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広がっていくヴェノムのエクストリーム・メタルの世界。2025年11月にMantas Venom Japanライヴ、アバドン自伝刊行

広がっていくヴェノムのエクストリーム・メタルの世界。2025年11月にMantas Venom Japanライヴ、アバドン自伝刊行

2025年、世界をヴェノム旋風が吹き荒れている。
1979年、英国ニューカッスルで結成したヴェノムはヘヴィ・メタル・ブーム(ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル)の勢いに乗ってブレイク。ただですら激しさを武器としてきたヘヴィ・メタルをさらに激化、ひたすら速くうるさく汚いサウンドと悪魔的なイメージゆえに「あんなの音楽じゃない」と誹りを受けることもあったが、メタリカを筆頭にスラッシュ・メタル、デス・メタル、ブラック・メタルなど、あらゆるエクストリーム・メタルに直接・間接的に影響を与えてきた。現在では彼らはもはや神格化されている。

クロノス(ヴォーカル、ベース/本名コンラッド・ラント)マンタス(ギター/本名ジェフ・ダン)アバドン(ドラムス/本名アントニー・ブレイ)という初期の“黄金ラインアップ”による『ウェルカム・トゥ・ヘル』(1981)『ブラック・メタル』(1982)などが名盤とされるヴェノムだが、3人それぞれが別の道を歩んでいる。クロノスはヴェノム名義でヨーロッパのメタル・フェスティバルを中心にライヴ活動中。マンタスとアバドンはヴェノムIncを結成するが、バンド内の人間関係、そしてマンタスの二度の心臓発作やパートナーの癌、アバドンは「気が付いたら別のドラマーが叩いていた」という理由で、2人とも離脱済だ。なお現在ヴェノムIncは1980年代後半〜1990年代前半にヴェノムにいたデモリッション・マン(ヴォーカル/ベース)が続けているが、2人は「あいつとは二度と一緒にやらない」と意見が一致している。

世界のヴェノム・ファンが望む“黄金ラインアップ”の復活は、クロノスとマンタス&アバドン両陣営がアートワークやマーチャンダイズの権利を巡って訴訟合戦で争うなど、実現の可能性は低そうだ。だが、そんなファン達のハートに光を灯す2大イベントが実現する。2025年11月、Mantas Venom Japanの来日公演と、アバドン自伝『The View From The Metal Throne: The Story Of Abaddon & Venom』の刊行である。

Mantas Venom Japan来日

マンタス率いるMantas Venom Japanの胎動が始まったのは2023年3月に行われた彼のソロ来日公演だった。このとき行われた“Mantas Super Session”では川嶋未来(ヴォーカル/SIGH)Gezol(ベース、ヴォーカル/Sabbat)舘真二(ドラムス/METALUCIFER)JERO(ギター/ABIGAIL)という、ヴェノムに魅せられた日本人ミュージシャン達が集結。往年のヴェノム・クラシックスをプレイした。その成功を起爆剤にして今回は同じメンバーが再合体、“バンド”としてライヴを行うことになる。

さらに今回はスペシャル・ゲストとしてアバドンが同行。クラシック・ヴェノムの2/3が揃ってどんな曲がプレイされるかも期待が高まる。

川嶋は今回の公演についてこのように語る。

「何といってもアバドンの参加が目玉。テクニカルと程遠いドラマーだが、アバドンのドラミングこそがヴェノムの肝と考えるものも少なくない。アバドンが叩くのは3曲のみだが、それだけでも見る価値はある」

アバドン自伝『The View From The Metal Throne: The Story Of Abaddon & Venom』

ヴェノムの創設メンバーでありドラマーのアバドンの自伝は、バンドでの活動を軸に、メンバーの人間関係やツアー/レコーディングの数々の知られざるエピソードを綴っている。それぞれの時期のメンバー写真やレアなレコード・ジャケット、雑誌記事、フライヤーなどカラー図版も豊富で、全220ページがあっという間だ。さまざまな出来事が起こった場所や日付などデータ面が充実しているのは、共著者のアンドレアス・アンドレオウ(ギリシャのレーベル“ノー・リモース・レコーズ”のスタッフであり、ギリシャ版“メタル・ハマー”誌に寄稿するライターでもある)の貢献によるものだろう。

