Web音遊人(みゅーじん)

バッハにオマージュを捧げる弦楽器奏者たちの味わい深い録音

バッハにオマージュを捧げる弦楽器奏者たちの味わい深い録音、おすすめのアルバム5枚

J・S・バッハの作品は、音楽家にとって非常に大切なレパートリーである。多くのピアニストが、「生涯弾き続けていきたい」と語る作品が多数存在するが、弦楽器奏者にとってもバッハは重要な位置を占める。
今回は最近リリースされた、弦楽器奏者の5枚のアルバムを紹介したい。

■J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集

ドイツの伝統的な奏法と芳醇な音色で聴き手を魅了してやまないフランク・ペーター・ツィンマーマンが世に送り出したバッハの「ヴァイオリン協奏曲集」は、自身の2度目の録音にあたる。ここでは消失したヴァイオリン協奏曲のチェンバロ編曲として自筆譜が存在する、チェンバロ協奏曲第1番をヴァイオリン協奏曲として蘇らせているのが特徴で、大きな意義がある。共演のベルリン・バロック・ゾリステンとの息もピッタリである。

J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲集
フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)、セルゲ・ツィンマーマン(ヴァイオリン)、ベルリン・バロック・ゾリステン
発売元:キングインターナショナル
価格:3,000円(税抜)
詳細はこちら


■ヒラリー・ハーン・プレイズ・バッハ

バッハとともに生き、「バッハを弾かない日は一日もない」と語るヒラリー・ハーンがCDデビューから20年を記念し、バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ」第1番、第2番、「同パルティータ」第1番を録音した。この録音では、ハーンの20年間の演奏の進化と深化が示されている。

ヒラリー・ハーン・プレイズ・バッハ
ヒラリー・ハーン
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社
価格:2,800円(税抜)
詳細はこちら


■バッハ:ヴァイオリン協奏曲集(4曲)

オランダ・バッハ協会の音楽監督を務める佐藤俊介は、1パートがひとりという少人数のイタリアの古楽グループ、イル・ポモ・ドーロとの初共演でバッハの「ヴァイオリン協奏曲集」の録音を完成させた。ここではひとりひとりの音がクリアに聴こえ、斬新で室内楽的なバッハが誕生している。

バッハ:ヴァイオリン協奏曲集(4曲)
佐藤俊介、イル・ポモ・ドーロ
発売元:ワーナーミュージック・ジャパン
価格:2,800円(税抜)
詳細はこちら

佐藤俊介とオランダ・バッハ協会管弦楽団公演
公演の詳細はこちら


■バッハに捧げる

スペインの血を引く、フランス生まれのギタリスト、ティボー・ガルシアも、バッハの作品とバッハから霊感を受けて曲作りをしたバリオスやヴィラ=ロボスらの作品を録音した。ガルシアの演奏は、語るようにうたうように、ギターから喜怒哀楽の感情豊かな響きを引き出し、その音色は聴き手の心の内奥にゆっくりと浸透してくる。まさにギターを聴く喜びを体感させてくれる1枚だ。

バッハに捧げる
ティボー・ガルシア
発売元:ワーナーミュージック・ジャパン
価格:2,800円(税抜)
詳細はこちら


■バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ(全曲)

バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」は、ヴァイオリン1台で小宇宙を描き出す孤高の世界である。しかし、カルミニョーラの全曲演奏はけっして堅苦しくなく自由闊達で、開放感にあふれている。いずれの曲も渋く旨みのある年輪を感じさせる地味豊かな演奏で、聴き込むほどに深く魅了されていく。

バッハ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタとパルティータ(全曲)
ジュリアーノ・カルミニョーラ
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社
価格:3,500円(税抜)
詳細はこちら

 

