Web音遊人(みゅーじん)

藤原さくら

今月の音遊人:藤原さくらさん「音楽をやっていてよかったと思うのは、自分の曲が知らぬ間に誰かのものになっていること」

シンガーソングライターとして、また俳優としても活躍する藤原さくらさん。2025年にデビュー10周年を迎え、2026年2月には初の単独日本武道館公演を控えている彼女に、音楽への思いを語っていただきました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

お父さんがすごく音楽が好きな人で、その影響で私もかなりUKロック漬けの生活をしていました。ザ・ビートルズやウィングス、ポール・マッカートニーの曲は小さいころから聴いていて。この一曲っていうのは難しいんですけど、アルバムでいうとポールのソロ作の『ラム』(1971年)が好きです。こんなアルバムが作りたいと思いながら聴いていました。
また、フランスで活動しているイスラエルのシンガーソングライター、ヤエル・ナイムの『She Was a Boy』というアルバムも好きです。いろんな楽器が使われたカラフルな作品で、ブックレットを見て“この音はなんの楽器だろう?”と研究していました。
私はこの一曲という聴き方よりも、アルバム単位で聴くのが好きです。だからなのか、私の作品もアルバムを最初からシャッフルせずに聴いてもらいたいという気持ちがすごく強くて。それこそ映画を撮るみたいに、ストーリーを意識して曲順も考えています。

Q2.藤原さんにとって「音」や「音楽」とは?

楽しいもの、委ねるものですね。私の原体験に洋楽やワールドミュージックがあるんですが、歌詞が英語をはじめ、さまざまな国の言葉なので、どんな内容なのかわからなくて。運よく日本盤が出ていてブックレットに訳詞が載っていたら、ようやく知るという感じだったんです。
普通に生活していたら交わることのない国の人たちの曲を聴いて、何を歌っているのかわからないのにすごく楽しい気持ちになったり、涙が出てきたりすることがあって。それは完全に言語を超越しているというか、すごいことだなと思うんです。まぁ、後から歌詞を知って、とんでもない曲だったということもあるんですけど(笑)、そういうのも音楽の楽しいところだと思います。
元々曲のメロディーや楽器の音を直感的、感覚的に楽しむ側の人間だったのに、いろいろ考えすぎて音楽を楽しむことから遠ざかっていました。最近になって、やっとまた原点回帰しているところなんです。

藤原さくら

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

すぐに思い浮かぶ方がいます。いま一緒にアルバムを制作しているドラマーの石若駿さんは、まさに「音遊人」です。まるで子どものように音で遊んでいて、本当に楽しそうに演奏するんですよ。そんなすごい方を隣に見ながら演奏できるのは、かなり幸運なことだなと思います。
ジャズのプレイヤーの方たちにも音遊人は多いんじゃないかと思います。でも、一言に楽しんでいると言っても、楽しむための土台、基礎がしっかりあって、ある程度のルールみたいなものをお互いに共有できているからこそ、自由に羽ばたけるんですよね。それは並大抵の努力では到達できないところで、きっと大変な思いをしてたどり着けるのだろうなと思います。
私自身が音遊人になれているかはわからないですけど、素晴らしいミュージシャンとご一緒していると、同じ場所でプレイしていても、また一段階上のレイヤーで彼らはやっているように思えて。いまは、そこに行くのがすごく楽しみという気持ちにさせてもらっています。

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

音楽という共通言語があるからこそ、素晴らしいアーティストと一緒に演奏することができたり、シンプルに友達になれたりとか、それが大きいですね。
あとは、自分の曲が知らぬ間に誰かのものになっていること。ファンレターなどで、私の曲を拠り所にして頑張っていますという声をいただくと、届いているんだなって実感します。皆さんのお家に行って直接お話を聞いてあげることはできないけれど、近いことができちゃうような気がするのが、やっぱり音楽のおもしろいところだと思うし、やっていてよかったなって思いますね。
ある役者の方から、音楽の凄まじさのようなことをうかがったことがあります。「自分たちが“こういうことを伝えたい。こんなことを感じて欲しい”と思いながら取り組んだものが、60分のドラマや2時間半の映画になるわけだけど、音楽は3分でそれを伝えてしまうからズルい」と。音楽には、確かに時間感覚とか時空を超えてしまう力があるなと思います。だから私にとって音楽は、底知れない、そして聖なる、ありがたい存在です。

