今月の音遊人
今月の音遊人:児玉隼人さん「音ひとつで感動させられるプレーヤーになれるように日々練習しています」
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J・S・バッハの作品は、音楽家にとって非常に大切なレパートリーである。多くのピアニストが、「生涯弾き続けていきたい」と語る作品が多数存在するが、弦楽器奏者にとってもバッハは重要な位置を占める。
今回は最近リリースされた、弦楽器奏者の5枚のアルバムを紹介したい。
ドイツの伝統的な奏法と芳醇な音色で聴き手を魅了してやまないフランク・ペーター・ツィンマーマンが世に送り出したバッハの「ヴァイオリン協奏曲集」は、自身の2度目の録音にあたる。ここでは消失したヴァイオリン協奏曲のチェンバロ編曲として自筆譜が存在する、チェンバロ協奏曲第1番をヴァイオリン協奏曲として蘇らせているのが特徴で、大きな意義がある。共演のベルリン・バロック・ゾリステンとの息もピッタリである。
フランク・ペーター・ツィンマーマン(ヴァイオリン)、セルゲ・ツィンマーマン(ヴァイオリン)、ベルリン・バロック・ゾリステン
発売元:キングインターナショナル
価格:3,000円(税抜)
バッハとともに生き、「バッハを弾かない日は一日もない」と語るヒラリー・ハーンがCDデビューから20年を記念し、バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ」第1番、第2番、「同パルティータ」第1番を録音した。この録音では、ハーンの20年間の演奏の進化と深化が示されている。
ヒラリー・ハーン
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社
価格:2,800円(税抜)
オランダ・バッハ協会の音楽監督を務める佐藤俊介は、1パートがひとりという少人数のイタリアの古楽グループ、イル・ポモ・ドーロとの初共演でバッハの「ヴァイオリン協奏曲集」の録音を完成させた。ここではひとりひとりの音がクリアに聴こえ、斬新で室内楽的なバッハが誕生している。
佐藤俊介、イル・ポモ・ドーロ
発売元:ワーナーミュージック・ジャパン
価格:2,800円(税抜)
スペインの血を引く、フランス生まれのギタリスト、ティボー・ガルシアも、バッハの作品とバッハから霊感を受けて曲作りをしたバリオスやヴィラ=ロボスらの作品を録音した。ガルシアの演奏は、語るようにうたうように、ギターから喜怒哀楽の感情豊かな響きを引き出し、その音色は聴き手の心の内奥にゆっくりと浸透してくる。まさにギターを聴く喜びを体感させてくれる1枚だ。
ティボー・ガルシア
発売元:ワーナーミュージック・ジャパン
価格:2,800円(税抜)
バッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」は、ヴァイオリン1台で小宇宙を描き出す孤高の世界である。しかし、カルミニョーラの全曲演奏はけっして堅苦しくなく自由闊達で、開放感にあふれている。いずれの曲も渋く旨みのある年輪を感じさせる地味豊かな演奏で、聴き込むほどに深く魅了されていく。
ジュリアーノ・カルミニョーラ
発売元:ユニバーサル ミュージック合同会社
価格:3,500円(税抜)
伊熊 よし子〔いくま・よしこ〕
音楽ジャーナリスト、音楽評論家。東京音楽大学卒業。レコード会社、ピアノ専門誌「ショパン」編集長を経て、フリーに。クラシック音楽をより幅広い人々に聴いてほしいとの考えから、音楽専門誌だけでなく、新聞、一般誌、情報誌、WEBなどにも記事を執筆。著書に「クラシック貴人変人」(エー・ジー出版)、「ヴェンゲーロフの奇跡 百年にひとりのヴァイオリニスト」(共同通信社)、「ショパンに愛されたピアニスト ダン・タイ・ソン物語」(ヤマハミュージックメディア)、「魂のチェリスト ミッシャ・マイスキー《わが真実》」(小学館)、「イラストオペラブック トゥーランドット」(ショパン)、「北欧の音の詩人 グリーグを愛す」(ショパン)など。2010年のショパン生誕200年を記念し、2月に「図説 ショパン」(河出書房新社)を出版。近著「伊熊よし子のおいしい音楽案内 パリに魅せられ、グラナダに酔う」(PHP新書 電子書籍有り)、「リトル・ピアニスト 牛田智大」(扶桑社)、「クラシックはおいしい アーティスト・レシピ」(芸術新聞社)、「たどりつく力 フジコ・ヘミング」(幻冬舎)。共著多数。
伊熊よし子の ークラシックはおいしいー