今月の音遊人
今月の音遊人:矢野顕子さん 「わたしにとって音は遊びであり、仕事であり、趣味でもあるんです」
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今月の音遊人:辻󠄀井伸行さん「ピアノは身体の一部、大切な友だちのようなものです」
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2022.9.1
心にしみこむピュアな音色で聴衆を魅了し続けている辻󠄀井伸行さん。音と戯れ、ピアノに夢中になった幼少期から今日までの日々を振り返りながら語ってもらった。
難しい質問ですね……。クラシックのピアノ作品を中心にいろいろな曲を聴いてきました。ショパン、ベートーヴェン、ドビュッシー、ラヴェルなど。でも、やっぱり一番多く聴いているのはショパンの作品でしょうか。物心つく前からショパンの作品はよく聴いていて、とくに赤ちゃんの頃、『英雄ポロネーズ』を聴くと足をバタバタさせて喜んでいたそうです。ブーニンが演奏するその『英雄ポロネーズ』のCDは擦り切れるまで聴き、ほかのピアニストのCDをかけても不満そうで反応しなかったので、ブーニンのCDをもう一度買ったと母が言っていました。ピアノを学び始めてからは『幻想即興曲』にあこがれて、どうしても弾きたくて繰り返し聴き、耳コピーして弾いて、先生に驚かれたというエピソードもあります。ショパンの作品で、よく聴いたピアニストは、ブーニン、アルゲリッチ、キーシン、アシュケナージ、ホロヴィッツなどです。最近は、ロシア作品に興味があり熱心に聴いています。コンチェルトは弾いているのですが、ラフマニノフやプロコフィエフのソロの作品、とくにピアノ・ソナタのような大きな作品はまだなので、挑戦してみたいなと思っています。
赤ちゃんの頃から、とにかく音の出るおもちゃにしか興味を示さず、その中でもトイ・ピアノが大好きで、言葉を覚えるよりも先に音楽で感情を表現していたようです。気がついたらいつもピアノを弾いていて、ピアノは僕の身体の一部、大切な友だちのようなものです。音楽がない人生なんて考えられません。どんなに辛いとき、悲しいときでも、音楽は心を癒し、力を与えてくれます。自分の演奏で、音楽の楽しさ、素晴らしさをみなさんに伝えられたらいいなと思っています。
音で遊ぶ人?考えたことがないですね。なんでしょう……。僕は自然が大好きで、よく山に登ったり、散歩をしたり、海や川で釣りをしたりするんですが、風で木々の葉がそよぐ音、川のせせらぎ、波の音、鳥の鳴き声などを聴いていると、いろいろなイメージが浮かんできて、それをピアノで表現してみたくなります。僕のオリジナル曲の多くは、そうして生まれました。音で遊ぶって、そんな感じかな?小さい頃からステージで弾くのが大好きで、聴衆のみなさんと音楽を共有している、一緒に奏でていると感じられる瞬間に、コンサートホールと一体となって音で遊んでいるような気持ちになりますね。
辻󠄀井伸行〔つじい・のぶゆき〕
2009年「第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクール」において日本人として初優勝を飾る。以来、世界的なピアニストのひとりとして活躍し、ニューヨークのカーネギーホールの主催公演やイギリス最大の音楽祭「プロムス」などに出演し大成功を収めたほか、ウィーン楽友協会やベルリン・フィルハーモニー、パリのシャンゼリゼ劇場などの世界の著名なホールで例年コンサートを開催し、高い評価と多くの聴衆の支持を受けている。また、欧米の一流オーケストラからのソリストとしての出演希望も数多く寄せられ、ゲルギエフやアシュケナージなどの世界的指揮者からも高い評価を受け、これまでに数多くの共演を行っている。
オフィシャルサイト
文/ 森岡葉
photo/ 宮地たか子
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