Web音遊人(みゅーじん)

クラシックギタリストという肩書きを超越する異才/鈴木大介インタビュー

クラシックギタリストという肩書きを超越する異才/鈴木大介インタビュー

取材や撮影を行っている間も、手にしたギターからは柔らかな音楽が生まれている。弾いているのは武満徹の作品であり、しかも演奏しながら解説付きというサービスぶりだ。もし読者の皆様が鈴木大介のコンサートに行き、フレンドリーなMCを含む演奏の雰囲気を味わっているのなら「なるほど」と納得していただけるだろう。そういえば数年前までは、FM放送のクラシック音楽番組でメイン・パーソナリティも務めていたのだった。

クラシックギターのレパートリーはもちろん、ジャズ、ボサノヴァ、映画音楽など多彩なレパートリーを弾きこなし、ギターのための楽譜がない曲は自らが編曲する。学生時代から福田進一氏に師事しながら、同時にアマチュアのフュージョン・バンドでエレクトリックギターを弾くなど、好奇心旺盛に音楽活動をしていた。そうしたことで蓄積された音楽性が、晩年の武満徹を刺激したのだろう。会ったことのない鈴木の演奏を聴き「いままでに聴いたことがないようなギタリスト」と評したことは有名だ。

「デビューの時にそういう言葉をいただけて大きな励みになりましたし、武満さんの音楽を紹介していくことが自分の務めでもあります。ギターがお好きな方でしたから、オリジナル曲やギターを加えた室内楽曲などがありますけれど、一方で大変な映画マニアであり、映画音楽もたくさん書いているのです。そうした曲をギターのためにアレンジして演奏してきましたが、ひとつの形になったのが2001年に発売した『どですかでん』というCDでした」
それ以来ずっと映画音楽について、独自に研究をし続けてきたという。「ある時、ご遺族の方から残されている映画音楽の自筆譜をたくさん見せていただき、新しい発見がたくさんあったのです。それにより、武満さんにとっての映画音楽は決して独立した存在ではなく、オリジナルのオーケストラ曲やギター曲などと音楽的なつながりがあることもわかってきました。2016年は没後20年という節目の年ですが、ここから先も自分は彼の音楽にいろいろな方向から光を当て、『武満徹の音楽』とはいったい何だったのかを深めていきたいですね」

クラシックギタリストという肩書きを超越する異才/鈴木大介インタビュー

2016年10月18日(火)にヤマハホールで行われるコンサート「武満徹へのオマージュ ~フィルム・ミュージックと彼が愛した音楽~」も、まさにその一環。ギター・ソロだけではなく、5人編成のジャズ・バンド・スタイルで武満作品を演奏し、さらには武満が好きだったというJ.S.バッハ、ジャズの名曲『ジャンゴ』、そして生前最後に観た映画だという『シンドラーのリスト』ほかの映画音楽も聴かせてくれる。こうした選曲の幅広さもまた「鈴木大介的」だと言えるだろう。

ところで、ギターを演奏される読者も多いと思うが、鈴木のように気負いのない自然体の音楽を奏でるためには、どういったことが大切なのだろうか。 「ギターには『弾いた時間が長いほど上手になる』という、かなり明確な法則があります。僕もよく『どうしたらそんな音が出せますか』と質問を受けますけれど、『一日中ギターを触っているから』というのがその答えですね。ギターは持ち運びもできますし、ずっと手元に置いて、気がついたらパラパラと弾いているくらいがちょうどいい。パコ・デ・ルシアもパット・メセニーも、フラメンコギターのカニサレスも、上手な人はみんな同じことを言っていますから間違いありません。たくさんの時間をギターといっしょに過ごしてください」 

2016年の後半も全国あちこちでのコンサートがあり、CDのリリースも控えている。聴いた途端に魅了されてしまう彼の音色を、ぜひ味わっていただきたい。

■武満徹へのオマージュ ~フィルム・ミュージックと彼が愛した音楽~

日時:2016年10月18日(火)19:00開演(18:30開場)
場所:ヤマハホール(東京都中央区銀座7-9-14 ヤマハ銀座ビル7F)
料金:5,000円(税込)
出演:鈴木大介(ギター)、田口悌治(ギター)、吉野弘志(ベース)、芳垣安洋(ドラム)、北村聡(バンドネオン)
曲目:J.レノン=P.マッカートニー:ヒア・ゼア・アンド・エヴリウェア、ヘイ・ジュード(武満徹編/12の歌より)、A.バリオス:郷愁のショーロ、J.ウィリアムズ:シンドラーのリスト、武満徹:今朝の秋、太平洋ひとりぼっち、伊豆の踊子、狂った果実 ほか
公演の詳細はこちら

 

特集

八神純子さん - 今月の音遊人

今月の音遊人

今月の音遊人:八神純子さん「意気込んでいる状態より、フワッと何かが浮かんだ時の方がいい曲になる」

13113views

音楽ライターの眼

さまざまな音楽、溶け合う楽器の音色、それらが届ける平和の祈り:井上鑑「TOKYO INSTALLATION 2022- Birds of Tokyo『願いを乗せて飛び立つうた』」

981views

懐かしのピアニカを振り返る

楽器探訪 Anothertake

懐かしのピアニカを振り返る

16523views

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!トランペットをうまく鳴らすコツと練習方法

115358views

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

8900views

オトノ仕事人

テレビ番組の映像にBGMや効果音をつけて演出をする音の専門家/音響効果の仕事

1720views

アクトシティ浜松 中ホール

ホール自慢を聞きましょう

生活の中に音楽がある町、浜松市民の音楽拠点となる音楽ホール/アクトシティ浜松 中ホール

13966views

こどもと楽しむMusicナビ

親子で参加!“アートで話そう”をテーマにしたオーケストラコンサート&ワークショップ/第16回 子どもたちと芸術家の出あう街

5206views

上野学園大学 楽器展示室」- Web音遊人

楽器博物館探訪

伝統を引き継ぐだけでなく、今も進化し続ける古楽器の世界

12545views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:バンドサークルのような活動スタイルだから、初心者も経験者も、皆がライブハウスのステージに立てる!

7674views

山口正介さん Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

サクソフォン教室の新しいクラスメイト、勝手に募集中!

4391views

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする Web音遊人

音楽めぐり紀行

太平洋に浮かぶ楽園で、小笠原古謡に恋をする

9637views

おとなの楽器練習記

おとなの楽器練習記:注目の若手サクソフォン奏者 住谷美帆がバイオリンに挑戦!

8775views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

21963views

音楽ライターの眼

【ジャズの“名盤”ってナンだ?】#023 ジャズ界の“彗星”が遺したハード・バップからの決別宣言~エリック・ドルフィー『アット・ザ・ファイヴ・スポット VOL.1』編

1141views

オトノ仕事人

芸術をとおして社会にイノベーションを起こす/インクルーシブアーツ研究の仕事

6408views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:音楽は和!ひとつになったときの達成感がいい

5652views

Disklavier™ ENSPIRE(ディスクラビア エンスパイア)- Web音遊人

楽器探訪 Anothertake

ピアノのエレガントなフォルムを大切にしたデザイン

6543views

HAKUJU HALL(白寿ホール)

ホール自慢を聞きましょう

心身ともにリラックスできる贅沢な音楽空間/Hakuju Hall(ハクジュホール)

21958views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

5063views

大人のピアニカ

楽器のあれこれQ&A

「大人のピアニカ」の“大人”な特徴を教えて!

2544views

こどもと楽しむMusicナビ

1DAYフェスであなたもオルガン博士に/サントリーホールでオルガンZANMAI!

2880views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

29069views