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ジョン・フォガティがC.C.R.の名曲の数々を再レコーディング。半世紀以上アメリカン・ロックを背負ってきた男

ジョン・フォガティがC.C.R.の名曲の数々を再レコーディング。半世紀以上アメリカン・ロックを背負ってきた男

ジョン・フォガティがクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル(C.C.R.)時代のクラシックスを再レコーディングしたアルバム『レガシー:ザ・クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイバル・イヤーズ』を2025年8月22日に発売した。

「50年前に連れ去られた子供をようやく取り戻した」

C.C.R.は活動期間こそ1967年から1972年と決して長くなかったが、7枚のスタジオ・アルバムを発表。『プラウド・メアリー』『トラベリン・バンド』『バッド・ムーン・ライジング』『雨を見たかい』『スージーQ』『アップ・アラウンド・ザ・ベンド』などはアメリカン・ロックを代表する名曲として時代を超えて聴き継がれている。

本国アメリカで絶大な支持を得て1969年、伝説の“ウッドストック・フェスティバル”にも出演。イギリスでは1970年にロンドン“ロイヤル・アルバート・ホール”、日本では1972年に日本武道館での公演を含むツアーを行っている。この日(2月29日)は開演7分前の午後6時23分に八丈島で震度5の地震が起こり、会場がパニックに陥りかけるが、無事ショーは行われた。

バンド解散後、ソロ・アーティストに転じたジョンはライヴでC.C.R.の楽曲をプレイ、2010年には“フジ・ロック・フェスティバル”でも観衆からの大声援を浴びたが、実は自分が書いた曲のパブリッシング権(出版権)を持っていなかった。1960年代中盤、まだ20歳そこそこで音楽業界入りした彼は契約した“ファンタジー・レコーズ”から搾取されてきたのだ。“ファンタジー”はその後2004年に“コンコード・レコーズ”に買収され、ジョンの書いた楽曲の権利も移動したが2023年、彼がバック・カタログの権利を買い戻している。「50年前に連れ去られた子供をようやく取り戻した」と彼は語っており、それを祝うべくレコーディングしたのが『レガシー』である。

ジョン・フォガティ

“レガシー=過去から受け継いできた財産”を再体験

アルバムに先駆けて『ボーン・オン・ザ・バイヨー』『ローダイ』がリーダー・トラックとして公開されたが、79歳(レコーディング時)という年齢を感じさせない声のハリ、そして年季の入ったミュージシャンならではの円熟のギター・プレイを聴くことが可能だ。1曲目『アップ・アラウンド・ザ・ベンド』から『フォーチュネイト・サン』まで全20曲、C.C.R.の代表曲の数々がセルフ・カヴァーされている。

いずれの曲も大きくアレンジを変えることなく、オリジナルに近い味わい。オールド・ファンは身体になじんだ曲が現代に蘇る最新スタジオ・ライヴとして楽しむことができる。また、新しい世代の音楽リスナーがC.C.R.の代表曲に初めて触れる入門編アルバムとしても最適のセレクションだ。半世紀前に世界を揺さぶったこんな音楽があったことに、新鮮な驚きをおぼえる人もいるだろう。

元々C.C.R.のヴァージョンのアレンジがベーシックなもので、本作はジョンのライヴ・ヴァージョンを下敷きにしていることもあって、「それだったらセルフ・カヴァーでなく、オリジナルを聴けば良いのでは?」という批判もありそうではあるが、その逆にあまりにアレンジを変えすぎても長年のファンから「冒瀆!」とバッシングを受けたりもするし、サジ加減が難しいところである。

1960〜70年代に米ビルボード誌のヒット・チャートで5枚のシングルが2位にランクイン。ただし1位は1枚もないという珍しい記録を保持しているC.C.R.だが、それらのニュー・ヴァージョンを本作で聴くことができる。それ以外にも『ポーターヴィル』『ブートレグ』など、ヒットこそしなかったがバンドにとって重要な位置を占める、そしてジョンの思い入れが強いであろう楽曲も聴き物だ。セールスだけを選曲基準にした“グレイテスト・ヒッツ”ではない、ジョンの“レガシー=過去から受け継いできた財産”を再体験することができるのが本作なのだ。

このアルバムはジョンの偉大なキャリアを総括するのと同時に、それを次世代へと受け継いでいく作業でもある。ジョンと息子のシェーン・フォガティが共同プロデュース、シェーンと弟タイラーがプレイヤーとして参加。奥方のジュリー・フォガティがエグゼクティヴ・プロデュースを務めるなど、フォガティ家の黄金の血統へのセレブレーションが本作なのだ。

今回は“ザ・クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイバル・イヤーズ”というサブタイトルが付けられているが、ジョンはソロ・アーティストに転向してからも数多くのアルバムを発表、成功を収めてきた。C.C.R.時代ほどビジネス面のトラブルがあったわけではないものの、いずれ『レガシー:ザ・ソロ・イヤーズ』を作って、『ジ・オールド・マン・ダウン・ザ・ロード』『センターフィールド』『ロッキン・オール・オーヴァー・ザ・ワールド』『ロックン・ロール・ガールズ』などのニュー・ヴァージョンにも期待したいところである。

2025年に80歳を迎えるジョンだが、アルバムの発売を待たずして、同年5月から北米とヨーロッパでツアーを行っている。“The Celebration Tour: Celebrating His Songs From Creedence Clearwater Revival”というタイトルの通りC.C.R.の曲を軸に、ソロ・ヒット曲を交えたショーは各地で絶賛を浴びている。半世紀以上にわたりアメリカン・ロックを背負ってきた伝説のミュージシャンのさらなる活躍を楽しみにしたい。

■アルバム『レガシー:ザ・クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル・イヤーズ』[UHQCD]

アルバム『レガシー:ザ・クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル・イヤーズ』

発売元:ユニバーサルミュージック合同会社
現在発売中
価格:3,300円(税込)

詳細はこちら

山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,300以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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