『モンハン』の曲だけでオーケストラコンサートが開かれたこともある。その作曲者ともなればゲーム通にとって小見山さんは、いわゆる“神”と呼ばれる人なのだ。
「5歳からエレクトーンを習いはじめて、社会人になっても数年間は教室に通っていました。好きでよく弾いたのは、映画のサントラです。中学生の頃、エレクトーンの発表会でスター・ウォーズやインディ・ジョーンズのテーマ曲が演奏されているのを見て、すごく感動したんです。その時点では映画を知らなかったんですけど、とにかくエレクトーンでカッコいい曲を弾きたい。その思いが常にありました」
地元大阪の相愛大学音楽学部に進学後もエレクトーンを楽しむ日々。やがて就職活動の時期を迎えたとき、音楽で暮らす道のひとつとしてゲーム音楽を選んだ。しかし、そこで待っていた世界は小見山さんの想像とは少し違っていた。
「ゲームに合う“音楽”をつくろうとすると、どうしても尖ってしまうんです。画に合わなくなるというか。ゲームには、あるボタンを押したときに出る攻撃に即した効果音があります。それが絶対的な音なら、私が関わるBGMは相対的な音で、いかに気持ちよくプレイできるサウンドかが大事になってきます。そこに意識が向くと、“音楽”ではなく“ゲーム”をつくる感覚になるんですね。だから私としては、ゲームのためにつくった曲はあくまでゲームそのものです」
とは言え、先に触れたオーケストラコンサート然り、ゲームの世界は音楽だけでも楽しめるほどに成熟しており、ひとつの音楽ジャンルとして確立されてもいるわけだ。とすれば、小見山さんが口にした意識とゲームユーザーの感覚、たとえばゲーム音楽の作曲者個人に対して自然に抱く敬意と感謝の間にはギャップがあるように思うのだが……?
「ゲームがどんなに売れても制作側には実感が沸かないものなんです。本当に裏方ですから。なるほど。改めてゲーム音楽について考えてしまいました」
いずれにせよ演奏の本番は間近に迫っている。2016年1月30日(土)、31日(日)に幕張メッセで開催される「闘会議2016/ゲーム音楽ステージ」。小見山さんが出演するとなれば、誰もが『モンハン』の名曲を期待するに違いない。
「『モンハン』の音楽と映画のサントラで大きく違うところは、聞いてくれるお客さん一人ひとりが思い浮かべるシーンが異なることです。自分が強かった場面、弱かった場面、それぞれの記憶が表情に現れる。それを数年前のオーケストラコンサートで見ました。お客さんのゲームに対する思いを引き出せる演奏ができたらいいですね」
日時:2016年1月30日(土)、31日(日)
会場:幕張メッセ(千葉県)
●1月30日(土)
ニコニコエレクトーン演奏者大集合!あの有名ゲーム音楽を生演奏♪
出演:あだっちゃん(ヤマハエレクトーンデモンストレーター)、ニコニコエレクトーン演奏者
●1月31日(日)
「モンスターハンター」シリーズ作曲の小見山優子参戦!トーク&エレクトーン演奏!
出演:小見山優子(作曲・編曲)、あだっちゃん(ヤマハエレクトーンデモンストレーター)