伊熊 よし子〔いくま・よしこ〕
音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。著書に「クラシック貴人変人」(エー・ジー出版)、「ヴェンゲーロフの奇跡 百年にひとりのヴァイオリニスト」(共同通信社)、「ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語」(ヤマハミュージックメディア)、「魂のチェリスト ミッシャ・マイスキー《わが真実》」(小学館)、「イラストオペラブック トゥーランドット」(ショパン)、「北欧の音の詩人 グリーグを愛す」(ショパン)など。2010年のショパン生誕200年を記念し、2月に「図説 ショパン」(河出書房新社)を出版。近著「伊熊よし子のおいしい音楽案内 パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書 電子書籍有り)、「リトル・ピアニスト 牛田智大」(扶桑社)、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社)、「たどりつく力 フジコ・ヘミング」(幻冬舎)。共著多数。 
伊熊よし子の ークラシックはおいしいー

 

特集

今月の音遊人:清塚信也さん

今月の音遊人

今月の音遊人:清塚信也さん「音楽はあやふやで不安定な世界。だからこそ、インテリジェンスを感じることもあります」

10965views

音楽ライターの眼

ローリー・ブロックが偉大なるブルース・ウィメンに捧げるアルバム『プルーヴ・イット・オン・ミー』を発表

3405views

楽器探訪 Anothertake

新開発の音響システムが表現力のカナメ。管楽器の可能性を広げる「デジタルサックス」

2708views

日ごろからできるピアノのお手入れ

楽器のあれこれQ&A

日ごろからできるピアノのお手入れ

61745views

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】沖縄民謡アーティスト上間綾乃がバイオリンに挑戦!

8486views

マイク1本から吟味して求められる音に近づける/レコーディングエンジニアの仕事(前編)

オトノ仕事人

マイク1本から吟味して求められる音に近づける/レコーディングエンジニアの仕事(前編)

13700views

久留米シティプラザ - Web音遊人

ホール自慢を聞きましょう

世界的なマエストロが音響を絶賛!久留米の新たな文化発信施設/久留米シティプラザ ザ・グランドホール

17429views

ズーラシアン・フィル・ハーモニー

こどもと楽しむMusicナビ

スーパープレイヤーの動物たちが繰り広げるステージに親子で夢中!/ズーラシアンブラス

12172views

武蔵野音楽大学楽器博物館

楽器博物館探訪

世界に一台しかない貴重なピアノを所蔵「武蔵野音楽大学楽器博物館」

20858views

われら音遊人

われら音遊人

われら音遊人:音楽は和!ひとつになったときの達成感がいい

5386views

パイドパイパー・ダイアリー Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

楽器は人前で演奏してこそ、上達していくものなのだろう

7300views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

27610views

バイオリニスト石田泰尚が アルトサクソフォンに挑戦!

おとなの楽器練習記

【動画公開中】バイオリニスト石田泰尚がアルトサクソフォンに挑戦!

11489views

小泉文夫記念資料室

楽器博物館探訪

世界の民族楽器を触って鳴らせる「小泉文夫記念資料室」

20582views

トッレ・デル・ラーゴにある等身大のプッチーニ像

音楽ライターの眼

フィギュア・スケートの選手たちに愛されるプッチーニの『トゥーランドット』 vol.2

6017views

オトノ仕事人

プラスマイナス0.05ヘルツまで調整する熟練の技/音叉を作る仕事

26311views

われら音遊人:クラノワ・カルーク・ オーケストラ

われら音遊人

われら音遊人:同一楽器でハーモニーを奏でる クラリネット合奏団

7436views

楽器探訪 Anothertake

ピアニストの声となり歌い奏でる、コンサートグランドピアノ「CFX」の新モデル

3872views

アクトシティ浜松 中ホール

ホール自慢を聞きましょう

生活の中に音楽がある町、浜松市民の音楽拠点となる音楽ホール/アクトシティ浜松 中ホール

13044views

パイドパイパー・ダイアリー Vol.8 - Web音遊人

パイドパイパー・ダイアリー

初心者も経験者も関係ない、みんなで音を出しているだけで楽しいんです!

4610views

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

楽器のあれこれQ&A

初心者必見!バンドで使うシンセサイザーの選び方

22180views

こどもと楽しむMusicナビ

クラシックコンサートにバレエ、人形劇、演劇……好きな演目で劇場デビューする夏休み!/『日生劇場ファミリーフェスティヴァル』

6128views

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅 - Web音遊人

音楽めぐり紀行

ポロネーズに始まりマズルカに終わる、ショパンの誇り高き精神をめぐるポーランドの旅

27610views