Web音遊人(みゅーじん)

今月の音遊人:藤井フミヤさん「音や音楽は心に栄養を与えてくれて、どんなときも味方になってくれるもの」

チェッカーズとしてデビューして35周年、ソロデビューして25周年を迎えたボーカリストの藤井フミヤさん。これまで作詞・作曲、アート作品の制作、アーティストのプロデュースなど、幅広い活動を行ってきました。キャリアを重ね、自分が歌い手であることを再認識しているという藤井さんに、よく聴いている曲や、歌うことへのこだわりについてうかがいました。

Q1.これまでの人生の中で、一番多く聴いた曲は何ですか?

コンサートやレコーディングで歌うために、自分の曲を一番多く聴いていると思いますよ。「じゃあ自分以外の人の曲では?」となると、ニール・ヤングのバックバンドだったクレイジー・ホースの『I Don’t Want to Talk About It』ですかね。チェッカーズが解散してソロになってから「こういう曲を作りたい」とずっと思っていて、今でもふとしたときに聴くので、この曲は僕のインスピレーションの源といえますね。
若いときは、シャツにジーパン、ロン毛という彼らのファッションをカッコいいと思えなくて、音楽も聴こうとしなかった。「見た目がカッコよくないとダメ!」って真剣に思っていましたから(笑)。それが30代に入ったころ「いい音楽と見た目は関係ない」と目覚めて、それでこの曲を聴いたら、歌詞の意味はわからなかったけれど、メロディーを聴いているだけで泣けてくるくらい心を動かされました。
洋楽の場合、聴き手がメロディーから勝手にイメージを膨らませていたりして、あとで歌詞の意味を知って「あれ、イメージと違うな」ってこともありますよね。僕が作詞をするときは、その曲のメロディーやイメージに合った詞を作ろうとするけれど、洋楽ではからなずしもそうではないところが面白いなと思います。

Q2.藤井さんにとって「音」や「音楽」とは?

音や音楽によって何気ない風景がドラマティックになったり、お酒がより美味しく感じたり、泣けてきたり、興奮したり、音や音楽には人の心を操る力があると思います。多くの人を動員するパワーもありますよね。例えば「この日、東京ドームに集まって!」とチケットを売ったら大勢の人が集まってくるんだから、ものすごいパワーだと思いますよ。
音や音楽は心に栄養を与えてくれて、どんなときも味方になってくれるもの。敵になることはないでしょうね。なかには過激な歌詞の曲はあったりするけれど、人を傷つけるために音楽を作る人はいないと思うんです。この世にはさまざまな芸術がありますが、音楽は常に「愛」で溢れているから、「安心して自分の中に取り込んでください」と言いたいですね。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

楽器を弾く人のことを思い浮かべますね。特に鍵盤楽器は、メロディーも、和音も、テンポも表現できるので、間近で見ていて「音と遊んでいるな」と思うことが多いです。だって、ボーカルって単音だからねぇ……。もちろん単音でも遊べますけど、そこにピアノやギターで和音を重ねられたときの気持ち良さっていったらないですよ!
僕はボーカリストなので、楽器を上達させることより、ボーカリストとしてのパフォーマンスを磨くことに労力を割いてきたと思います。チェッカーズ時代からギターは弾いていましたが、本腰を入れたのはソロになってからで、ソロになって最初の曲『TRUE LOVE』は、当時知っている基本的なコードだけで作ったんです。なので、初心者向けのギターの教則本によく載っていて、若いギタリストに「僕が最初にコピーしたの『TRUE LOVE』なんです」って言われることがけっこうあります。
ステージに立つときは、自分が持っているあらゆるテクニックを駆使して、楽器の音数や会場の音響に合った歌い方をするようにしています。なので、ステージにいるときは「音と遊んでいる」というより「仕事してます!」って感じですね。昔と比べると、体力的には思うようにいかないことも多いですが、「目の前にいるお客さんの心に自分の歌を届けたい」という一心で、体にムチ打って頑張っていますよ!

藤井フミヤ〔ふじい・ふみや〕
1983年、チェッカーズとしてデビュー。1993年以降はソロアーティストとして活動。『TRUE LOVE』や『Another Orion』などミリオンヒットを世に送り出す。2019年、デビュー35周年イヤーの後半を飾る全国ツアー「35th ANNIVERSARY CONCERT 2019 藤井フミヤ“十音楽団”」を7月より開催。また3年ぶりのオリジナルアルバム『フジイロック』の発売も決定している。
藤井フミヤオフィシャルサイト https://www.fumiyafujii.net/

 

特集

三浦文彰

今月の音遊人

今月の音遊人:三浦文彰さん「音を自由に表現できてこそ音楽になる。自分もそうでありたいですね」

6249views

音楽ライターの眼

ショパンのマズルカは、ピアニストにとって特別な意味をもつ魅力的な作品

36124views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

限りなく高い精度で鍵盤とハンマーの動きを計測するヤマハ独自の自動演奏ピアノの技術

29003views

エレキギター

楽器のあれこれQ&A

エレキギターのサウンドメイクについて教えて!

2774views

大人の楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:クラシック・サクソフォン界の若き偉才、上野耕平がチェロの体験レッスンに挑戦

13233views

音や音楽の“聴こえ”をサポートし、豊かな人生を届ける/補聴器を世の中に広める仕事

オトノ仕事人

音や音楽の“聴こえ”をサポートし、豊かな人生を届ける/補聴器を世の中に広める仕事

4294views

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、新時代へ発信する刺激的なコンテンツを/東京芸術劇場 コンサートホール

ホール自慢を聞きましょう

音の粒までクリアに聴こえる音響空間で、刺激的なコンテンツを発信/東京芸術劇場 コンサートホール

14172views

こどもと楽しむMusicナビ

サービス精神いっぱいの手作りフェスティバル/日本フィル 春休みオーケストラ探検「みる・きく・さわる オーケストラ!」

11229views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

14596views

武豊吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人: 地域の人たちの喜ぶ顔を見るために苦しいときも前に進み続ける

2833views

山口正介さん

パイドパイパー・ダイアリー

「自転車を漕ぐように」。これが長時間の演奏に耐える秘訣らしい

6937views

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにサルサ!キューバ音楽に会いに行く旅

28228views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

14431views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

25162views

“ビートルズ嫌い”という思い込みを正すきっかけをつくってくれたジャズ・カヴァーという“遺産”

音楽ライターの眼

“ビートルズ嫌い”という思い込みを正すきっかけをつくってくれたジャズ・カヴァーという“遺産”

37729views

マイク1本から吟味して求められる音に近づける/レコーディングエンジニアの仕事(前編)

オトノ仕事人

マイク1本から吟味して求められる音に近づける/レコーディングエンジニアの仕事(前編)

18032views

ギグリーマン

われら音遊人

われら音遊人:誰もが聴いたことがあるヒット曲でライブに来たすべての人を笑顔に

3419views

楽器探訪 Anothertake

奏者の思いどおりに音色が変化する、豊かな表現力を持ったグランドピアノ「C3X espressivo(エスプレッシーヴォ)」

12015views

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

ホール自慢を聞きましょう

弦楽四重奏を聴くことが人生の糧となるように/第一生命ホール

11483views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.3

パイドパイパー・ダイアリー

人生の最大の謎について、わたしも教室で考えた

6073views

初心者におすすめのエレキギターとレッスンのコツ!

楽器のあれこれQ&A

初心者におすすめのエレキギターと知っておきたい練習のコツ

27550views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

6498views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

11820views