今月の音遊人
今月の音遊人:﨑谷直人さん「突き詰めたその先にこそ“遊び”はあると思います」
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多くのオーケストラがしのぎを削っているイギリスのロンドンにおいて常にトップクラスの演奏を聴かせ、新しい時代を切り開いてきたロンドン交響楽団(以下、LSO)。これまでも多彩な指揮者たちと共に来日公演を行い、数多くのレコード・CD録音によっても高く評価されてきた世界のリーディング・オーケストラだ。
そのLSOが、2015年以来3年ぶりとなる来日公演を行う。同行する指揮者のサー・サイモン・ラトルは、長くベルリン・フィルの首席指揮者を務めてきたが、2017年シーズンよりLSOの音楽監督に就任。まさに新しい時代が幕を開け、意気揚々と進んでいる最中の来日公演である。演奏される曲もマーラーやバーンスタイン、シベリウス、ヤナーチェクなど、高い演奏能力とフレキシブルな対応力が求められる作品ばかり。1904年の創設から積み上げられてきた伝統のサウンドと、新時代に求められるサウンドが融合し、日本の聴衆に新しいLSOの姿を披露してくれるのだ。
ところで、ロンドンのオーケストラといえばブリティッシュ・ブラスの響きを期待する聴き手も多いだろうが、LSOのトロンボーン・セクションに在籍する3人のアーティストが、全員ヤマハの愛用者であることをご存知だろうか。株式会社ヤマハミュージックジャパンで管弦打楽器のマーケティング業務に携わる大瀬道郎さんに、そのいきさつなどをうかがった。
「2014年に18歳という若さで副首席奏者に就任したピーター・ムーアさんが、もともと当社の楽器を演奏していたのです。彼はブラスバンド(イギリス式の金管バンド)の盛んなマンチェスターの街で育ちましたが、最初に師事したハレ管弦楽団のアーティストがヤマハ・ユーザーだったそうで、ピーターさんもごく自然にヤマハの楽器を手にしました。彼がLSOに入団したことから、おそらく同僚のジェイムズ・メイナードさんやバス・トロンボーンのポール・ミルナーさんも影響を受けたのだと思います」
同じセクションで演奏するアーティストの音や楽器が気になるのは当然だろうし、音に対する方向性が同じであれば、できるだけ音色などを近づけたいと思うのも道理だ。
「トロンボーンは交響曲や管弦楽曲の中でも、美しいコラールのハーモニーなどで聴きどころを作る楽器ですから、全員がヤマハの楽器を使ってくださっているのであれば、結果として音の統一感も生まれるのではないかと思います」
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団やボストン交響楽団などにも、ヤマハの管楽器を愛用するアーティストがいる。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の伝統的な管楽器(ウィンナ・ホルン等)がヤマハ製であることは、音楽ファンの間でも周知の事実だ。さまざまなブランドがある中で、ヤマハが愛用される背景にはどういったことがあるのだろうか。
「トロンボーンに限らず、国内外で演奏しているアーティストの皆様からまず言っていただけるのは、音程が安定していてとりやすいということです。これは当社が学校吹奏楽の市場から信頼を得ていることと、関係しているでしょう。耳が慣れていない子供たちにとって正確な音程を捉えたり判断したりすることは難しく、楽器の正確さが大きな助けになるからです。プロの奏者であっても同じことで、音程のとりやすさに加え、トロンボーンの場合ですとスライドやロータリーなどの操作性が高ければ、アーティストがそれに気をとられることなく安心して自分の音楽を追求できるでしょう。さまざまなニーズに対して迅速に正確に、そして繊細に応えるという私たちの姿勢に対し、信頼を寄せていただいているのだと確信しています」
来日公演で取り上げられる曲も、トロンボーンの多彩な表現力が演奏を左右するものが多い。それだけにヤマハ・サウンドの存在感も大きいはずだが、ぜひともコンサートホールでその真価を耳にしていただきたいと思う。
最後に、ヤマハとLSOの意外なつながりを示すエピソードをご紹介しよう。2014年に不慮の事故でこの世を去った首席トランペット奏者のロッド・フランクス氏が、ヤマハのスタッフにこういう言葉を残してくれたそうだ。
「君たちはもっと自分たちの楽器に自信をもっていい。なぜなら(LSOがサウンドトラックを演奏した)『スター・ウォーズ』のテーマの最初にある高いB♭の音は、私が吹いているヤマハの楽器なのだから(※)」
※4作目のエピソード1以降
イギリスのオーケストラにおける誉れ高いブラス・サウンドの一端を、実はヤマハの楽器と技術が担っていたというこの話は、今でもスタッフの中で語り継がれているという。
9月23日(日):フェスティバルホール(大阪)
9月24日(月・祝)、25日(火):サントリーホール(東京)
9月27日(木):NHKホール(東京)
9月28日(金):横浜みなとみらいホール 大ホール(横浜)
9月29日(土):サントリーホール(東京)