初心者にも判りやすく語られているが、さまざまなエピソードが満載で、とにかく情報量が多い。マネージャーだったエリック・クックが果たした役割(彼は2017年に死去)や、初期ヴェノムでのドラミングについて「ジャングルで食人族が叩くドラムスをイメージした」話、「『ブラック・メタル』イントロのチェーンソーの音はスタジオにあった金属の錠を切ったもの」、女性教師に向けたエロチックな妄想を描いた『ティーチャーズ・ペット』を書いたのがマンタスだった(続編『スクール・デイズ』も)、ラッシュの『西暦2112年』から触発されて書いた『アット・ウォー・ウィズ・サタン』(1984)タイトル曲は前作に収録された同曲の“イントロダクション”と合わせるとちょうど21分12秒になる……など、熱心なファンむけの情報も散りばめられている。

アバドンとクロノスとの微妙な関係が表れている箇所も多い。現在でも使われているヴェノムのロゴについて「自分がデザインしたもの」と繰り返し主張していたり(ロジャー・ディーンがデザインしたイエスのロゴからインスパイアされたそうだ)、アルバム『カーム・ビフォア・ザ・ストーム』(1987)でクロノスがヴァン・ヘイレン的なサウンドを志したとも書かれている。

ちなみに『カーム・ビフォア・ザ・ストーム』の前にマンタスが脱退、新ギタリストとしてマイカス(本名:マイク・ヒッキー)が加入することになったが、その決定打となったデモ・テープは間違って送られてきたポール・ギルバート(後にMr. BIG)のデモだったとのこと。

ヴェノムがブレイク前のメタリカ、スレイヤー、エクソダスらとツアーに出たことはもはやメタル史の伝説となっているが、この逸話も多く記されている。バックステージでスレイヤーのトム・アラヤが酔っ払ってクロノスの肩の上に逸物を乗せて、怒ったクロノスがアラヤを部屋の反対側まで投げ飛ばしたという話があるが、後にクロノスがムキムキ筋肉マンになる前兆だったのかも知れない。

なお、マンタスも10年前ぐらい(もっと前かも?)から自伝を書いていると語っているが、現時点では刊行日などは明らかになっていない。アバドン自伝では「何だかよく判らないけどマンタスはバンドを辞めてしまった」「いつの間にかツアーを離脱してしまった」という曖昧な箇所があるが、マンタスの視点からどのように語られるか、興味が尽きない。

なお本書は英語版のみで666冊限定。日本語版が出る可能性は限りなく低いため、英語でぜひ読んでおきたい。

デビューから45年を経て、今もなおヴェノムが崇拝され続ける理由について、川嶋は説明してくれた。

「多様化している現代のエクストリーム・メタルすべてのバンドの遺伝子にヴェノムが組み込まれている。もちろん若いバンドの中には、ヴェノムなんて聴いたことないというものもいるでしょう。しかし、彼らが影響を受けたバンドは間違いなくヴェノムから影響を受けている。ブラック・サバス同様、ヴェノムの影響は、直接的、間接的、意識的、無意識的問わず、あらゆるところに存在している」

Mantas Venom Japan公演、アバドン自伝と、どこまでも広がっていくヴェノムの世界。そのファンたるもの、地獄の底まで追いかける覚悟が必要だろう。

■Mantas Venom Japan Special Guest “Abaddon”

Mantas Venom Japan Special Guest “Abaddon”

日時:2025年11月30日(日)17:30開演(17:00会場)
会場:東京・新宿ANTIKNOCK
詳細はこちら

■書籍『The View From The Metal Throne: The Story Of Abaddon & Venom』

書籍『The View From The Metal Throne: The Story Of Abaddon & Venom』

発売元:Metal Hammer
詳細はこちら

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