藤原さくら

藤原さくら〔ふじわら・さくら〕
1995年生まれ。福岡県出身。天性のスモーキーな歌声は、数ある女性シンガーの中でも類を見ず、聴く人の耳を引き寄せる。2024年4月に発表した5枚目のアルバム『wood mood』は、サウンドプロデューサーにジャズドラマーである石若駿を迎え、原点回帰でもあり、自身の今の音楽的ムードを昇華した作品。2025年3月には、デビュー10周年を迎えた。ミュージシャンのみならず、役者、ラジオDJ、ファッションと活動は多岐にわたる。
オフィシャルサイト

オフィシャルFacebook YouTube公式チャンネル オフィシャルX(旧Twitter) オフィシャルInstagram
オフィシャルLINE オフィシャルtiktok

photo/ 坂本ようこ

本ウェブサイト上に掲載されている文章・画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

facebook

twitter

特集

今月の音遊人:大西順子さん「ライブでは、練習で考えたことも悩んだことも全部捨てて自分を解放しています」

今月の音遊人

今月の音遊人:大西順子さん「ライブでは、練習で考えたことも悩んだことも全部捨てて自分を解放しています」

14523views

音楽ライターの眼

弦楽器の多様なハーモニーを「あうん」の呼吸で奏でる/塩谷哲withソルト・ストリングスコンサート2020

3316views

楽器探訪 Anothertake

バンドメンバーになった気分でアンサンブルを楽しめるクラビノーバ「CVP-800シリーズ」

8822views

楽器のあれこれQ&A

いまさら聞けない!?エレクトーン初心者が知っておきたいこと

32793views

おとなの楽器練習記

【動画公開中】注目の若手ピアニスト小林愛実がチェロのレッスンに挑戦!

11714views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

見えないところこそ気を付けて心を配る/弦楽器の調整や修理をする職人(後編)

9337views

メニコン シアターAoi

ホール自慢を聞きましょう

五感で“みる”ことの素晴らしさを多くの方と共感したい/メニコン シアターAoi

5096views

東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

こどもと楽しむMusicナビ

子ども向けだからといって音楽に妥協は一切しません!/東京交響楽団&サントリーホール「こども定期演奏会」

12684views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

25887views

横浜レンタル倉庫(YRS)

われら音遊人

われら音遊人:目指すはフェス! 楽しみ、楽しませ、さらなる高みへ

3015views

山口正介

パイドパイパー・ダイアリー

大人の音楽レッスン、わたし、これでも10年つづけています!

8418views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

12216views

コハーン・イシュトヴァーンさん Web音遊人

おとなの楽器練習記

【動画公開中】ハンガリー出身のクラリネット奏者コハーン・イシュトヴァーンがバイオリンを体験レッスン!

12119views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

26955views

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase43)プッチーニ「ラ・ボエーム」、はかない青春の挽歌、「22歳の別れ」の後も続く人生

音楽ライターの眼

【クラシック名曲 ポップにシン・発見】(Phase43)プッチーニ「ラ・ボエーム」、はかない青春の挽歌、「22歳の別れ」の後も続く人生

1716views

弦楽器の調整や修理をする職人インタビュー(前編)

オトノ仕事人

見えないところこそ気を付けて心を配る/弦楽器の調整や修理をする職人(後編)

9337views

武豊吹奏楽団

われら音遊人

われら音遊人: 地域の人たちの喜ぶ顔を見るために苦しいときも前に進み続ける

3254views

楽器探訪 Anothertake

新開発の音響システムが表現力のカナメ。管楽器の可能性を広げる「デジタルサックス」

5528views

ホール自慢を聞きましょう

ウィーンの品格と本格派の音楽を堪能できる大阪の極上空間/いずみホール

9297views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.3

パイドパイパー・ダイアリー

人生の最大の謎について、わたしも教室で考えた

6510views

知って得する!木製楽器の お手入れ方法

楽器のあれこれQ&A

木製楽器に起こりやすいトラブルは?保管やお手入れで気を付けること

24156views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

17690views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

35706views